自動車業界の経験者が教える、他では聞けない「クルマの基礎知識」
LS、IS、CT、NXなど、レクサスブランドから販売されている乗用車は、車名が全てアルファベット2文字と数字によるグレード表記によって表現されています。
国産車でこのような車名の体系を持っているメーカーはほぼ皆無ですので、アルファベットだけではどんな車かわからないという方も多いでしょう。
しかし、レクサスの各車をそれに対応する欧州車などをあげて比較すると、とても理解がしやすくなります。
■レクサスの車名からは車格が分からない
レクサスが国際的なブランドとなるのにあたって、トヨタ車のような意味のある単語で社名を表記すると、国ごとに使えない言葉があるなどの問題があります。
ドイツのメルセデス・ベンツ、BMW、アウディといった3大自動車メーカーがいずれも数字やアルファベットを組み合わせて車名とグレードを構成しているのはそのような理由からです。。
欧州メーカーたちは、車名とその序列がとてもわかりやすくなっています。 たとえば、メルセデス・ベンツのAクラス、Bクラス、Cクラス、Eクラス、Sクラスとアルファベットの順に、車格が上がっていきます。 また、BMWのセダンであれば、1シリーズ、3シリーズ、5シリーズ、7シリーズといった具合です。
アウディも同様にA1,A4、A6、A8といった具合に数字の大きさで車格が上がります。
レクサスの車名がわかりにくいのは、ドイツの3大メーカーの車名が、わかりやすく車格の序列を示しているのに対して、レクサスはそれが明確でないからです
欧州メーカーは、ずっと昔からブランドの序列を守ってきましたが、トヨタが販売するクルマにはそれほど明確な序列がありませんでした。
レクサスもトヨタの車のプラットフォームを利用する為に、その制約に引きずられる形で、明確な車格の序列がまだきっちりと整理されていないように見えます。
■レクサスの4ドア、5ドア車(セダン、ハッチバック)
それでは、レクサスの各車について説明をしていきます。
まず始めに、4ドア、5ドアの乗用車(SUVやクーペではない車)タイプのラインナップです。
・フラッグシップセダンLS(Luxury Sedan) レクサスのフラッグシップセダンはLSです。
LSとは、「Luxury Sedan」の頭文字です。
そもそも、レクサスLSのルーツはトヨタのセルシオで、北米ではセルシオをレクサスLSとして販売していました。
2005年にトヨタがレクサスブランドを立ち上げるのに際して、トヨタ・セルシオを廃止して、レクサスLSとしたのが始まりです。
現在発売されているLSは初代セルシオから数えると4代目であり、途中で大きなマイナーチェンジが行われたものの、2006年から10年もの間、フラッグシップの座を守っています。
エンジンは、4.6リッターV8エンジンのLS460と、ハイブリッドシステムを加えたLS600hそして、それぞれのボディをストレッチ(延長)したLS460LとLS600hLの4グレードがあります。
クラスとしては、メルセデス・ベンツのSクラス、BMWの7シリーズ、アウディのA8あたりが対抗となります。
2017年のデトロイトショーで5代目が発表され、エンジンがV6 3.5リッターツインターボエンジンにダウンサイジングされる予定です。
・高級スポーツセダンGS(Grandtouring Sedan) レクサスGSもまた、歴史をたどっていくと、もともとトヨタのトヨタ・アリストにつながっています。 レクサスGSは、アリストと併売されていた次期があり、アリストは国内向けでスポーツのためターボエンジンを搭載し、GSは北米でグランドツーリングという性格を与えられたセダンとして自然吸気エンジンを搭載していました。
レクサスのラインナップを飾るGSは、メルセデス・ベンツでいうとEクラス、BMW5シリーズ、アウディA6の対抗と考えてよいでしょう。
2015年には、ハイパフォーマンスバージョンである「F」を冠したGS Fがラインナップに加わりました。
レクサスにおける「F」富士スピードウェイの頭文字である「F」が由来で、メルセデス・ベンツにおけるAMG、BMWにおけるM、アウディにおけるRSのようなハイパフォーマンスブランドを目指しています。
レクサスGSは、ダウンサイジングの4気筒2リッターターボの200t(577万円)から、V型6気筒 3.5L エンジン+ハイブリッドシステムのGS450h(742万)まで、幅広いラインナップです。
・インテリジェントなスポーツセダンIS(Intelligent Sport) レクサスISは、北米でのブランド開始当初は、トヨタ・アルテッツァをそのままISとしてレクサスで販売していました。 その後、2005年に日本でレクサスブランド展開に遅れること1カ月、2代目のレクサスISが登場しました。
現在ではアルテッツァから数えて3代目です。
2代目以降のISは、トヨタ・クラウン、レクサスGSと同じプラットフォームを、ホイールベースを短縮するなどして共有しています。 その後、トヨタ・マークXも同じプラットフォームを使用していますので、トヨタはスポーツセダンの4車種(トヨタ・クラウン、マークX レクサスGS、IS)を1つのプラットフォームで作り分けていることになります。
欧州車でいうと、メルセデス・ベンツのCクラス、BMWの3シリーズ、アウディA4あたりが対抗となるでしょう。
2代目のISには、2007年に「F」を冠したIS Fがラインナップに加わりました。 マークXと同等のコンパクトなボディにV型8気筒5リッターエンジン423馬力をフロントエンジンリヤドライブで成立させるという、強烈なスペックでした。
その他にも、オープンモデルのIS C(Convertible)などの展開もありました。
3代目となったISは、2013年に登場し、先行してリリースされていたLS、GSと同様のデザインテーマであるスピンドルグリルを採用しています。
ラインナップは、直列4気筒2リッターターボのIS200t(470万)、V型6気筒+ハイブリッドシステムのIS300h(515万)、V型6気筒3.5リッターエンジンのIS350(559万)です。
と、ここまでは、LS、GS、ISという序列ができあがっているので、整理ができました。
レクサスにはこのほかに2台のハイブリッド専用車が存在しています。
・日本専売ハイブリッドセダンのHS(Harmonious Sedan) HSは、レクサスブランドではES(ウィンダムベース)の次に登場したFF車です。
ESは日本では販売されていないため、日本では初めてレクサスブランドから発売されたFFセダンということになります。
HSは、3代目プリウスと同じプラットフォーム、エンジンは異なりますが同じハイブリッドシステムを使用しています。
プリウスが、ハッチバックなのに対して、HSはトランクのあるセダンタイプです。
そしてHSはかつてトヨタから販売されていたプリウスのセダンタイプであるSAIと多くの部品を共有していました。
残念ながら、アメリカでの販売不振を理由に北米での販売は打ち切られ、日本専用モデルとなっています。
しかし、プリウスが1.8リッターエンジンであるのに対して2.4リッターエンジンを搭載して静粛性や走りの余裕を持ちながらもリッター23.0km/Lの燃費の良さによって、432万と高価ながら、日本ではそれなりの人気を保っています。
・コンパクトなハッチバックハイブリッドCT(Creative Touring ) レクサスCTは、レクサスブランドでも珍しい5ドアハッチバックです。
CTのサイズ感は、トヨタのブレイドやフォルクスワーゲン・ゴルフと同様のサイズです。
CTは、プラットフォームにカローラなどに採用されている新MCプラットフォームを使用しています。
また、パワートレインは、3代目プリウスと同様のハイブリッドシステムを搭載し、10・15モードで34.0 km/Lの低燃費を実現ています。
レクサスCTはレクサスブランドで一番安い366万円から購入が可能です。 使いやすいサイズのハッチバックで、プリウスと同じハイブリッドシステムで燃費もよいので、レクサスの入門車としてちょうどよいでしょう。
これは、メルセデス・ベンツAクラス、BMW1シリーズ、アウディA1やA3がハッチバックであることからも納得がいきます。
■まとめ
レクサスのラインナップは一見すると難しいですが、このように車のボディタイプや、比較となる欧州ブランドの車、ベースとなったトヨタ車を考えると、非常にスッキリします。
次回は、クーペとSUVについてご説明します。
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