CVTとATの違いとは?国産車にCVTが多い理由を説明 | カーライフマガジン

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自動車業界の経験者が教える、他では聞けない「クルマの基礎知識」

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世の中にはさまざまなトランスミッションがあります。
MT(マニュアルトランスミッション)とよばれる手動式の変速機のほかに、AT(オートマチックトランスミッション)とよばれる自動変速機には、トルクコンバーター式AT、CVT(無段変速機)、DSGやDCTとよばれる物などさまざまな方式が実用化されています。

特に、国産車では、CVTの採用が国産メーカーを中心に広がっており、スバルなどは全てのATがCVTということになっていて、ハイパフォーマンス車のWRXS4ですらCVTを採用しているほどです。

そもそも、CVTとはどんな変速機なのか、メリット・デメリットなどを説明していきます。

■CVTってどんなもの?

CVTは日本語では「無段変速機」と呼ばれます。
そして、その名の通り変速比を段つきなく連続的に変化させることのできるトランスミッションです。

CVTには、ベルト式、チェーン式、トロイダル式とさまざまな方式がありますが、おおむね次のような構造になっています。

CVTにはエンジンからの出力軸と、車輪につながっている入力軸があります。 そして、その2つの軸はベルトやチェーンなどでつながれていて、2つの軸が無段階に大きくなったり小さくなったりすることによって、力の伝達具合を変化させるようになっています。

少しわかりにくいかもしれませんが、同じような物としてスポーツ用自転車の変速機(前と後ろにギアがあるもの)を思い浮かべて頂くと想像しやすいかもしれません。

そもそもCVTは、動力を伝達するベルトやチェーンなどに強度が必要なため、当初はトルクの高い自動車には採用されず、スクーターなどに採用されることが多かったのですが、ベルトや油圧システムの改良で自動車にも採用されるようになりました。。

■CVTのメリットとは?

CVTは、どのような理由から採用されることが多くなったのでしょうか。
CVTのメリットは以下のようなものとなります。

・変速ショックがない 無段変速機という名称の通り、無段階に変速比を変更できます。

そのため、変速ショックというものがありません。

通常のトルクコンバーター式ATは、変速時のショックがどうしても発生します。
変速時のショックの大きさが乗り心地やドライバビリティに影響を与えますが、パワーの少ないコンパクトカーではショックの全くないATを搭載するのは難しいのです。

その点、CVTであれば変速のショックがありませんので、変速時のショックについて考えなくて良くなるのです。

・エンジンの効率の良いところを利用できる 実は、内燃機関であるエンジンにとって、効率の良い仕事ができる領域というのは限られています。

CVTであれば、エンジンがもっとも効率よく仕事ができる領域を確保し続けることが可能です。

・燃費が良く、軽い CVTは、エンジンの効率の良い回転数を維持することができるので、結果的に燃費は良くなります。

そして、CVTは構造が比較的単純なため、トランスミッション自体の重量はトルクコンバーター式ATと比べると軽く作ることができます。

・F1に採用を検討されたことも
CVTは、エンジンの効率の良い回転数を常に利用可能だということでF1マシンに搭載することを検討されたこともあるそうです。その当時のテストでは、通常のトランスミッションと比べてサーキット一周当たり数秒速くなると言う結果をもたらしたそうです。

結果的にレギュレーションによって実現はされませんでしたが、CVTが効率の面で優れたトランスミッションだということは確かです。

■CVTのデメリットとは?

万能のように見えるCVTですが、弱点は有るのでしょうか。
一般的に考えられるCVTのデメリットは以下のようなものがあります。

・コストが高い 一般的に、変速に段(ギア)のある通常のATと比べると、CVTの方がコストが高くなります。

逆に、CVTは通常のATと比べると、カタログ上の燃費表示では良い値になります。

・加速にタイムラグがある
CVTを搭載した車では、急加速しようとして大きくアクセルを踏み込むとエンジン回転数だけが先に上昇して、その後一定回転数に固定された状態で加速が始まります。

また、急発進もCVTの苦手な項目の一つで、発進からある程度の速度に達するまでは、ミッション保護のために発進加速が制限されることがあります。
このような特性は、筆者もスバルWRX S4などのハイパフォーマンス車で体験したことがあります。

このような特性を、ラバーバンドフィールや、モーターボートエフェクトなどと呼ばれ、CVTのネガティブな特性として評価されることが多いのも事実です。

・加速が一定 CVTを搭載した車のフル加速は、その加速中、加速度が常に一定となります。

人間は、加速度が一定だとスピード感を感じない性質があり、車が速く走っていても速くないという感覚を持つようです。

そのため、CVTにあえて段(ギア)付きATの様に変速比のステップを付けるものもあるくらいです。

■日本ではCVTが主流で欧州ではDSGが主流の理由

では、どうして日本ではCVTが主流なのでしょうか。
それは乗り心地とカタログ燃費において少しでも良い結果を出したいということに尽きます。

日本人は、車の変速時のショックなどを嫌います。 そして、市街地などでの低速走行が多い国産のコンパクトカーでは運転している実感よりも、燃費を重視する傾向があります。

そんなわけで、国産車ではCVTを採用するのが一般的になっていったのです。

それに対して、ヨーロッパやアメリカでは変速のショックはあって当たり前と考えられています。
CVTの効率よりも、段付きのあるトランスミッションの方が運転する実感が得られるという点で、CVTは敬遠される傾向があるのです。

かつて、AudiがCVTを搭載したA4を販売していましたが、現在ではCVTがラインナップから消えているのもそうした理由からだと考えられます。

■今後も日本ではCVT優位が続く?

では、今後も日本はCVTが優勢な状態が続くのでしょうか。
実は、少し流れが変わっているように感じる出来事が起きています。

例えば、マツダは一番小さいデミオにもCVTを採用せずにトルクコンバーター式の6速ATを採用していますし、スズキはMTの機構を機械で操作する「AGS(オートギアシフト)」というセミオートマティックトランスミッションをキャリイやアルトに採用しています。

このような選択は、運転するという実感にとってCVTはあまり良くないということをメーカーも自覚しているのだと考えられます。
CVT一辺倒で燃費重視の他の国産メーカーも、運転することが楽しくなるようなトランスミッションを採用してくれることを願っています。

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