ポルシェがSUVを作る理由。 ラインナップ拡大の背景にある狙いとは? | カーライフマガジン

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1931年の創業以来、ポルシェは世界トップクラスのスポーツカーを作り続けてきました。スポーツカーを専門に生産するニッチなメーカーとして、ポルシェは確固たる地位を築いてきたのです。

しかし、近年は「カイエン」などのポルシェ製SUVを見かける機会が多くなりました。かつてはスポーツカー専業メーカーだったポルシェも、今では多様な車種を生産するようになっています。

往年のファンの中には、こうしたポルシェの拡大路線を嬉しく思わない方もいるかもしれませんね。「専業メーカーのままでいて欲しかった」と感じている方も多くおられることでしょう。

根強いファンがいるなかで、なぜポルシェは拡大路線に踏み切ったのでしょうか。その理由や今後の展望について、本文で探ってみましょう。

■SUVによる業績拡大

ポルシェが現在の拡大路線に踏み切ったのは、2000年代初頭のことです。その皮切りとなったのは、5ドアSUVであるカイエンの開発。それまでスポーツカーを専門に製造してきたポルシェがSUVを作ったという事実は、車ファンの間で賛否を呼びました。

ファンにとって、ポルシェが「スポーツカー意外のモデルも作る普通の車メーカー」になったことは衝撃的だったでしょう。しかし、そんなファンの動揺をよそに、カイエンは世界的大ヒットモデルとなります。

カイエンのヒットを受け、ポルシェはカイエンを一回り小型化したSUV「マカン」を開発。こちらは発売前からヒットが予想されていました。実際に2014年に発売されるやいなや、マカンは一躍人気モデルとなっています。

2つのSUVモデルのヒットにより、ポルシェは業績を大きく拡大させました。2015年には約22万5千台の売り上げを達成。同社の年間販売台数記録を大きく更新しています。

ちなみに、同年のカイエンとマカンの合計販売台数は15万台以上。全販売台数の7割程度をSUVが占める計算になります。SUV市場への参入でポルシェが得た経済効果は、かなり大きいといえるでしょう。

●行き詰まりを感じていた経営陣

上記のようにSUVの投入で業績を向上させたポルシェ。成功を納めたとはいえ、SUV市場への参入は大きな賭けだったはずです。

なぜポルシェは、リスクを負ってまで業績をアップさせる必要があったのでしょうか。それまでもポルシェは、「911」を主力としたスポーツカーラインナップで独自の地位を築いてきたはず。一つの分野で地位を確立したのなら、「もう十分」となりそうなものです。

しかし、ポルシェの経営陣はニッチな市場での成功では満足できませんでした。ニッチな市場での成功は、同時にそこでの「行き詰まり感」も産んだのです。

スポーツカーという限られた市場の範囲だけでは、世界トップクラスの大企業へと成長を遂げることはできません。世界に名高いポルシェも、GMやトヨタなどの大手と比べれば小さな企業なのです。そんなポルシェが高い利益率を背景に乗り出したのが、SUV市場参戦をはじめとする拡大路線でした。

路線変更の際にポルシェの経営陣が手を組んだのが、かねてから縁の深い企業であるフォルクスワーゲン社(以下VW社と表記)。VW社が高級SUV市場への参入を望んでいたこともあり、思惑が一致したポルシェはVW社と共同でカイエンの開発に臨んだのでした。

■ニッチ市場からの脱却は諸刃の剣

カイエンが好評を博したことに気をよくし、ポルシェは同社初の4ドアセダンである「パナメーラ」を2009年に発売しています。

パナメーラはBMW「7シリーズ」やメルセデス「Sクラス」などと競合するクラスのモデル。カイエンの成功をきっかけに、ポルシェはBMWやメルセデスの競争相手となりうる存在へと成長しつつあるといえるでしょう。

しかし、競争相手になるということは、大企業を敵に回すこととイコールです。メルセデスをはじめとする大手メーカーは、その資本力を武器にポルシェへの攻勢を強めてくることでしょう。ポルシェはその攻勢に対し、真っ向から立ち向かわねばなりません。

また、ポルシェの得意分野である高級スポーツカーの市場に、メルセデスやBMWが本格参戦してくる可能性もあります。自らのテリトリーを侵略された大企業が、逆に相手のテリトリーを奪おうとするのは自然な流れです。

ニッチ市場からの脱却は諸刃の剣。下手をすると、これまで守ってきた立ち位置をも失う結果を招きかねません。拡大路線へと乗り出したポルシェが正念場を向かえるのは、これからだといえます。

●要となるのはやはりスポーツモデル

カイエンの発売を機に拡大路線に踏み切ったポルシェですが、今後の経営戦略の要となるのはやはりスポーツモデルです。長年培ってきたブランドイメージなくしては、大手企業との競争の中で生き残れません。

カイエンやパナメーラのデザインが、スポーツモデルのデザインを踏襲していることが何よりのあかし。スポーティーさをなくしてしまっては、ポルシェとしての魅力が消えてしまうのです。

実際ポルシェは、勢力的にスポーツモデルの開発を進めています。7代目911である「991」のほぼすべての後期型モデルが、ターボ仕様となったことはそのひとつ。自然吸気を採用していたカレラやカレラSがツインターボ化され、NAエンジンを搭載する991はGT3のみとなりました。

この一方で2シーターモデルであるボクスターとケイマンも、装いを新たに「718シリーズ」としてフルモデルチェンジ。718とは、1950年台から60年代初頭にかけて活躍したレーシングカーの名称です。伝説的な車名を復活させたところに、ポルシェのスポーツモデルに対する意気込みが感じられるのではないでしょうか。

このほか、近年は918スパイダーの後継モデル開発にもファンの注目が集まっています。918スパイダーといえば、ポルシェの技術の粋を結集させたスーパースポーツカー。今後開発される後継モデルも、世界をリードする高性能マシンとなるはずです。

SUVやセダンを開発したからといって、ポルシェがスポーツカーブランドとしての地位を捨ててしまったわけではありません。むしろ、高級スポーツカー市場という砦をいかに守り続けるかが、ポルシェの拡大路線成功のカギを握っているといえるでしょう。

■まとめ

ポルシェが拡大路線へと舵を切ってから、すでに10年以上が経過しました。現時点では、その路線変更はよい結果を生んでいます。今後はより多様なモデルがポルシェから発売されることでしょう。その一方で、心躍るようなスポーツモデルも誕生するはずです。生まれ変わりを果たしつつあるポルシェ。私たちファンも、気持ちを新たにこれからの動向に期待したいですね。

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