ポルシェ初のSUV「カイエンS」が発売されてから、はや十数年が経ちました。
2014年には弟分ともいうべき「マカン」が登場し、いまやポルシェはSUVを作るメーカーとして認識されつつあります。
SUVファンの中には、「次の愛車はカイエンかマカンにしよう」と考えている方もおられることでしょう。
ポルシェのSUVは高性能で高級感も抜群。
カイエンとマカン、どちらを選んでもがっかりさせられることはありません。
ただ、両者がかなり違った個性を与えられたモデルであることも事実。
本記事で、ポルシェの売り上げの過半数を占めるSUV、カイエンとマカンの違いに詳しく迫ってみましょう。
■両者のスペックを詳しくチェック
写真などで見るとわかるとおり、カイエンとマカンはルックスがよく似ています。
どちらもポルシェらしいデザインが採用されているため、車に詳しくない人だと同じモデルと思ってしまうかもしれません。
しかし、そのスペックは両者で大きく違っています。
カイエンとマカンの違いを知るためのファーストステップとして、両モデルのスペックに着目してみましょう。
両者のスペックの違いとしてわかりやすいのが、車体寸法です。
カイエンの車体寸法は、全高が1,710mm、全幅が1,940mm、全長が4,855mmとなっています。
上記はベーシックモデルの寸法ですが、ターボやGTSもほぼ同サイズだと考えてください。
他方、マカンの寸法は全高が1,625mm、全幅が1,925mm、全長が4,680mmとなっています。
こちらもベーシックモデルの寸法ですが、数値を比べるとカイエンより一回り小さいことがわかりますね。
ちなみに両者の重量は、カイエンのベーシックモデルが2,115Kg、マカンのベーシックモデルが1,830Kgとなっています。
マカンの方がかなり軽量ですね。
写真では同じようなモデルに見えるカイエンとマカンですが、実際はマカンの方が軽量コンパクトに作られているのです。
●動力性能の違い
カイエンとマカンは動力性能も大きく違っています。
カイエンのベーシックモデルにはV6 3.6Lエンジンが搭載されていますが、マカンのベーシックモデルに搭載されるエンジンは直列4気筒の2Lターボです。
最高出力は前者が300ps、後者が252psとなっています。
こうしてエンジンスペックを比べると、マカンが非力なマシンに見えるかもしれませんね。
ただ、先にご紹介したとおり、マカンは軽量なモデルです。
エンジンスペックだけで、その走りを判断することはできません。
というのも、ベーシックモデル同士で比べると、マカンの加速性能はカイエンを上回るのです。
カタログスペックによると、カイエンの100Km加速は7.7秒。
一方のマカンは、これより1秒速い6.7秒となっています。
この数値からわかるとおり、マカンは単にカイエンをダウングレードさせたモデルではありません。
マカンにはマカンならではの長所が与えられているのです。
ちなみに、カイエンも決して加速が遅い車ではありません。
カイエンのトップグレードである「ターボS」にはV8 4.8Lエンジンが搭載されており、100Km加速は4.1秒を誇ります。
動力性能に優れているという点は、カイエンとマカンのどちらも同じだといえるでしょう。
■ハンドリングと走行特性の違い
先にご紹介したとおり、カイエンとマカンは車体寸法や重量が違っています。
この違いが影響を及ぼすのがハンドリング。
カイエンとマカンでは、同じSUVでもハンドリングの特性が大きく違います。
カイエンは、SUVとしてはスポーティーなハンドリングが楽しめるモデルです。
ただし、スポーツカー同様に走れるというわけではありません。
コーナリングには、やはり全高の高さや車体の重さが影響します。
スポーツカーやセダンと比べれば、やや鈍重な印象を受ける点は否めないでしょう。
その反面、カイエンの高速クルージングでの安定感は抜群です。
ゆとりのあるエンジンパワーと乗り心地のよさで、快適に高速走行を楽しめます。
カイエンは、スポーティーさと高級車らしさが高い次元でバランスしたSUVといえるでしょう。
●よりスポーツカーライクなマカン
重厚なカイエンと比べると、車高が低く軽量なマカンのハンドリングはスポーツカーライク。よりポルシェらしいコーナリングを楽しめます。
そもそも、マカンは史上もっともスポーティーなSUVを目指して作られたモデル。
コーナーではしっかりとタイヤが踏ん張ってくれますし、乗り味もキビキビしています。
SUVでワインディングを楽しみたい方にはピッタリな車といえるでしょう。
また、マカンは高速クルージングにも最適です。
ドライブフィーリングは上品で気難しくありませんし、高速でのレーンチェンジも楽にこなしてくれます。
…と、ここまでの説明だけだと、ワインディングと高速クルージングの両方が楽しめるマカンの方が魅力的なモデルに見えるかもしれませんね。
ただ、車を購入する際は実用面も考慮したいところです。
次節では、カイエンとマカンの実用性を比較してみましょう。
■やっぱり気になる実用性
カイエンとマカンは、ポルシェの車としては実用性が高いモデルです。
どちらも5ドアで5人乗りですので、家族でのお出かけにも活用できます。
ただし、使い勝手がまったく同じなのかというと、そうではありません。
室内、特に後部座席の快適性では、車体の大きいカイエンがマカンを上回ります。
4人以上の大人が乗車するなら、後部座席の頭上スペースや足元のスペースに余裕がほしいところ。
室内の広いカイエンなら、後部座席のスペースも広くて快適です。
また、カイエンはラゲッジスペースも大容量。
後部座席を倒せば、1,780リットル分の荷物を積み込むことができます。
他方、車体サイズの小さいマカンは後部座席がやや狭く、頭上スペースにもあまり余裕がありません。
荷室容量は後部座席収納時で1,500リットルになりますが、ハッチの傾斜が強いため、カイエンほど自由に荷物を積めないと考えた方がよいでしょう。
●日常の使い勝手を考慮しよう
前述のとおり、カイエンは後部座席の広さや荷物の積載性に優れています。
ただし、そのぶん車体が大柄なので、日常生活での使用で扱いにくさを感じるかもしれません。
たとえばデパートの駐車場に車を停める際などに、車体の大きさから不便を感じる可能性があります。
一方のマカンも、それほど小さいクルマではありません。
とはいえ、カイエンと比べると日常的に使いやすいサイズです。
全長は国産のセダンなどとほぼ同じですので、駐車時に大きな不便を感じることもないでしょう。
■まとめ
以上ご紹介したとおり、カイエンとマカンは違った特徴を備えるSUVです。
カイエンはパワフルで重厚な乗り味を楽しめるモデル。
室内が広く快適で、長距離クルージングなどに適した車といえるでしょう。
一方のマカンは軽量コンパクト。
スポーツカーライクなハンドリングが楽しめて、かつ普段使いにも最適です。
もしカイエンとマカンのどちらを購入するかで迷っているなら、どんな使い方をしたいのかをよくイメージしてみてください。
ご自身の使い方に合わせて選べば、ポルシェのSUVは最高のパートナーになってくれることでしょう。