自動車業界の経験者が教える、他では聞けない「クルマの基礎知識」
電気自動車の最大のメリットは、他の自動車に比べ圧倒的に高い環境性能です。
日産リーフで培ったノウハウが凝縮されて、さらなる進化を遂げた日産ノートe-powerは、今一番気になる国産電気自動車ではないでしょうか。
2016年11月2日にマイナーチェンジ発表されてから、たった7ヶ月で販売台数が10万台を突破したこの電気自動車に、どのような魅力があるのかを確かめてきました。
全グレードを加味しての私の評価としては、8.0/10点満点 という結果となりました。
では、日産 ノートe-powerをご覧ください。
1.グレードによる外観の違い
ノートe-powerには、S、X、メダリスト、モードプレミア、NISMOの5グレードが用意されています。
全グレードを通して、コンパクトカーにしては少しボリューミーに感じます。
決して車幅が大きいわけでも車高が高いわけでもないのですが、ボテッとした印象が強いです。
スポーツグレードといえるNISMOであっても、シャープな印象を受けませんでした。
ハッキリいってしまえば、特にグレード差による大きな外観の違いを感じません。
強いていうのであれば、Xグレード以下は14インチスチールホイール、メダリストは15インチアルミホイールが設定されているという程度でしょう。
どちらも柔らかい乗り味のサイズ設定なので、正直大きな差ではありません。
唯一スポーツ仕様のNISMOは16インチアルミホイールを設定していますが、果たして意味あるサイズ設定といえるのかは難しいところです。
多少のメッキパーツを設定されていることや、ボディーカラーの選択肢やヘッドライトの違い、ホイールのデザインに好みが分かれる程度で、わざわざ見た目を気にしてグレードを選ぶという設定ではないようです。
2.グレードによる内装の違い
グレード差が若干見せつけられる仕様になっていました。
Xグレードを基本グレードとして設定していて、一般向けのグレードはXグレード以上になるでしょう。
価格差約30万円のXグレードとメダリスタの違いですと、ステアリングがウレタンか革巻きか、ピアノブラック内装かブラウンとのコンビか、助手席シート裏にポケットの有無、ファブリックシートか合皮とのコンビシートか、などという本当に微々たる仕様差があります。
グレード差が大きく現れているのであれば、基本グレードとの差額は倍以上となっていたはずです。
しかし、差がほとんどといって良いほど無い。
率直な意見ですが、ノートe-powerを購入するのであればXグレードで充分ではないかと感じます。
それほどまでに基本グレードが充実しているので、わざわざ上位グレードを選択する必要性が無いのです。
上位グレードを選択した場合、確かに内外装に多少の微々たる設定差は存在しますが、これによって得られるのは自動車査定時の若干の価格アップだけだといっても良いでしょう。
3.グレードによる走りの特徴
内外装で大きな差が存在していないノートe-powerですが、走行性能も差が無いのであれば面白くない自動車で終わってしまいます。
今回はS、X、メダリスト、NISMOの4グレードを乗り比べてみました。
まずは基本となるXグレードです。
停車状態からの走り出しは、さすがのモーターパワーを感じます。
もたつきを感じずにダイレクトな発進性能を見せてくれました。
アクセルを踏み込んだ時も、トルクロスを感じないスムーズな加速感が心地良く感じられます。 エンジン車では感じられない加速感といっても良いでしょう。
一瞬にして頭の位置がズレたかのような、後ろに置いて行かれる感覚を覚えました。
しかし、これによる弊害も確かに感じられました。 アクセルを離した時のトルクの足りなさが顕著です。 エンジン車であればなだらかなトルクの落ち込みによって空走距離を稼ぐことができますが、電気自動車はモーターに電気が回っていない時にはトルク発生をやめてしまいます。
エンジンブレーキではなく、トランスミッションや路面抵抗がモロにブレーキの役割をしてしまうようです。
悪いことではないのですが、エンジン車から乗り換えた場合ブレーキタイミングやアクセルオフのタイミングが変わってくるでしょう。
14インチホイールということもあり、乗り味はかなりコンフォートなものになります。
運転している時よりも、後部座席に座っている時の方が安心感がありました。
次にメダリストですが、正直な感想ですがXグレードと変わらない乗り味です。
車重が10kg重いせいなのか、空走距離を稼ぎやすいようにも感じましたが、これはホイールサイズの違いだと判断しました。
タイヤのたわみが若干少ない15インチの方が、走行抵抗としての数値が少ないのでしょう。
Xグレードで感じていたコンフォート感よりは、本当に若干ですがダイレクト感も感じます。
これもホイールサイズの影響です。
夜間視認性は、LEDランプを設定されているためハロゲンランプよりも良いですが、際立ってメリットかといわれると声を大にしてオススメするようなポイントでもない感じがしています。
メダリストを選ぶとするならば、本当に自己満足の域を出られないと私は評価します。
そしてNISMOの名を掲げているノートe-powerです。
コレも正直にいいます。
ここまでスポーティーにする必要がある自動車であろうか…
実際に搭載されている動力機関に関しては、全グレード共通の装備となっているため正直差を感じるレベルではありません。
しかし、足回りが段違いにレベルが高くなっています。
ただでさえアクセルのレスポンスが良い電気自動車です。
足回りをしっかり固められることで、コンフォートな乗り味であったノートe-powerをアグレッシブなイメージへと変化させています。
目を見張るのは姿勢の作りやすさ 回頭性の良さです。
一般走行に過剰なレスポンスの良さはほぼ必要ありません。
むしろ、半テンポ後から反応し出すぐらいの方が安心して運転することができるのですが、NISMOグレードにそこまでの遅れを望むことはできません。
市販車ですのでダイレクトとまではいえませんが、ハンドリング即反応の旋回が可能なのには驚きました。
固め過ぎではない足回りなので乗りやすさは確かにあるのですが、アクセルへのタッチに対する従順な反応とハンドリングに対するシャープな回頭性は、コンパクトエコカーとは決して感じないでしょう。
16インチのホイール設定については、やはり過剰だと感じました。
あくまでもコンパクトエコカーという観点から見ると、固められた足回りの効果も相まって路面状況を拾いすぎるといえます。
助手席、後部座席にも乗ってみたのですが、後部座席は特に乗っていることが苦痛を感じました。
スポーツカーに乗っているほどの苦痛ではありませんが、他のグレードに比べて突き上げ感はとても強いです。
チューニングカーだから当たり前といえばそれまでなのですが、車酔いしやすい方にはかなりキツイでしょう。
当然のことながら、横Gは強いです。
回頭性が良い分、余計に横Gを強く受けてしまいます。
運転するのはすこぶる楽しい自動車なのですが、同乗者には決して優しくない仕上がりになっていました。
ここまでのトータルでの評価としては、Xグレード9.3ポイント、メダリスト6.5ポイント、NISMO8.2ポイントといったところですが、Sグレードという問題児が存在しました。
燃費性能はダントツの37.2km/L 車重も1,170kgと最軽量なのですが、その仕様はかなりのポンコツ具合を見せてくれます。
ボディーカラーはホワイト、パールホワイト、シルバーの3色のみというラインナップを皮切りに、エアコンレスという現行車にあるまじき設定の時点で一般使用には不向きです。
走行性能については、Xグレードよりも40kg軽いということもあり初動性とブレーキ効果はレスポンスが良くなっていますが、何よりもエアコンレスにより車内快適性が薄いことが終始気になってしまいました。
しかも、快適性を度外視してコストカットに取り組んだというにも関わらず、Xグレードとの差額はわずか18万円という残念な価格設定となっているのです。
全てを加味しても、どう甘く評価してもSグレードの評価は5.8ポイントが関の山です。
全てを集計すると、トータルアベレージが7.45ポイントとなりますが、エンジン車と走行性能を比較してみると、乗り味的に2,500ccと同レベルでの走行感覚を得られると私は判断しました。
さらに、航続時間に関しても丸1日走り続けても充電する必要がないということが分かりました。
充電のためだけに装着されたエンジンが確実な発電をしていてくれることと、文句のつけようがないレベルにまでバッテリー性能が上がっているという理由から、1ポイントの価値があると考えます。
しかし、残念なことに今現在、集合住宅での充電設備の設置が難しいということもあるので、0.45ポイントのマイナスとして総合評価8.0をつけさせていただきます。
4.まとめ 日産 ノートe-powerはXグレード一択
あなたが今後日産 ノートe-powerを購入しようと考えているのであれば、私はXグレードを強くオススメいたします。
特に、ファミリーカーとしての用途を第一に考えているのであれば、NISMOの固さやメダリストの若干の質感アップによるコストアップはオススメできません。
Sグレードは、正直一般使用には論外です。
快適な加速性能や車内の静かさという部分は、全グレード共通の仕様です。
上位グレードの特別感の強さも、ハッキリいってすずめの涙程度のものと私は感じました。
NISMOグレードは、確かに走る楽しさを与えてくれる設定になっています。
5速マニュアル設定も用意されていますが、電気自動車の力強く滑らかな加速性能を活かしていこうと思うのであれば、間違いなくオートマチックトランスミッションを選択すべきでしょう。 (オートマチックの感覚が嫌いな場合、コンピューターのシフトタイミングを変更することで、スポーツモードに変更できます。
NISMOまたはメーカーに依頼できるので覚えておきましょう。)
コンパクトエコカーというジャンルの中で、電気自動車はまだまだ発展途上の車種になります。
しかし、今後確実にあなたの生活の一部となる未来を持った自動車といえるでしょう。
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