自動車業界の経験者が教える、他では聞けない「クルマの基礎知識」
自動車は、あなたに対して言葉を発して訴えることができません。 しかし、トラブルが出る前には必ず合図を発信しているものなのです。 ただ、その合図はとても小さな声なので、しっかりと耳を傾けていなければ聞き逃してしまいます。 もし聞き逃してしまった場合、その声がだんだん大きくなってきて、最後にはトラブルでは済まなくなってしまうのです。
今回は、あなたがどれだけ自動車に向き合っているかで、自動車の寿命が大きく変わっていくということをお伝えしたいと思います。
1.自動車は語りかけてくる
本来であれば、物である自動車があなたに語りかけてくるなんてことは有り得ません。 しかし、実際に語りかけてくるので信じる他ありません。 自動車はあなたの視覚に、嗅覚に、聴覚に、触覚に訴えてきます。 それがどのようなことなのかについては以下に綴っていこうと思います。 あなたは、その自動車からの訴えをできるだけ小さな状態で察知できるようにしなければなりません。
ではその真意についてお伝えさせて頂きます。
2.メーターパネルから分かる不具合
あなたの視覚に訴えてくる自動車の声、それはメーターパネルに現れます。
ウインカーランプのトラブルがあれば、異常なまでに速い点滅を繰り返します。
エンジンエアフィルターの詰まりは、エンジンの回転異常を起こすためスムーズな回転計の動作をしなくなります。 さらにミスファイアを起こすため、エンジンチェックランプとなってトラブルを知らせてくれます。
このチェックランプが点いてしまった場合、多くの箇所にトラブルを併発してしまっているので、少しでも早く自動車整備工場へと持ち込むべきでしょう。
スピードメーターが正常に作動しない、針が踊ってしまうようなときはバッテリー電圧の低下です。 冬の朝によくあることですが、バッテリー電圧が下がってしまうと時計がリセットされてしまうことがあります。 できるだけ早く充電しておきましょう。
充電してもバッテリー電圧が復活しない場合は、残念ながら寿命がきているということなので交換が必要です。
これらの声に対し、あなたはいち早く察知することができるように気を配りましょう。
3.臭いで分かる自動車の不具合
あなたの嗅覚に訴えてくるトラブルは、エンジンルーム内で大きな問題につながるものになります。 エアコンの吹出し口から臭いは車内に侵入してきますので、ほんの少しの異臭でも感じたら直ちに対処していきましょう。 よく聞く臭いは【イカ臭い】異臭です。 これは、ラジエターキャップの劣化によりクーラント液が吹き出してしまっていることを意味します。
この状態になってしまうと、オーバーヒートを起こしてしまい甚大なダメージを自動車に与えてしまうことになります。
また違う臭いとなると【コゲ臭さ】です。 この臭いには本当に気をつけなければなりません。
エンジンオイルが燃えてしまっている場合がほとんどで、その現象には【オイル下がり】と【オイル上がり】の二種類があります。
オイル下がりの場合、エンジンヘッド側の問題ですので整備作業としても軽いもので済みます。
バルブという部品がしっかり閉まりきらないことで起こるトラブルで、エンジンヘッドに溜まっているオイルが燃焼室内に垂れてしまい、エンジンオイルの量が減っていくものになります。
オイル上がりの場合、ピルトンに付いているピストンリング・オイルリングの摩耗によって起こるトラブルのため、一度エンジンを外して行う整備作業となってしまいます。 【エンジンオーバーホール】という言葉のほうが認知度は高いかも知れません。 この作業は作業工賃も部品代も大きくなってしまいます。 交換部品としてはリング3本だけなのですが、クーラント液も入れ替えになりますし、エンジンオイルももちろん入れ替えになります。 また、3本のリングだけの摩耗ではなく、シリンダー自体の摩耗も調べたりしなければならないため、専門技術や専用工具が必要となってしまうのです。
作業工賃には、この専用工具などの準備費・維持費なども含まれてしまうので、どうしても割高な作業となってしまうのです。
また、同じコゲ臭さでもエンジンルームからではない場合があります。 それが【ブレーキの焼き付き】です。
フェード現象と呼ばれていて、ブレーキパッドの表面が焼き付いてしまいしっかりとした制動力を得ることができずに、最悪の場合追突事故につながってしまうトラブルになります。
ここに挙げたのはほんの一部ですが、最低限理解しておきたい嗅覚で分かるトラブルですので覚えておきましょう。
4.音で分かる自動車の不具合
音というのは、かなり早い段階で自動車から発せられる声なので、あなたが注意していれば甚大なトラブルになることを防ぐことができます。
小さなところで言えば、エンジンスターターのオーバーランです。 クランキング時にキュキュキュッとスターターモーターがエンジンを回しますが、エンジンがかかった後も何かがガガガという音を出しながら回り続けてしまうようなことがあります。 これは【スターターピニオン】という部品の戻りが悪くなってしまい、回り続けてしまう現象のことを言います。 早い段階で処置できれば何てこと無いトラブルですが、放っておくとエンジンスタートできなくなってしまいます。 つまり、自動車の形をしたオブジェとなってしまうということです。
早く対処しましょう。
また、ステアリングを最大に回した時に何かを擦っているような音がしたりもします。 ホイールを変えている場合は、タイヤハウスにタイヤがぶつかっている可能性があります。 しかし、純正状態にも同じような音を耳にした時、これは危険信号として既に赤信号になっています。 ドライブシャフトというエンジンの回転をタイヤに伝えている部品があります。 このシャフトにガタがあることで発生する異音になります。
このままの状態で走行し続けると、エンジンオイルが漏れだしエンジンの焼き付きを起こす、またはドライブシャフトが折れてしまい走行不能の事態に発展してしまうことが予測できます。
音が出ているということは、既にトラブルの始まりになりますので、気になった時には必ず点検整備に出しましょう。
5.振動は壊れる前兆
振動が起きているときは、既にトラブルが起きていると考えましょう。 座席に座っていて背中に感じる違和感、ブレーキを掛けた時のコツコツというおかしなキックバック、ステアリングを伝わってくるガタガタ感、アイドリング中のエンジンからの異常な振動。 これら全てがトラブルです。 挙げ始めればキリがないほど振動には確実なトラブルがつきまとっています。
振動を感じたら、一秒でも早く整備工場に持ち込み症状を相談しましょう。
6.まとめ 自動車に向きあう姿勢を大切に
ここまで挙げてきたトラブルサインは、あなたが自動車としっかり向きあうことで必ず感じ取ることができる自動車からの声なのです。
言葉を交わせない相手からの悲鳴をしっかりと感じ取ることができれば、あなたはどの自動車に乗っていても安全に走行していくことができるでしょう。
しかし、慎重になりすぎてもいけません。
何事もほどほどに、それでいてしっかりと向き合うことを心掛けましょう。
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