自動車もメンテナンスフリーが主流となった現代では、積載工具の必要性を感じていないユーザーが増えてしまっています。
その証拠に、今ではスペアタイヤさえ搭載義務がなくなり、軽量化重視、燃費向上などの観点から装備されていない自動車がほとんどです。
たしかに、新車においては最初の5年間トラブルレスといわれるまで自動車の性能技術は向上しており、ユーザーが自動車の知識を特に必要とする場面は無くなっています。
しかし、カーライフにおいてトラブルは起こって当たり前のものなのです。
いざという時のために、積載しておくべきメンテナンスツールを押さえておきましょう。
1.バッテリーがあがってしまった時の対処法
自動車のトラブルで真っ先に頭に浮かぶのがバッテリートラブルです。
バッテリーがあがってしまう主な原因として
•半ドアや室内灯の点けっぱなしによる電力消費
•自動車を長期間使用しなかった場合に起こる自然放電
などが考えられます。
普段あまり距離を乗らない場合も、発電時間が短いため蓄電量が少なくバッテリーあがりが起きる原因になります。
また、外気温が影響する特性から、冬場のように冷え込みが強い時などもエンジンが掛からなくなってしまうトラブルが起きやすくなります。
そんな緊急時のツールとして、ジャンプスターターを積載しておくことをオススメします。
❏ジャンプスターターとは
通常、バッテリーあがりが起きてしまった場合、応急措置として行われるのが救援車(もう一台の自動車)を使ったジャンピングスタートです。
ブースターケーブルと呼ばれるバッテリーを繋ぐケーブルで、故障車と救援車のバッテリーを繋ぎ一時的に電気を供給し、セルモーターを回転させエンジンを始動させます。
しかし、乗用車の電圧は12Vでトラックなど大型車は24Vと仕様が異なるため、故障車と救援車が同じ電圧でなければこの方法は使えません。
また、バッテリーから電力を供給しながらモーターを回転させて走るハイブリット車の場合、高電圧と補機の二種のバッテリーを搭載していますが、補機バッテリーがジャンピングスタート時の電圧(電流)に耐えられません。
救援を受けることはできても、故障車を救援することはできないのです。
一方、ジャンプスターターは充電型の携帯用バッテリーです。
充電して自動車に携帯しておけば、いざという時に救援車が周りにいなくとも、故障車のバッテリーに繋ぐだけでエンジンを始動させることができます。
使い方は非常に簡単で
•バッテリーのプラス端子に赤色クリップ
•マイナス端子に黒色クリップ
をそれぞれ接続し、エンジンを掛けるだけでOKです。
❏推奨するジャンプスターター
国内外のメーカーから多種多様で販売されており、ホームセンターや通販などでも安いものなら¥3,000-前後から購入できます。
しかし、メカニック目線で1つ申し上げるとすれば、できるだけリン酸鉄リチウムイオンバッテリー採用の製品を購入されることをオススメします。
通常のリチウムイオンバッテリーは、正式にはコバルト酸リチウムイオンバッテリーと呼ばれ、大容量パワーを発揮できる特色を持っています。
その反面、サイクル寿命という繰り返し充電をし続けていくことには不向きなバッテリーで、自動車のように常に放充電を繰り返している環境下では、短寿命化してしまうのです。
その点、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーであれば、繰り返しの放充電にも耐えられる特性を持っているため、容量減少を最小限に留められるのです。
実は、リチウムイオンバッテリーは扱い方を誤ると大変危険です。
電車内で突然スマホの充電器が発火したり、パソコンのACアダプターから煙が出たなんてニュースが一時席巻していました。
リチウムイオンバッテリーはとてもデリケートで異常発熱しやすく、発火する可能性があるのです。
その点を踏まえて、オススメのジャンプスターターがこちらです。
<オススメ商品>
【HITACHI ポータブルパワーソース PS-16000RP】
12V車対応 <ガソリン車 4,000cc 以下/ディーゼル車 3,000cc 以下>
リチウムバッテリーの中で安全性が高いリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを採用。
従来品よりも安全性を更に高めた「PS-18000」の後続機種です。
短絡(ショート)、過放電や過電流など9つの保護機能が搭載されており、ジャンプスターター使用時にはケーブルの接続状態や内蔵バッテリーの状態を監視し、電圧や温度の異常があれば出力前に禁止制御します。
また、ジャンプスターター出力時に発生する電圧(電流)を抑える、サージプロテクト機能をコントロールボックス内に搭載しており、電装部品や車両および本体を保護してくれる優れものです。
USB出力端子搭載でスマホの充電などモバイルバッテリーとして使用できるほか、バックアップ電源機能はバッテリー交換時の車両メモリーとして役立ちます。
防塵防雨対応(端子カバーがすべて閉じた状態)なので天候の悪い屋外作業も問題なし、高輝度LEDライト機能が作業灯としても利用することができ大変便利です。
これ1つ積載しておくだけで、かなり頼もしいツールとなります。
2.タイヤのメンテナンスを知る!
バッテリートラブルに並んで頻繁に起こるトラブルが、タイヤの空気抜けやパンクです。
スペアタイヤ搭載義務の廃止に伴い、新車購入時に標準装備されていた積載工具がずいぶん姿を消しました。
それに代わり、以前はなかった簡易タイヤ用品が装備されるようになり、チューブレスタイヤに適応したトラブル対処法など多様に変化しつつあります。
では、いざという時どうしたら良いのでしょうか。
❏積載工具を確認する
最近の自動車に共通で装備されているものといえば
タイヤパンク修理剤 バルブコア回し エアコンプレッサー
フロント牽引フック
などの、パンク修理セットがメインです。
スペアタイヤが保管できるスペースは用意されていても、現在は新車を購入する際、スペアタイヤ装備をオプションで選ぶようになっている自動車がほとんどです。
メーカーによっては、ジャッキが別売りになっている車種さえあります。
チューブレスタイヤは、タイヤトレッド部に釘やネジが刺さったくらいではすぐに空気は抜けません。
そのため、緊急時の対処法としてタイヤを脱着することなく応急修理ができるツールが装備されています。
正直、性能技術が向上した現代自動車の精密機器を一般ユーザーが整備することは非常に困難です。
しかし、日常的に目に触れるタイヤなどは、きちんとした知識さえ持っていれば簡単にメンテナンスすることができます。
❏装備しておくべき車載工具
パンタグラフジャッキ
積雪地では、スタッドレスタイヤ交換期があるので需要性が高いですが、通常はなかなか必要性を感じられるものではないかもしれません。
パンクの応急修理でも、タイヤパンク修理剤を使う場合ジャッキは使用しません。
しかし、スペアタイヤを搭載している自動車や、やむを得ず別のタイヤに交換しなければならない状況に陥った時は必要不可欠です。
車載用のパンタグラフジャッキであれば、小型軽量でさほど邪魔にはならないので、ぜひ装備しておいてほしいツールです。
タイヤパンク修理剤
新車購入時に、純正付属品として装備されています。
本品1本につきタイヤ1本の修理が可能ですが、有効期限があるので注意が必要です。
タイヤトレッド部に釘やネジが刺さったなどの軽度のパンクに使用しますが、4㎜以上の刺し傷や切り傷、ホイールまたはタイヤサイドウォール部の損傷には使用できません。
インターネットやホームセンターなどでも購入可能ですが、排気量ごとの対応になっているので確認が必要です。
※いずれも、2t以上の自動車には使用できないので注意!
<使用方法>
1.タイヤバルブを下位置(地面)に配置しバルブキャップを取り外し、バルブコア回しの先端部分をバルブに押し当てて空気を完全に抜きます。
※刺さっている釘やネジは取り除かずそのままにします!
2.バルブコア回しでバルブコアを取り外し、注入ホースを差し込み、タイヤパンク修理剤を注入。
3.完全に修理剤を注入し終えたらバルブコアを戻します。
4.その後、エアーコンプレッサーでタイヤに適正な空気圧を充填し、バルブキャップを締めます。
5.すぐに点検走行を開始し、10分程度もしくは5㎞ほど注意深く走行し問題がなければ修理完了です。
タイヤパンク修理剤を使用した応急修理はあくまで一時的なものなので、タイヤはなるべく早く交換する必要があります。
また、タイヤパンク修理剤を使用したタイヤは再使用できないことを覚えておいてください。
ちなみに余談ですが、スペアタイヤをディーラー販売店に依頼して購入する場合、1,200ccクラスの乗用車で¥40,000-ほどです。
エアーコンプレッサー
メーカー純正付属品としてタイヤパンク修理剤が装備されている自動車であれば、エアーコンプレッサーもセットで搭載されています。
市場に出回っているタイヤパンク修理剤の中には同時に空気圧を充填してくれるものもありますが、通常は修理剤を注入後、エアーコンプレッサーを使ってタイヤに空気圧を充填する流れになります。
チューブレスタイヤは、軽度のパンクであればしばらく走行することが可能なので、そのまま自走で修理店へ駆け込むことができる場合もあります。
その際にも、空気圧の充填にエアーコンプレッサーが役立つのです。
<お勧め商品>
【メルテック ML-270 エアーコンプレッサー】
これ一台で自動車、バイク、アウトレジャーに使用することができます。
ボール用、浮き輪用ノズルが付属品として付いていますので、アメリカバルブ専用というわけではありません。
設定した空気圧が充填されると自動的に止まるオートストップ機能搭載。
過充填によるトレッド面の変形も気にしないで大丈夫です。
デジタル表示で見やすく、LEDライト搭載なので夜間作業でも安心です。
<使用方法>
1.タイヤの適正な空気圧を、取扱説明書または運転席のドア開口部で確認します。
※前輪、後輪にそれぞれ指定空気圧あり
2.エアーコンプレッサーのホースの口金を、タイヤバルブにねじ込みながら取り付けます。
3.電源プラグを車内の電源ソケットに差し込みエンジンを始動させます。
4.エアーコンプレッサーのスイッチをONにし、タイヤを適正な空気圧まで昇圧させます。
5.昇圧が完了したらエアーコンプレッサーのスイッチをOFFにし、電源プラグを電源ソケットから抜きエンジンを止めます。
6.タイヤバルブから口金を外してバルブキャップをしっかり締めて完了です。
通常、タイヤの空気圧は少しずつ低下していきます。
不足した状態での走行は、バーストなど思わぬ事故に繋がる恐れがあります。
適正な空気圧が保たれていないタイヤは、消耗加速の一因だけでなく燃費にも大きく影響してくるので、日常的なメンテナンスはとても大切になってきます。
普段から注意深く観察し、タイヤの状態を把握しておくことはドライバーとしての最低限のマナーです。
インパクトレンチ
タイヤの走行回転で締め付けられたボルトの緩め作業は、タイヤ交換時においてかなりの重労働です。
コードレス充電式インパクトレンチを使用すれば、ボルトの締緩作業が愕然と楽になります。
ホイールナットのサイズに合わせてソケットを取り換えれば、複数のタイヤ交換ができるほか、作業時間を大幅に短縮させることができます。
※社外アルミホイールは、薄口ソケット使用の場合あり
とはいうものの、私自身はクロスレンチを使っています。
身体に染み付いたトルク調整をするのにも、プロとしてはハンドツールの方が便利な場合があるのです。
<お勧め商品>
【KTC JTAE411 12.7sq.コードレス トルクリミットインパクトレンチセット】
ボルトやナットの締緩作業に最適な電動インパクトレンチです。
インパクトレンチ使用の際、意外と難しいボルトの締め加減に対応しています。
締め過ぎを防止するトルクリミット機能(正回転・右回転のみ)が搭載されているので、仮締めモードを選択すれば締め過ぎを防止することができて便利です。
三角表示板(停止表示板)
何らかのトラブルにより高速道路で自動車を停止させる場合、車両追突事故防止のため、50m以上後方に三角表示板の設置が義務づけられている車載器材です。
義務を怠った場合、違反として罰則されます!
故障車両表示義務違反(例)減点 1点 罰金 ¥6,000-
通常は専用ケースにコンパクト収納されているので、トランクルームにお守りツールとして装備しておくと、いざ必要となった際に不要な罰金に頭を抱えずに済みます。
車載義務がないのでメーカーではオプション販売になっていますが、カーショップやホームセンターでも ¥1,000~¥2,000-前後で購入可能です。
インターネットでは¥500-前後で売られている商品も存在します。
安全確保を考慮するならば、強風耐久性などテスト基準に合格した国家公安委員会認定のものをオススメします。
まとめ 積載工具は用意しておくべきツール!
自動車メーカーの純正工具さえネットオークションに売り出されている現況には、メンテナンスフリー化された自動車に乗る現代人の意識が現れているように感じられます。
自動車性能技術の向上に伴い、標準装備される車載工具やトラブル対処方法などにも多様な変化がありました。
いつの時代も、あなたのカーライフを安全で楽しいものにするためには、事前の準備が必要不可欠ということです。
様々なシーンに臨機応変に対応できるメンテナンスツールを追加しておきましょう。
■こちらの記事も合わせてどうぞ!!■