自動車業界の経験者が教える、他では聞けない「クルマの基礎知識」
日産の主力車種の1つであるエクストレイルが2017年6月にマイナーチェンジが行われ、さらに魅力的な車へと生まれ変わりました。 SUVの火付け役でもあり、タフギアと名高いエクストレイルは、国内だけでなく日産の世界戦略車種として世界中で人気の高い車です。
そんなエクストレイルが、今回のマイナーチェンジでどのように変わったのか、その魅力のと評価をチェックしていきたいと思います。
マイナーチェンジによる変更点
エクストレイルのマイナーチェンジによる大きな変更点は次の2つです。
・エクステリアの変更
・プロパイロットの追加
エクステリアの変更
初代、2代目まではオフロード車らしいタフな印象が特徴的なエクステリアのデザインから、現行モデルである3代目ではそれまでのイメージを一新するような都会的でスポーティなデザインへと変わりました。
今回のマイナーチェンジでは、3代目の特徴を引き継ぎ、スタイリッシュなデザインはそのままに、日産のデザインコンセプトであるVモーショングリルをより強調したデザインにすることで、都会的でありながらワイルドさも兼ね揃えたデザインとなりました。
プロパイロットの追加
今回のマイナーチェンジの目玉がセレナに続くプロパイロットの採用です。
プロパイロットは日産が国内で初めて採用した自動車運転技術で、高速道路の同一車線で先行車との距離を保ちながらスピードの加減速とステアリングの操作を制御してくれるものです。
エクストレイルは、車内空間の広さや防水シートといった使い勝手の良さから「遊べる車」としての人気が高く、これまでもアウトドアやスポーツに欠かせない車として活躍してきました。
そのためロングドライブの機会が多いエクストレイルにプロパイロットが追加されえたことで、道中をより快適に過ごせるようになったのです。
その他の変更点
エクステリアの変更やプロパイロットの追加以外にも細かな変更が行われています。
インテリアは従来のものより上質な素材に変更されたことで、より高級感のある内装になっています。
エンジンのスペックは従来のものと同じですが、ハイブリッド車では回生ブレーキによるエネルギー回収の効率化に成功したことで2WDでの燃費が、これまでの20.6km/Lから20.8km/Lに伸びています。
また利便性の向上も行われています。
リアバンパーの下についているセンサーに足を近づけると自動でバックドアが開閉できる「リモコンオートバックドア」が採用されています。
国内初の“レベル2”の自動運転技術プロパイロットとは?
プロパイロットは、国内初の「レベル2」の自動運転技術として注目を集めました。
プロパイロットの特徴は、先行車を追従しながらスピードの加減速を行う点と、車線をキープするようにステアリング操作を制御してくれることです。
しかし、先行車との距離を保ちながら設定されたスピードで追従走行をする技術や、車線を逸脱しないように車線中央を走行するようにステアリングを制御する技術自体は他社メーカーにこれまでにも存在していました。
ただし、これまでにあった運転支援技術は、加速・操舵・制動のいずれかを行うもので自動運転技術でいう「レベル1」に留まるものです。
プロパイロットの優れている点は、これまでにあった運転技術の複数を同時に行うことができる国内初の「レベル2」の自動運転技術であることです。
安全性能として評価の高いスバルの「アイサイト」は、0~100km/hまで対応した全車速追従機能付クルーズコントロールと、車線中央を維持するためにステアリング操作をアシストしてくれるアクティブレーンキープ機能があります。
一見、プロパイロットと同じ機能のように見えますが、ステアリングの制御に約60km/h以上の場合のみといった制限があります。
一方で、プロパイロットでは先行車がいれば50km/h以下の低速時でもステアリング操作の制御が可能となったことでレベル2の自動運転技術として認められています。
これまでの技術だと渋滞時などに先行車に追従する形でスピードの制御を自動で行ってくれましたが、ステアリング操作は自分でしなくてはいけませんでした。
日産のプロパイロットでは渋滞時でもスピードの加減速だけでなく、ステアリング操作の制御も行ってくれる点が大きな特徴だと言えます。
プロパイロットは“半”自動運転技術
自動運転技術と聞くと、手放しで車が全ての運転をしてくれるようなイメージをしてしまうかもしれませんが、大前提としてプロパイロットは完全に運転を自動で行ってくれる技術ではないということを理解しておかなければいけません。
上でお話したように、プロパイロットはスピードの加減速やステアリング操作を自動で行ってくれる機能ですが、ハンドルに手を添えて自身でも前方の確認をしておかなければいけません。
手放しで自動で運転してくれる技術ではなく、あくまでも運転を支援してくれる“半”自動運転技術であることを認識していないと、プロパイロットを有効に使うことは難しいかもしれません。
しかし、正しい認識で使用すれば、運転でのストレスを軽減してくれる優れた機能であることは間違いありません。
気になるプロパイロットの使い勝手は?
今回のマイナーチェンジで最も気になるポイントがプロパイロットの使い勝手だと思います。
プロパイロットの操作は、ハンドルに付けられたボタンで簡単に操作できるので、親指一本でプロパイロットを始動させることができます。
プロパイロットは高速道路での使用を目的とされているので、視線を前方から移さずに手軽に操作ができるのは重要なポイントです。
プロパイロットを始動させると、設定したスピードで先行車を追従し始めます。
ハンドルに手を添えている必要はありますが、カーブなどのステアリング操作は車が自動で行ってくれます。
基本的には、先に搭載されたセレナのプロパイロットと同じ機能ですが、車種の違いによる調整が行われており、セレナのプロパイロットよりも先行車の追従性やステアリング操作のスムーズさが向上しているように感じるとの声が多くあります。
◎プロパイロット搭載第1号のセレナについてはこちら
基本的にはペダルの操作は必要ないですが、急カーブや急な割り込みなどでセンサーが検知できない状況になるとプロパイロットによる制御を解除される可能性があります。
そうなってしまうとブレーキの作動が遅れてしまうこともあるので、すぐに対応できるように足は常にペダルに向けておく必要があります。
このようなプロパイロットによる制御が難しいシーンでは、事前に手動での制御に切り替えるなど、プロパイロットの特徴を理解した上で機能を使いこなすことができれば、運転によるストレスを大幅に軽減してくれます。
新エクストレイルはコスパが良い!
プロパイロットは標準装備ではなく、メーカーオプションのセット内容に含まれています。
プロパイロットを含むセットオプションは、プロパイロットの他に自動でハイビームとロービームを切り替えてくれる「ハイビームアシスト」や、後側方車両検知警報などの安全装備がセットになって約14万円のオプションです。
一方で、セレナでプロパイロットを含むセットオプションは約24万円(ただしエクストレイルとはセットの内容が異なる)なので、エクストレイルは10万円ほどお得にプロパイロットを選択することができます。
そのため、比較的手軽にプロパイロットを装備することができるため、多くのユーザーがプロパイロットのセットオプションを選択しているようです。
プロパイロットは国内では初となるレベル2の自動運転技術ですが、海外メーカーでは自動運転技術への取り組みが国内より進んでおり、レベル2以上の自動運転技術が採用されているものもあります。
ただし、海外メーカーで自動運転技術が採用されているモデルのほとんどが高級車であり、価格も非常に高価であることが特徴です。
例えば、自動運転技術を積極的に取り入れているベンツでは、プロパイロットと同じレベル2の自動運転技術「ドライブパイロット」を搭載したEクラスは600万円以上の価格です。
一方で、エクストレイルのプロパイロットは標準装備ではないものの、セットオプションを追加したとしても300万円以内に収めることが可能であり、ベンツのEクラスの半分以下でレベル2の自動運転技術を使用することができることになります。
エクストレイルの同じ価格帯であるミドルクラスSUVは非常に激戦区ですが、プロパイロットを始め様々な装備を豊富に揃えたエクストレイルは、激戦区の車種の中でもコストパフォーマンスに優れた車だと言えます。
気になるエクストレイルの評価は?
エクストレイルは4WDによるオフロード走行性能や、車内空間の広さと防水シートを採用することで荷物を気にせず載せられることが特徴の本格的なSUVです。
エクストレイルの特徴は、SUV本来の魅力に加えて、燃費性能や安全装備も備えた総合的な評価が非常に高いことです。
その上、今回のマイナーチェンジでプロパイロットが追加されたことでアウトドアや趣味のためのロングドライブをより快適に行うことができるようになりました。
エクストレイルは、普段の移動手段としての乗り物というよりも、自分の趣味や休日をより楽しむためのツールであり、あなたの生活をより豊かにしてくれる存在です。
そういったポイントを評価するのであれば、新しいエクストレイルは非常におすすめの車と言えるでしょう。
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