乗用車におけるオートマチック車(AT車)の比率が98%以上を超える日本ではマニュアルミッション車(MT車)をあえて選ぶ人は車の運転がよっぽど好きな人に限られているのが世間一般的な認識でしょう。
それとは反対にヨーロッパではMTはまだまだ現役ですし、AT車大国のアメリカではMT車(スティックシフト)を運転できることが逆に格好良いとされていたりします。
日本ではあまり売れないMT車をあえて輸入してくれる輸入車メーカーにはMT好きとしては本当に頭が下がります。
今回は車種別ではなく、MT車を積極的に日本に輸入しカタログモデルとして設定しているメーカー・ブランドを紹介したいと思います。
■第5位 プジョー・シトロエン(グループPSA)
グループPSAは、プジョー・シトロエン・DSブランドを扱うEUで第2位の規模の自動車メーカーです。
しかし、日本では今ひとつメジャーではないメーカーだともいえます。
グループPSAの本拠であるフランスでは、特にMT車の比率が高い国なので日本にもMT車を積極的に導入しているかというと、頑張ってはいますがちょっと微妙な状況です。
プジョーは、ハッチバックのBセグメントの小型車プジョー208、Cセグメントのプジョー308、2シータークーペのプジョーRCZなどにMTが設定されていますが、シトロエンとDSブランドに関しては、以前はMTの設定があったものの現在ではATのみの設定になっています。
おそらく、走りに関してはプジョーが担当し、高級感はDS、デザインが奇抜で走りよりもライフスタイルを重視した車をシトロエンが担当するという棲み分けになっているものと思われます。
もちろん、日本での販売台数がそれほど多くないので車種を絞らなければならないという事情もあるのでしょう。
話をプジョーに戻すと、プジョー308GTiとRCZには4気筒1.6リッターエンジンからなんと270馬力という高出力を出すエンジンが搭載されていて非常に魅力的です。
そして欧州で評判の良いディーゼルエンジンを日本に導入し始めたグループPSAですが、ご自慢のディーゼルエンジンにもMTを設定してみたら面白いのでは?と個人的に思います。
■第4位 ポルシェ
ポルシェは非常に高性能なデュアルクラッチのオートマチックトランスミッションPDK(ポルシェ・ドッペル・クップルング)を採用しているメーカーですが、実はMT車もしっかりラインナップとして用意してくれています。
ボクスター、ケイマンといったミッドシップスポーツカーはもとより、911カレラ、911カレラS、911カレラ4、911カレラ4Sと多くのスポーツモデルでMTを選択することができます。
ボクスターとケイマンは日本のアイシン精機の6速マニュアルトランスミッションを採用していますし、911はPDKをベースとした7速マニュアルトランスミッションを採用しています。
しかし、少し前までSUVのカイエンにもMT車が設定されていましたが、現在はSUVのマカンとカイエン、4ドアのパナメーラはPDKのみの設定となっているのが残念です。
■第3位 フォルクスワーゲン
フォルクスワーゲンは、6代目のゴルフにモデルチェンジした時にラインナップからMTが消えてしまいました。
しかし、2015年にMTの再導入が発表され、6年ぶりにゴルフGTI、ゴルフR、ポロGTIといったいわゆるホットハッチのモデルにMTが設定されました。
筆者は5代目ゴルフGTIのMTに乗っていたので、MTの復活は大変嬉しかったことを記憶しています。
デュアルクラッチのDSGは人間よりもシフト操作が早く、加速でもMTの方が遅いのが悔しいですが、やはり人間が操作できる範囲の広いMT車は速さを置いても選びたくなるものです。
特に4気筒2リッター直噴ターボエンジンから310馬力パワーを絞り出し、それを4輪駆動で受け止めるゴルフRは、走りだけでなく9インチ大型インフォテイメントシステム(なんとポルシェと同じシステム)、ナビゲーションの地図も表示できる12インチのフル液晶メーターパネルなどが標準装備となっています。
値段は500万円オーバーですが、この装備を考えると非常にお買い得だと考えます。
■第2位 BMW/MINI
MINIは、BMWの手によって復活した英国車のブランドですが、いまではすっかりBMWのMINIとして定着しています。
BMW MINIには、3ドア、5ドア、クラブマンとSUVのクロスオーバーというラインナップがありますが、3ドアに関してはMINI One、MINIクーパー、MINIクーパーS、MINI JCW(ジョン・クーパー・ワークス)と、すべてのグレードでMTを選択することができます。
逆にいうと、5ドアのMINIやクラブマン、クロスオーバーではATしか選択できないのが残念です。
また、BMWもMTに関しては負けていません。売れ筋のセダンの3シリーズ320i、少し小型の2シリーズクーペにもMTが設定されています。
とくに2シリーズは、初代M3とサイズが似ているコンパクトさで、2ドアなことを除けば日本ではジャストサイズのBMWであると考えます。
そしてBMW自慢ののハイパフォーマンスマシンであるMモデルにもM4クーペ、M2クーペにMT車が設定されているのです。
Mモデルには通常デュアルクラッチのATが用意されますが、M4とM2というちょうど良いサイズのハイパワーマシンにMTが設定されているのは(買えないけれど)ワクワクします。
■第1位 ルノー
ルノーは積極的にMTを輸入しているとても珍しいメーカーです。
現在MTで購入することができるのは、荷物がたくさん積めるカングー、小型Bセグメントハッチバックのルーテシア、そしてCセグメントのハッチバックのメガーヌ、メガーヌのワゴンであるメガーヌエステート、そしてニュルブルクリンクでFF最速を争うメガーヌR.Sです。
ルノーを評価したいのは、他のメーカーが基本的にスポーツカーやスポーティーな車種やグレードにのみMTを設定しているのに対して、実用車から小型車、スポーツモデルまで幅広い選択肢をユーザー与えてくれていることです。
そしてルノーはなんとMTが設定されていない車種の方が少ないのです!
最近では国産メーカーでもMTを設定する車種が少なくなり、車を選ぶのに困る状況なのに、本当に凄いことです。
筆者も、もう少し歳をとったらカングーのMT車を購入してゆっくり走るのもいいかもなと考えてしまいます。
■まとめ
MTの選択肢が少ないと言われていますが、こうしてみると意外とMTの選択肢が多いですね。
しかし、各メーカーとも2ドアや3ドア、2シーターなどのスポーティーなモデルのでMTの設定が多いのが残念ですが、ポルシェ・カイエンは当初MTが設定されていたにもかかわらず、それが廃止されたのはやはり人気がないからでしょう。
売れないから仕方がないとはいえ、筆者のように家族がいるユーザーは4ドアや5ドアモデルのMT車の設定がないと購入しにくいものです。
無理を承知で、4ドアや5ドアの車にもMTを導入してくださいとお願いしたい気分です。
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