あなたは「走りがいい車」と聞いて、どんな自動車を想像されるでしょうか。
フェラーリやポルシェのような、海外の高級スポーツカーを想像される方が多いかもしれませんね。
また、GTRやNSXといった、日本のスポーツモデルを思い浮かべる方もおられるでしょう。
確かに上記のようなスポーツカーは、抜群に高い走行性能を誇っています。
しかし「走りがいい車」として紹介されるモデルが、必ずしも飛び抜けて高い走行性能を備えているわけではありません。
小排気量でありながら、走りのよさを評価されているモデルも多数存在します。
そもそも「走りがいい車」とは、具体的にどのような要素をもつ車を指しているのでしょうか。
「走りがいい車」の定義とは?
疑問の答えを、本文で探っていきましょう。
■「走りがいい車」の定義
本文のはじめに、「走りがいい車」の定義をハッキリさせておきましょう。
「走りがいい」と評される車には、ひとつの共通点があります。
その共通点とは、ドライバーの意のままに動くこと。
つまり「走りがいい車」とは、「ドライバーの意思および操作に対するレスポンスがよい車」なのです。
では「意のままに動く」とは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか。
たとえば、車を加速させる場面を想像してみてください。
アクセルの踏み込み具合に比例して、イメージどおりに車が加速していくと気持ちいいですよね。
このような気持ちよい加速あるいは加速感を、「リニアな加速」といいます。
次は、峠道のカーブでハンドルを切る場面を想像してみましょう。
ハンドル操作に対する車のレスポンスがよく、イメージどおりにコーナリングが決まればかなり気持ちよいはずです。
このようにドライバーの操作に対する追従性が高いハンドル特性を、「リニアなハンドリング」といいます。
意のままに動く車とは、「リニアな加速」と「リニアなハンドリング」を併せ持つ車です。
以上の要素に加えて高い直進安定性を備えているなら、その車はかなり「走りがいい車」だと思ってよいでしょう。
・走りのよさと速さは別
上記の説明を見て、「走りがいい車って速く走れる車のこと?」と思う方もおられるでしょう。
確かに「走りがいい車」には、速く走れるものが少なくありません。
しかし「走りがいい車」と「速い車」では、意味が少し違います。
たとえばエンジンパワーが大きいだけの車は、「走りがいい車」とは呼べません。
加速性能が高いだけでは、単に「危ない車」になってしまいます。
では、コーナリング性能が高ければよいのかというと、必ずしもそうとはいえません。
高いコーナリング性能は諸刃の剣。
よほど運転が上手でなければ、性能の限界を見極められずスピンを起こしてしまう場合があります。
一般的にいう「走りがいい車」とは、「走らせて楽しい車」だと思ってください。
安全に走りのよさを楽しめるように、メーカーがあえて走行性能の限界を低くする場合もあります。
気負わずに走りを楽しめる車こそ、「走りがいい車」なのです。
■「いい走り」を生むパーツ
当然のことながら、「走りがいい車」は偶然誕生するわけではありません。
自動車メーカーが意図的に設計してこそ、走りのよさをもつ車が生まれるのです。
ということは、「走りがいい車」には、よい走りを生むパーツが使われていることになります。
はたしてどのようなパーツが、走りのよさを生むのでしょうか。
まず、前節でご紹介した「リニアな加速」を実現するには、レスポンスのよいエンジンが必要となります。
一般的にいうレスポンスがよいエンジンとは、「吹け上がりがよく回転落ちが適度に早いエンジン」を指します。
エンジンにはNA(自然吸気)とターボ付きに大別できますが、レスポンスに優れるのはNAエンジンです。
NAエンジンは吹け上がりのよさから、コアなスポーツカーファンにも人気があります。
とはいえターボエンジン搭載車が「走りがいい車」に含まれない、というわけではありません。
ターボエンジンには、最高出力の高さや高回転時の爽快なフィーリングといった魅力があります。
エンジンフィーリングの好みでターボ車を選んだとしても、間違いではありません。
・ハンドリングに影響を与える要素
次に、「リニアなハンドリング」を生むパーツについて見てみましょう。
車のハンドリングは、1つのパーツだけでは決まりません。
車の骨格であるシャシーに始まり、サスペンションやスタビライザー、タイヤなどのパーツによってハンドリング特性が決まります。
「リニアなハンドリング」を実現するには、多数のパーツで車の動きを制御する必要があるのです。
では、全てのパーツが高性能スポーツカーのような設計になっている必要があるのかというと、そうではありません。
「走りがいい車」のパーツに求められるのは、車の動きを制御しつつ、挙動変化と性能の限界をドライバーに伝えることです。
これらの働きを実現できてこそ、真に「走りがいい車」と呼べるのです。
なお、以上のようなパーツのほか、ボディの形状やエンジンレイアウトなども車の走りに大きな影響を及ぼします。
自動車メーカーはこうした多数の要素を全て計算に入れて、「走りがいい車」を生み出しているのです。
■「走りがいい」のはスポーツカーだけ?
ここまでの説明だけでは、「走りがいい車」と「スポーツカー」の違いがわからないかもしれませんね。
冒頭でも述べたように、スポーツカーは高い走行性能を有しています。
しかしスポーツカーだけが、「走りがいい車」というわけではありません。
たとえばミニバンにも、「走りがいい」モデルは存在します。
オデッセイ・アブソルートやプレマシーは、優れた走行性能をもつミニバンとして有名です。
また、小型車の中ではスイフト・スポーツやフィットRSが、走行性能に秀でたモデルといえます。
セダンでは、アテンザやスカイライン350GT、マークXなどがスポーティーモデルとして有名ですね。
・同タイプ・同クラスの車を比較しよう
前述のとおり、スポーツカー以外のジャンルにも「走りがいい車」は多数存在します。
各ジャンルで走行性能に秀でたモデルがあれば、「走りがいい車」と考えてよいでしょう。
もちろん、いかに走行性能に優れたミニバンやコンパクトカーも、スポーツカーほど加速やハンドリングがよいわけではありません。
「走りのよさ」の基準は、車のジャンルによってまちまちです。
「リニアなハンドリング」や「リニアな加速」の度合いも、車のジャンルごとにかなり違うと考えた方がよいでしょう。
特にスポーティーミニバンの場合は車重が重く、ほかのジャンルの車より走りのよさを実感しにくいかもしれません。
しかし、ミニバンなりに走りを楽しむことはできるはずです。
そもそも、違うジャンルの車同士を比較すること自体がナンセンスといえます。
たとえば、NSXとフィットRSを比べることにあまり意味はありません。
もし「走りがいい車」同士を比較するなら、同タイプ・同クラスの車を比べることをおすすめします。
■まとめ
「走りがいい車」の定義は、実際は曖昧です。
主観で判断される部分も多く、人によって走りがよいかどうか判断が分かれるモデルもあることでしょう。
とはいえ重要なのは、その車で走りを楽しめるかどうかです。
「走りがいい車」をお探しなら、気になる車をとことん試乗してみることをおすすめします。
実際に運転して走りが気に入ったなら、その車があなたにとっての「走りがいい車」だと考えてよいでしょう。