自動車業界の経験者が教える、他では聞けない「クルマの基礎知識」
最新型も良いけれど、ノスタルジックなスタイルに惹かれて念願のクラシックカーを手に入れたあなた。
手の掛かる自動車は愛おしくて仕方がないけれど、心配なのは万が一の際にデッドストックパーツの入手先がないことですよね?
特に、長年紫外線に晒されたテールランプ等のプラパーツは、ちょっとしたことで欠けたり割れたりで心配が絶えません。
オークションで散々探してやっと見つけたパーツはプレミア価格で手が出せない、ということにもなりかねません。
そんな時はパーツを自作してしまえば良いのです!
日曜大工程度の工具と材料さえあれば、あらゆるプラパーツも自由自在、現代風のクリアレンズも自作可能です。
今回は、パーツを自作する方法をご紹介したいと思います。
初めてチャレンジする時は、小さなパーツか平型のレンズなどからやってみると簡単です。
ぜひやってみてください。
準備するもの
•ホームセンターなどで売っているアクリル板(厚さ1.5~2.0mm程度) •プラカッター、またはアクリルカッター •養生テープ •シリコーン、硬化剤(クリアタイプ) •使い捨てバケツ(塗装用の500cc~1,000cc)紙コップ等でも代用可 •UVレジン •レジン用インジェクター(注射器) •ヤスリ •秤 •粘土またはプラスチックバー •脱脂洗浄剤 •ゴムバンド •離形材 •バイス(建築用小型) •ゴム手袋
•ドリル・キリ(ネジ穴用)
型枠製作
アクリル板で、自動車から取り外したパーツがすっぽり収まる大きさの箱を作ります。
小さなパーツであれば、養生テープでしっかりと隙間なく作れば問題ありません。
ただし、ヘッドライトの様な大型パーツは圧力でシリコンが漏れ出す恐れがあるため、接着剤で箱を作った方が良いでしょう。
平型や小さなパーツであれば、二つの型を作らずに一体成型後にカッターで切ってあげる方が簡単です。
無駄に大きな箱を作ると切る際に苦労するため、パーツの大きさプラス1cm程度の型ができる様に枠を作るのがコツです。
型取り準備
自動車から取り外したパーツに、粘土またはプラスチックバーを2ヶ所着けて、アクリル箱の底部に固定します。
1ヶ所は注入穴用、もう1ヶ所は空気抜き用です。
対角線上に注入穴を確保するのが理想的ではありますが、硬化前のレジンはサラッとした液体ですから、そこまで拘らなくても大丈夫です。
なお、パーツのネジ穴はあらかじめ粘土を詰めておくか塞いでおきましょう。
また、パーツは洗浄剤で綺麗に洗っておきます。
固定は、プラスチックバーであれば接着剤を使用。(パーツ側は形に合わせてヤスリで形成し軽く接着します)
粘土であれば5~8mm程度に細長く切って、パーツを粘土で浮かせるようなイメージで、アクリル箱底部に動かない様に置きます。
プラスチックバー、または粘土は、型取り後にレンズの原料となるレジンを流し込む為の注入穴になります。
レジンの種類によって、注入穴のサイズが決められている場合もあります。
説明書に沿って準備してください。
型取り
アクリル箱の容積を計算し、使い捨てバケツの中で型取り用のシリコン液を必要量作ります。
注)シリコンと硬化剤は分量が決められているため、正確に秤で測ってください。
シリコン液ができ上がったら、少量ずつ型枠内に流し込んでいきます。
シリコンによっては気泡が抜けにくい物が有りますが、硬化まではおおよそ2~30分程度の猶予が有ります。
焦らずしっかりと気泡を抜きながら少しずつ流し込むのがコツです。
予算に余裕があれば真空脱泡器(食品用を流用できます)を使うと、約15分程度で綺麗に脱泡できます。
シリコンは、製品によって硬化時間が決められているため、正確に行ってください。
早い物で8時間程度、時間が掛かるものは36時間程度かかる物もあります。
あと、シリコンの漏れ防止対策として、養生テープで箱を補強しておいてください。
シリコン型の取り外し
シリコンが完全に硬化したのを確認したら、アクリル箱を分解します。
シリコンは弾力があるため、大きな力を加え過ぎるとプラパーツを破損してしまいます。
慎重に作業を進めましょう。
型からシリコンを取り外したら、中のプラパーツを取り出す為にカッターで切れ目を入れていきます。
この時、完全に二つに割ってしまわず、3辺にカッターを入れてください。
二つに割ってしまうと、うまく成形できません。
また、カッターでプラパーツを傷つけてしまわないよう、慎重に行ってください。
シリコンも、切れ目を入れる際に削ってしまうとそこから液漏れをおこします。こちらも慎重に作業しましょう。
ある程度切れ目を入れると、中のプラパーツを取り出す事ができます。
型固定
シリコンからプラパーツを取り出したら、再度シリコンを固定します。
固定は、元の形に戻した後にアクリルで外から押さえつけ、ゴムバンドを巻いて仮留めし、その後バイスで完全に固定します。
抑えつけ過ぎるとシリコンの形が変わってしまうため、できれば寸法を測りながら正確な形を再現してください。
また、レジンが流し込まれる場所には、専用の離型剤を軽く塗布しておくと綺麗に仕上がります。
レジン流し込み
型が完成したらレジンを流し込みます。
注入の際はインジェクターを使用します。
インジェクターには注射針が付属されていますが、注射針は使用しません。
レジンにも気泡が入る場合があるため、慎重に少しずつ流し込みます。
空気抜き穴を上手に活用して流し込んでください。
レジンがサラッとした液状のうちであれば、軽くコツコツと箱を叩いてあげれば空気が抜けます。
レジンに着色する場合は専用の染色剤(顔料)を混ぜますが、顔料もUV対応でなければなりません。
こちらは準備段階で確認しておいてください。
元パーツの色に合わせるか、透明のオリジナルパーツを作るかは自由ですが、透明にした際はランプを変更する事を忘れないようにしましょう。
なお、レジンが液体状と硬化後では色の仕上がりに若干違いがみられるため、事前にレジンを硬化させて色の調整をしておくと再現性が高くなります。
UVレジンは専用のUVライトがあれば数十分で硬化します。
予算を節約したい時は太陽光でも硬化しますが、専用ライトに比べて時間がかかります。
ここは焦る必要もないため、時間が掛かってもしっかりと硬化させる事を優先しましょう。
レジン取り外しから成形まで
レジンが完全に硬化したら型から取り外します。
取り外したら、余分な部分(注入部)を切り離します。
雑に折ってしまうと本体ごと割れる恐れがあるため、カッターやヤスリを使って綺麗に処理します。
形が整ったら、次はネジ穴を開けます。
元パーツと同じ大きさの穴を開け、穴の位置も正確でなければいけません。
美しさに拘るならば
元々が古くなっているプラパーツ故に、表面に若干の粗さがみられる場合が有ります。
そのような時は、ペーパーヤスリで表面仕上げをすると美しく反射するようになります。
やり方は、番手を順に大きくしながら表面を擦り、最後は専用のクロスで仕上げます。
ペーパーヤスリは800番から2000番程度まで、3~4種類準備しておけば大丈夫です。
ペーパーヤスリを使う際は、水で濡らしながら擦ります。
最後のクロスは水を使いません。
根気が必要な作業にはなりますが、時間を掛けるほどに綺麗になっていくため、自分の努力がそのまま最終形態に反映されます。
綺麗に仕上がり、自動車に取り付ければ完成です。
プラパーツの自作まとめ
要領さえ理解できれば、テールランプだけでなく、落下しやすいサイドマーカーなども比較的簡単に作る事ができます。
慣れてくれば、ヘッドライトなどの大型パーツもガラス製からレジン形成化しておく事で、万が一の際にもコストダウンが可能です。
自作する事で、パーツがないクラシックカーも悩みが減るだけでなく、レンズのクリア化等で、あなただけのオリジナルカーに仕上げる事も可能です。
備えあれば憂いなし。
いつまでも快適にドライブできるよう、ぜひチャレンジしてみてください!
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