自動車業界の経験者が教える、他では聞けない「クルマの基礎知識」
夏タイヤから冬タイヤへと移行するこの時期。
ただセット交換するだけであればジャッキアップして履き替えるだけで済みますが、数年繰り返し使用を続けたことで残り溝がなくなってしまったスタッドレスタイヤが装着されていた場合、当然タイヤ自体をはめ替えなければ安全に走行することが困難になります。
オートバックスやイエローハットのような量販店でも、タイヤ専門店でも依頼できる作業ですが、その作業工賃の高さに「まだ今期は替えないでも良いか…」という考えも生まれてしまいます。
ハッキリと断言致します。
タイヤだけは、どんなことがあっても適正値を守るべし!
表現的にはザックリですが
•オイル交換をしなくても壊れるのは自動車 •板金し直さないでも見栄えが悪いのは問題ない
•ガソリンが入っていなければ走行はできない
しかしながら、タイヤが適正な状態を保てないまま走行すると
危険が及ぶのはあなたの命であり、周囲を走行する他車であり、歩行者なのです。
自動車に乗る者として、常に安全への配慮は怠ってはなりません。
しかし、どうしても作業工賃が足を引っ張りタイヤ交換の時期に目を瞑ってしまう。
この状況を打破するためにも、あなた自身の手でできるタイヤのはめ替え方法を知っておきましょう。
1.必要な工具
タイヤのはめ替えに必要となる工具は下記のものです。
•ビードブレイカー •タイヤレバー
•バルブコア外し
この3点があれば、手間さえかければ誰にでもタイヤのはめ替えは可能です。
しかし、それだけでは時間もかかり、コツを掴まなければ下手をするとホイールを破損させる恐れがあります。
そこで役に立つのがタイヤチェンジャーです。
エアー式や油圧式のものは、タイヤ交換を請け負う業者で使われている大型のものになります。
1台50万円を軽く超えるその実力は、間違いなくプロ仕様です。
しかし、そんな予算も場所も簡単には用意できませんし、通常の個人の使用であれば、3年周期と呼ばれるタイヤ交換は一生かけても20セットも組み替えることはありません。
まさに宝の持ち腐れ。
そこでオススメしたいのが手動式タイヤチェンジャーです。
価格も2〜5万円程の低価格で、タイヤレバーで細かくビードを起こしていくよりも手早く作業が完了する代物です。
同時に、ゴムハンマーがあるとタイヤをはめる工程で幾分かの時間短縮を見込めます。
さらに、新たなバルブを確実に装着するためにバルブインサーターが必要となり、より簡単にタイヤを外していくために大型のシャコマンがあるとベストです。
そして、忘れてはならないビードワックスですが、意外と高価な油脂のため、私は応急的に濃く作った石鹸水を多用します。
2.実際のタイヤ交換の工程
まずは自動車からタイヤを外します。
通常のタイヤローテーションなどでは、ここで設置位置を確認しておく必要がありますが、タイヤ自体のはめ替えの場合、新たなタイヤをはめていくので不要ですね。
タイヤを外し終えたら空気圧を抜いていきます。
ここで使用するのがバルブコア外しです。
バルブコアは小さなパーツなので、一気に抜き去ってしまうと内部の空気圧に負けてどこかへ吹き飛んでしまう可能性が大いにあります。
少しずつ緩めていくことで徐々に空気圧が下がっていくので、10秒程度待ってから完全にバルブコアを外すようにしましょう。
空気圧を抜くのは1本ずつ、一度に済ませてしまうようにしましょう。
1本のタイヤをはめ替えてから次のタイヤに作業を移していくと、時間的なロスが出てきます。
この際、センターキャップも外しておくと後の作業で手間取ることがなくなります。
空気圧を抜き終え、いよいよビードを落とす作業に移ります。
なかなか手にする機会がないビードブレーカーですが、一般家庭では他に汎用性のない特殊工具に分類されます。
まずは、ホイールを傷つけないように毛布などで地面との接地面を無くしましょう。
エアーバルブを頂点に、約120度ずらした位置からビードを落としていきます。
万が一エアーバルブから作業を開始してしまうと、エアーバルブを再利用したい場合に使用不可となってしまう可能性があるのです。
また、無理な力がホイールにかかってしまう恐れがあり、最悪の場合ホイール破損を招く恐れがあります。
テコの原理で、作業者側のタイヤが浮いてしまうので、足で押さえながら作業するのがコツです。
確実に最終点までブレーカーを下ろすことで、ビードを落とす回数を減らすことができます。
全体を落とし終えたら、表裏を入れ替えて同じ作業を行います。
ここまで終えたところで作業の半分ほどが完了になります。
エアーバルブを同時に交換する際は、この時点で切り落としてしまい押し込むことで取り除くことができます。
タイヤチェンジャーにビードを落とし終えたホイールを設置します。
タイヤチェンジャーは微動だにしないほど力強く設置してある必要があります。
アンカーボルトなどで確実な設置をしておきましょう。
ハブボルトが刺さるホールに確実にポールを入れ込む必要がありますので、スポークの間に入れ込まないように注意しましょう。
確実にセットできない状態で作業を進めてしまうと、ホイールを破損する事態に陥ります。
この際、真っ直ぐにホイールは設置できません。
付属パーツを全て取り付けた状態で、センターホールに付属ナットを締め付けていきます。
手力で締め付けられる程度で問題はありません。
付属のロングバーでビードを起こします。
この際、大型のシャコマンで一部を押し潰しておくと、いとも簡単にビードを起こしやすくなります。
ここでビード全体に潤滑剤となるビードワックスや石鹸水を塗りつけます。
ポイントはホイールの耳にも塗っておくことです。
摩擦係数が減り、硬いビードがスルッと抜けていきます。
押し潰してある対角からビードを起こすことがコツです。
センターポールでテコりながら一気に回転させましょう。
シャコマンまでビードを起こし終えたところで、シャコマンを取り外します。
ロングバーを挿し直して逆回転させても大丈夫です。
これで片面のビードが起こし終わりました。
次に逆側を起こすのですが、ホイールを設置し直す必要はありません。
そのままの状態で、タイヤの隙間からロングバーを挿し込んでグルリと一周させるだけでタイヤが抜け落ちます。
ここでのポイントは、ホイールのセンターにある窪みに逆側ビードを落とし込んでおくことになります。
作業者の腹部でタイヤを押し付けておくと、自ずとホイールの窪みにビードを落とし込むことができます。
同じ作業をタイヤ本数分行っていただくと、全てのホイールからタイヤを外すことができます。
エアーバルブを付け替える場合、ここでバルブインサーターを使用し引き起こします。
ホイール内側からエアーバルブを差し込み、インサーターのネジを締めこみ引き上げます。
この際、バルブコアは外しておいてください。
最終工程で手間を減らすことができます。
それでは、肝心のタイヤのはめ込み工程です。
新規に設置するタイヤのビード部分にビードワックスや石鹸水を塗り付けておいてください。
タイヤの内外を確認し、回転方向を間違えないように押し込みます。
内側になる方は、一部をホイールの耳に引っ掛けることで簡単に押し込むことができます。
ビードワックスの塗り込みが弱いと、最後の部分で落とし込みに苦戦します。
ゴムハンマーで力一杯叩き込みましょう。
外側になるビードは、通常タイヤレバーではめ込んでいく工程です。
しかし、ここでも役に立つのが大型のシャコマンです。
内側ビードをホイールの窪みに落とし込むと、対角は地面がかなり見えるほどに隙間ができています。
そのため、外す際には押し込んでいましたが、はめ込む際には引きつけて作業します。
作業者側に隙間を作り、その状態でシャコマンを設置します。
この際、作業開始位置はエアーバルブの位置になります。
万が一工具を使用することになっても、エアーバルブを回避して作業できるので押さえておきましょう。
作業者側はこの時点でビードを落とし込めていますので、約120度ずらした位置に体重をかけて押し込みます。
運が良ければ、この勢いで全てのビードを落とし込むことができます。
若干落とし込みに失敗した際は、ゴムハンマーで叩き込みましょう。
タイヤレバーを多用してしまうと、不慣れな作業者の場合タイヤを傷つけてしまう恐れがありますので、私はゴムハンマーで叩き入れることを推奨します。
最後にビードをホイールに噛み込ませる工程が必要です。
これは単純にエアーを充填することで完了します。
通常220〜240kPa程度の空気圧が規定値とされていますが、確実にビードを噛み込ませるために「パンッ」と2度音がするまで過充填します。
2度音がする理由は、ビードが内外噛み合うからです。
バルブコアが外れているので、エアーチャックを外せば空気圧は抜け去ります。
空気の抜ける音が消えてからバルブコアを装着してください。
そして、最後に規定値での空気圧調整をして作業完了です。
ホイールバランスを取る必要もありますが、その工程はまた次の機会にご説明致します。
まとめ 自分でタイヤ交換できればコストを大幅に抑えられる
量販店などでタイヤを購入する際、かなり利幅を設定されているためどうしても高額な買い物となってしまいます。
しかし、ネットの中では1本単価2,000〜4万円程度で格安タイヤからレースタイヤまでもが販売されているのが見受けられます。
できることなら、タイヤに大きなコストをかけずに自動車に乗り続けていきたいのが本音です。
コストをかけずに手間をかける。
これは、チューニングカーに乗るユーザーだけに当てはまる項目ではありません。
一般ユーザーであっても、できることを自らの手で遂行できれば軽く車検費用をまかなえるほどのコストダウンを図ることができるのです
工具は、一度購入してしまえば破損するまで使い続けられます。
あわよくば小遣い稼ぎに繋げることも可能なので、ぜひ知識として覚えておくことをオススメします。
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