ロータリーエンジンとは?異端だが完璧なこのエンジンを元プロメカニックが解説 | カーライフマガジン

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自動車業界の経験者が教える、他では聞けない「クルマの基礎知識」

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ロータリーエンジンといえば、マツダ車の代名詞的なエンジンです。
1960年台にコスモスポーツが10A型2ローターで排出されたのが世界初の実用量産型ロータリーエンジンです。

ロータリーエンジンは完成されたエンジンといっても過言ではありません。
独自の進化を遂げているわけでもなく、強化パーツが次々と輩出されているわけでもない特異なエンジンです。

しかし、このロータリーエンジンにはとてつもなく長い歴史があったのです。
今回は、ロータリーエンジンの歴史を振り返ると共に、ロータリーエンジンっていったいどんなものなのかという疑問を解決していきたいと思います。

1.ロータリーエンジンの歴史

ロータリーエンジンを開発したのは、実はマツダ社ではありません。 1957年にドイツのNSU社とヴァンケル社が共同開発したエンジンなのです。

この2社が合併し、現代ではアウディ社へと社名を変更しています。

しかも、このロータリーエンジン開発までの道のりは、理論構成から100年以上の長い時間が隠れているのです。

世界中のさまざまな自動車メーカーが実用化に向けて研究と試作を繰り返しましたが、結局完成にまで至らなかった駄作エンジンだと見切りをつけられてしまいましたが、マツダ社だけはそれをしませんでした。

日本人の物づくりに対する姿勢は、どの国の人間よりも筋の通ったものであったことがうかがえる事実です。

ロータリーエンジンの凄いところは、燃焼サイクルを行うための燃料を選ばないというところです。
実用化されたのはオットーサイクルと呼ばれるレシプロエンジンと同じものですが、ディーゼルエンジンと同様に圧縮圧力による発熱だけでの自然発火を用いた燃焼サイクルでも動くことができるのです。

現状はオットーサイクルを用いているため、点火プラグによってガソリンを発火させていますが、燃料を自然発火させるほどの強大な圧縮圧力にも耐えることができる超高性能エンジンなのです。

そして、現代ではエンジン内部で水爆を起こしてエネルギー交換をしようとしているほどのエンジンです。

自動車のエンジンルームという限られたスペースであるにも関わらず、核エネルギーに匹敵するほどの水素爆発を受け切るエンジンは他にないでしょう。

2.ロータリーエンジン搭載の名車たち

名車1.コスモスポーツ

10A型ロータリーエンジンという世界初の量産型ロータリーエンジンを搭載した自動車です。
このコスモスポーツが発表される以前に、NSUヴァルケン社からRR車としてヴァルケンスパイダーが発表されていましたが、低回転域でのトルク不足などの問題を抱えていたため、自然と存在を消していった経緯があります。

しかし、この問題をマツダ社は1ローターから2ローターへとサイズアップすることで解決し、マツダ110Sとして1968年のニュルブルクリンク84時間耐久レース【マラトン・デ・ラ・ルート】を総合4位という好成績を残し完走を果たしたのです。

このレース時には、量産型用の鋳鉄ハウジングではなくエンジン全てをアルミニウム合金にて軽量化をしています。

なぜこのコスモスポーツが名車といえるのかは、10A型ロータリーエンジンの秘密にあります。

10A型ロータリーエンジンには炭素鋼を使用しており、マテリアル的メリットがとても大きなエンジンになっているのです。
一番の特徴は耐久性の強さで、本来なら、高回転エンジンであるロータリーエンジンはオイル切れを起こしやすく焼き付きやすいエンジンなのです。

それを、この炭素鋼がタフネスフルなエンジンへと変化させてくれることから、今もなおコレクターに受け継がれることができているのです。

名車2.サバンナ

ロータリーエンジンを搭載した自動車の5車種目であるサバンナは、1971年を皮切りに、クーペ セダン ステーションワゴンのラインナップを輩出したモデルです。

RX-3、RX-7が有名ですが、その名を世に知らしめたのは【富士ツーリスト・トロフィー500マイル】にてプリンス スカイラインGT-Rの連勝記録を止めたという偉業です。

10A型ロータリーエンジンから12A型ロータリーエンジンに変化するのも、このレースを経たことが大きな要素となっています。

しかも、このサバンナは他社のスポーツカーに比べ価格帯が低かったため、人気に拍車がかかったとのこと。

ここまでが10A型 12A型ロータリーエンジンを搭載したサバンナRX-3時代の話です。

1978年からサバンナはRX-7へとフルモデルチェンジすることとなります。
12A型2ローター水冷ロータリーエンジンを標準搭載していて、130馬力のライトウェイトパワーマシンの登場です。

3タイプのラインナップがあったRX-3から、3ドアファストバッククーペのみの展開となり、排気ガスを再燃焼させるサーマルリアクターを採用することで、ロータリーエンジン特有の燃費の悪さを改善しました。
後にサーマルリアクターは触媒コンバーターへと流れを変え、より一層燃費アップされました。

当初、NAのみであったエンジンから日本国内限定でターボエンジンへと変えたことで、165馬力までパワーアップを果たしています。
海外向けには13B型ロータリーエンジンを搭載しています。

1985年以降は、今もなお人気の衰えを見せないFC3Sと呼ばれるRX-7へとフルモデルチェンジを迎えます。
搭載エンジンは13B-Tロータリーエンジンで、ポルシェと同等に走行できる日本車として海外からも人気を得る自動車になったのです。

サバンナという車名は、このFC3Sをもって姿を消すことになりました。

名車3.マツダ RX-7

1991年からボディー形状が一新され、マツダというよりもアンフィニ RX-7として世に出てきたのがFD3S型RX-7です。

ピュアスポーツとして開発を続けられてきましたが、一般ユーザーのスポーツカー離れを理由に2002年に生産終了となった悲しきピュアスポーツカーです。

FD3Sについては、いずれスポーツカーの特集にて細かくお話したいと思いますが、これほどまでにシンプルで純粋に走ることを突き詰めた日本車は他にないでしょう。

3.ロータリーエンジンの仕組み

ロータリーエンジンは、とても単純な構成で作られています。
主な構成パーツは以下の通りです。

ローター

ピストンとコンロッドの役割があり、おにぎり型をしています。
燃焼室の中を回転して動力を作り出します。

シール

ピストンリングの役割があり、4種類のシールによって燃焼室内の機密を保持しています。
特に、アペックスシールというローターの頂点に設置されるシールは、ハウジング内を舐めるように通過していくので摩耗しやすいパーツになります。

エキセントリックシャフト

クランクシャフトの役割を持つロータリーエンジンの出力回転軸になります。

ハウジング

シリンダーブロックやシリンダーヘッドなどの、外側から見えるエンジンの構成パーツを一挙に引き受けているパーツになります。
ローターハウジングがシリンダーブロック、サイドハウジングがシリンダーヘッドの役割を持っています。

ロータリーエンジンは、回転運動を回転運動のまま出力するためメカニカルロスの少ない効率の良いエンジンだといえます。

4.まとめ ロータリーエンジンは進化を必要としない究極のエンジンとなる

今回、冒頭で少しだけ触れましたが、ロータリーエンジンはマツダが実用化させてから大きな変更や進化というものをしていないエンジンになります。
むしろ、変化する必要がないほどの完成度を誇るエンジンだということです。

現状の課題は、水素燃料を使用しても壊れないマテリアルを低価格で一般化させていくことでしょう。
アルミニウム合金のハウジングでも問題なく試作されていますが、マテリアル的な進化は総合的に自動車の寿命を延ばす要素となります。

この先、ロータリーエンジンがさらなる進化をするとすれば、ローター数を増やすか軽量な高耐久マテリアルへの変更程度でしょう。

今、自動車の未来は省燃費自動車や電気自動車というエコ路線を見据えています。
水素エンジンとしても使用されるロータリーエンジンは、エコカーの最有力エンジンへと向かうと私は確信しています。

水素燃料を補充することを模索されていますが、水を電気分解し燃焼サイクルを経て再度水に戻るという行程を踏むことができれば、石油燃料に頼る必要もなく、燃料切れも一切恐れずに自動車に乗り続けることが出来るでしょう。

そんな夢を観ることができるのがロータリーエンジンなのです。

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