新しい車を選ぶときに国産車か輸入車かを意識する人は多いのではないでしょうか。
輸入車と言えば、少し前までは「よく壊れる、部品代(修理代)が高い」などとよく言われていたものです。
しかし、最近は輸入車がよく壊れるとか、維持費が高いという話をあまり聞きません。
では、実際のところどうなのか、15年以上輸入車に乗り続ける筆者の経験も踏まえて解説致します。
■昔は確かに壊れやすかった輸入車
10年から15年以上前、2000年以前の輸入車は確かに壊れやすいものもありました。
昔の輸入車で壊れる箇所と言えば、冷却能力が低いためのオーバーヒートや、ワイパーやパワーウインドウ、パワステなどの電装品の故障が主なものでした。
どうして故障が多かったのかというと、日本の気候や環境に輸入車の部品の性能が合致していなかったことが大きな理由だろうと考えます。
日本は、四季のはっきりした国で、夏は高温多湿、冬は極寒、都市部では年中渋滞が発生しています。
それに対してヨーロッパの国々は、日本ほど極端な気候変化がなく、渋滞も日本ほど過酷ではないため、日本の過酷な環境は想定されていませんでした。
そのために、輸入車は夏の渋滞では冷却能力の不足でオーバーヒートをおこす、パッキンなどのゴム部品の耐久性が低く、日本の過酷な環境ではすぐに劣化して水漏れをおこす、電装部品の耐久性が低くよく故障するなどしていました。
■輸入車と国産車の部品に関する考え方の違い
国産車は、新車で購入して10万キロまで、ほとんど手を入れずに維持が可能なほど耐久性が高い部品を使っています。
それに対して、輸入車(特にヨーロッパ)の自動車は、消耗部品については定期的に交換することを前提として作られています。
例えば、輸入車のブレーキは大変よく効きますが、その分ブレーキディスクの摩耗が激しく、数年で交換しなければなりません。
ブレーキパッドがあたるブレーキディスクも、国産車では交換することはほぼありませんが、輸入車であればブレーキパッド同様にブレーキディスクも摩耗しやすい材質のために、ブレーキパッド交換2回に1回はブレーキディスクも交換しなければならないことになっています。
同じようにサスペンション周りの部品やゴム部品なども一定期間で交換することを前提にしています。
そのために、当初から高い性能を発揮し、部品を交換すればその性能を維持できるとも言えるのです。
ホイールを車体に固定する方法の違いにおいて、国産車と輸入車の部品に対する考え方の違いがもっとも顕著にあらわれています。
国産車はスタッドボルトという、ねじ溝を切った棒が車体に付いており、タイヤをナットで取り付けます。
タイヤ交換時には、スタッドボルトがガイドになってホイールをはめやすいので、大変便利なのですが、このボルトが折れると修理にかなりの費用がかかります。
逆に輸入車は、ホイールを車体にボルトで固定します。
ボルトが痛んだ場合には、一本数百円のボルトを交換するだけで済みます。
このような事柄からも、輸入車は部品を消耗品と考え、一定期間で交換する物として考えていることが分かります。
輸入車の維持費が高いと言われるのは、そもそも昔はよく壊れていたと言うことに加えて、このような部品に対する考え方が国産車と輸入車で異なることによるのでしょう。
■最近の輸入車は日本対策済みで耐久性アップ
とはいえ、最近の輸入車はあまり維持費がかからないという話もありますが、それはどういう理由からでしょうか。
ここ10年ほどの輸入車は日本の気候や環境への対策がされていると言います。
それは、日本独自の気候と環境(道路状況)に対応するために冷却性能を向上させたり、ゴムや樹脂類の耐久性の向上させるなどの対策がおこなわれているのです。
最近では輸入車メーカーも日本でのテストを実際に行って対策を立てているようです。
そのほかにも、輸入車の電装部品にデンソーなどの日本の部品供給会社(サプライヤー)が採用されるようになってきたことも故障しにくくなったことに大きく貢献しています。
このように、輸入車メーカーが、国産車の耐久性に近づく努力をしているため、最近の輸入車は以前ほどよく壊れなくなりました。
■輸入車の保証制度を利用すれば、維持費はそれほどかからない?
輸入車の耐久性が向上したとはいえ、一度故障すると意外に費用がかかるのが輸入車の泣き所です。
しかし、そんな問題があることを輸入車メーカーも理解をしているようです。
日本で正規輸入している多くの輸入車メーカーは、3年間の故障に対する保証と法定点検整備費、消耗部品の無料交換パッケージというものを、無償または有償で提供しています。
2016年9月現在、各社の保証サービスは以下のとおりです。
メルセデス・ベンツ… メルセデスケア(3年間の無料保証、5年に有償で延長可能。点検サービスは別途有償)
BMW… サービスインクルーシブ(2016年10月1日の価格改定より3年間無償で提供。有償で5年まで延長可能)
MINI… MINI TLC.(3年、5年の保証を有償でサービス)
Audi… Audi Warranty(3年間の無料保証、5年に有償で延長可能。点検サービスは別途有償)
フォルクスワーゲン… 安心プログラム(3年間の無料保証、5年に有償で延長可能。点検サービスは別途有償)
多くの場合、有償で保証期間を2年間延長できるこのサービスを使えば、最長で5年間の維持費を固定することができ、いざというときにとても安心です。
筆者は、この15年間に3台の輸入車を乗り継いでいますが、全部に保証制度が付帯されていたか、任意で加入しています。
初めての輸入車として購入したBMW Z3は、4年半乗って全くトラブルがありませんでした。
次のフォルクスワーゲン・ゴルフGTIには7年間乗り、その間、年に数回サーキット走行を行うという過酷な使い方をしていましたが、保証を有償で延長した5年の保証期間中に大きな故障は全くありませんでした。
ただ、保証が切れた6年目以降に、冷却水漏れとドライブシャフトブーツが切れたと言う故障がありました。(いずれも修理費は2?3万でした)
現在乗っているBMW 3シリーズでは、リコールやサービスキャンペーンを除くと、冷却水のリザーバータンクのセンサー故障でセンサーを交換(保証期間で無償修理)したぐらいで、特に大きな故障もなく4年を過ぎようとしています。
■輸入車メーカーの努力で、国産車との差は縮まっている
このように、輸入車メーカーの努力によって、輸入車の日本の環境対応はかなり向上しています。
国産車のように10年10万キロをトラブル無しで走りきるというわけには行きませんが、メーカーによる保証のある5年程度は、大きなトラブルなしで走りきることができるようになってきました。
しかも、輸入車の保証制度を利用すれば維持費を固定することが可能です。
輸入車の維持費が心配な方も、保証のある3年または5年という期間を区切って試してみるのも良いのではないでしょうか。
輸入車を所有するということは、国産車にはない、外国の車文化を直接知ることのできるとても良い機会とも言えます。
輸入車の購入を維持費の問題で悩んでいる方は、上手く保証制度などを利用して、ぜひこの機会に輸入車の世界に触れて欲しいと筆者は思います。