このところ、日本国内に限らず、さまざまなメーカーがSUVを開発、販売しています。
少し前の話になりますが、ポルシェがカイエンの大成功によって威信を取り戻したという話や、最近ですと、ジャガーが初めてのSUVであるF-PACEを販売開始しました。
さらに、高級車メーカーであるマセラティからは「レヴァンテ」、続いてアストンマーチンやランボルギーニ、アルファロメオ、果てはベントレーまでSUVの販売を計画しています。
日本国内に目を移すと、欧州とは少し雰囲気が違っていますが同様にSUVが人気カテゴリーです。
日本国内は、欧州と比べるとコンパクトなSUVが人気を博しており、各メーカーはこのカテゴリーに新型車両を積極的に導入しています。
例えば、普通車ではニッサン・ジューク、ホンダ・ヴェゼル、マツダ・CX-3などがあり、軽自動車ではスズキ・ハスラー、ダイハツ・キャストなどの小型のカテゴリーのSUVがヒットしています。
現在、SUVの流行の流れは世界的なものとなっています。
では、どうして世界中のメーカーがSUVを開発しているのか考えてみましょう。
■欧州の高級車メーカーがSUVを開発する理由
欧州の高級車メーカーは新しいSUVをこぞって開発しています。
その理由は次に挙げる二つの理由からだと考えられます。
まず一つ目は、欧州の富裕層向けとしてのSUVの需要が増えているという事実があります。
欧州の富裕層は通常、複数の車を所有すると言われており、1台目にスポーツカーや高級セダン、2台目以降にSUVを所有することが多いと言われます。
高級車メーカーは1台目だけでなく2台目のSUVも自社の車を買ってもらえれば、売り上げは2倍になります。
その様な理由から高級車メーカーが新しいSUVをこぞって開発しているのです。
二つ目の理由は、新興国での需要だと言われています。
中国などの新興国の富裕層向け需要は、世界的に見逃せないほど大きくなっています。
新興国では、道路の舗装状態が良くないことも多く、SUVの需要も多いのです。
このように、欧州メーカーの高級ブランドのSUVが増えているのは、富裕層からの需要が増えているという背景が考えられます。
■日本でコンパクトSUVが流行している理由
日本ではコンパクトなSUVが流行しています。
コンパクトなSUV車が好まれるのはやはり日本の道路事情の影響も大きいでしょう。
小回りが利く小型の車が人気なのは納得がいきます。
そして、コンパクトSUVが流行している一番の理由はSUVのデザインの良さ、もしくは他と違ったデザインをした車と言うことで人気があるのです。
これまで、日本で流行してきたミニバンや、コンパクトカーはどれも似たようなデザインで特徴があまり有りませんでした。
自動車が白物家電化したとも言われていますが、そんな中にあって、コンパクトSUVは独自のデザインや、コンパクトなのに高級感があるディテール。
そして、非日常を予感させるさまざまな仕掛けによって、同じような車ばかりに飽き飽きしたユーザの心を惹き付けています。
例えば、マツダ・CX-3はマツダ共通のデザインと高級感のあるインテリア、1.5リッターのクリーンディーゼル搭載車のみ販売するという特徴が人気を呼んでいます。
そして、ニッサン・ジュークはその奇抜であるが独自なエクステリアデザインが人気となり、ホンダ・ヴェゼルはクーペの様な形状のボディとSUVを融合させたデザインの美しさが人気になっています。
■SUVを開発するメーカーの事情とは?
じつは、各社がSUVをこぞって開発するのにはもう一つの理由があります。
少し前までは、SUVと言えばラダーフレームというトラックと同じような車体構造を使用する必要がありました。
その開発には独自の知見が必要で、簡単に誰にでもできるという商品では有りませんでした。
しかし、近年では乗用車と同じモノコック構造の車体構造でSUVを作ることができるようになり、SUVを製造するための特殊な技術が不要になりました。
乗用車をベースにしたSUVや、ベースとなる乗用車のボディをオフロードテイストに小変更し、タイヤやサスペンションの調整によって車高を数センチ高くした「クロスオーバー」と呼ばれるモデルを比較的簡単に製造できるようになったためです。
とくにコンパクトSUVはほとんどが小型乗用車の車体を利用して設計されています。
例えばマツダ・CX-3は、同社のコンパクトカーであるマツダ・デミオの車体をベースに作られていますし、日産・ジュークは日産・キューブの車体、ホンダ・ヴェゼルはホンダ・フィットの車体がベースになっているという具合です。
また、インプレッサとインプレッサXVの関係や、ボルボV40とV40クロスカントリーといった具合にベース車両を少し変更してSUV的なテイストを出している「クロスオーバー」モデルの開発も盛んです。
そして、各メーカーがSUVをこぞって開発するもう一つの要因は、自動車メーカーの再編が進みメーカーの枠を越えて車体を共有することが可能になり、設計や製造のコストを下げることができると言うことです。
こちらも例を挙げてみると、例えばポルシェ・カイエンはグループ企業のフォルクスワーゲン・トゥアレグの車体をベースに開発されていますし、同じポルシェのマカンは、アウディのQ5というSUVの車体をベースに開発されています。
国産メーカーでも、トヨタのSUVであるハリアーはレクサスのSUVであるレクサスNXと車体を共有しています。
その他にも、フィアットとクライスラーがグループ企業となり、同じ車体をベースにフィアットは500XというチンクチェントのSUVを開発し、クライスラーはJeepブランドの最小SUVであるレネゲートを開発して販売しています。
この2台の車は、エクステリアデザインは全く異なるので、同じ車体を使っていると知っていないと、そのことに気が付かないほどです。
■世界的なSUVの流行は市場のニーズとメーカーの都合が合致した産物
このように、現在様々なメーカーでSUVが開発されている背景には、SUVが欲しいというユーザーのニーズと、乗用車をベースにしたりグループ企業内で車体を共有したりすることによって、これまでより短期間、低コストでSUVを開発できるようになった自動車メーカーの都合が合致した結果であると言えるでしょう。
今現在、様々なメーカーが個性的なSUVの開発を活発に行っています。
私たちにとっては、自動車選びの選択肢が増えることは歓迎すべきことです。
今後、どのようなSUVがどんなメーカーから販売されるのか楽しみで目が離せません。