【エコ競争終焉】軽自動車は燃費を競わずなにを競うのか? | カーライフマガジン

先日発表されたダイハツ・ミライースの燃費性能は1リッター当たり35kmと発表されました。(本稿執筆の2017年6月当時)
長年燃費競争を繰り広げてきたスズキ・アルトが1リッター当たり37kmを達成しているにもかかわらず、ミライースは先代と同じ燃費性能で発表されました。

メーカーの開発者によるとアルトを越える燃費を達成することは出来たが、あえてしなかったと言います。

では、ミライースは燃費を犠牲にして何を達成したのでしょうか。
燃費性能を競うのをやめた軽自動車は、今後何を売りにしていくのか考えてみましょう。

軽自動車の燃費性能合戦

軽自動車の燃費性能の競争が始まったのは2011年頃からです。
軽自動車は自主規制によってエンジンの排気量と最大出力とが決められていますので、どのメーカーもエンジンのパワーを競うことが出来ませんでした。

ちょうど不況の時期だった影響もあり、エンジンパワーのかわりに他社との差別化を図れる部分が「燃費」性能だったわけです。

当初エントリーモデルのミライースがリッター30.0kmの燃費性能で大々的に売り出すと、それに呼応するようにスズキのアルトは30.2km、33.0kmと燃費の性能を向上させてきました。

エントリーモデルより上の売れ筋モデルでも、ダイハツ・ムーブ、スズキ・ワゴンR、三菱(日産にOEM)・ekワゴンなども同様に燃費競争を繰り広げてきました。

無意味な燃費競争に一石を投じた不正問題

軽自動車の性能競争は、いつしかエンジンの性能よりも燃費の性能を競うようになっていきました。

そして、2016年に発覚した三菱自動車工業の燃費測定の不正問題です。
メーカー上層部による燃費向上の圧力のために現場が不正を行い、実際とは異なる燃費をカタログスペックとして公開したのです。

この問題の発覚によってメーカーによる過度な燃費競争が明らかになり、そもそも燃費性能を競うこと自体に疑問が投げかけられました。

そもそも、私たち消費者も、軽自動車の燃費性能はカタログスペックをかざるものでしかないと言うことを理解していました。

そもそもこれ以上の燃費向上は難しい

軽自動車メーカーは、あらゆる方法で省燃費化を進めてきました。
現在のスズキ・アルトはプラットフォームを刷新し大幅な軽量化を行いました。

リッター当たり37kmを達成したアルトのベースグレードは、燃料タンクを小さくしてまでさらなる軽量化を行うことによって達成されたものです。

つまり、カタログの燃費性能と実際に使用した時の燃費とは大きく乖離があると言うことが一般的な認識として共有されるようになっていた現状もあり、燃費達成のためにユーザの利便性すら犠牲にするようになってしまいました。

また、軽自動車にハイブリッドシステムの搭載や、アルミやカーボンファイバーを使用したさらなる軽量化をするにはコストがかかってしまうのです。

ミライースが燃費競争から離脱すると宣言したことは、無意味な競争から抜け出して商品価値を高めることによって車の魅力を訴求していきたいという意志のあらわれなのでしょう。

この先軽自動車は何が商品価値となるのか

今後の自動車業界は、自動運転技術が大きな目玉となっています。
自動運転技術は実用化がまだ先になるので、その前段階の自動ブレーキなどの安全装備の搭載が今後の軽自動車の差別化のポイントとなるでしょう。

ミライースでも、自動ブレーキの搭載やコーナーセンサーの搭載を進めたと言います。

日本では高齢者の運転操作の誤りによる飛び出し事故が多発しています。
自動ブレーキやレーンキープアシスト、ブラインドスポット検知などのセンサーを利用した安全技術は、最近ではコストダウンが進んでいますので、安全技術の採用が今後の軽自動車の差別化のポイントとなっていくことでしょう。

軽自動車の差別化には思い切った変革が必用

軽自動車は、規格として決められたサイズ、決められたエンジンの排気量など厳格に規格が決められています。
そして軽自動車自体が、みんな同じようなトールワゴンタイプの形状をしているために差別化が難しいという現状があります。

同じサイズ、同じ排気量、同じボディ形状のなかで唯一の差別化ポイントとして「燃費」を売りにしてきた軽自動車ですが、特に燃費競争を繰り広げている低価格帯の軽自動車では、差別化が難しいという現実もあります。

しかし、一方の高価格なモデルでは軽自動車の車内スペースを車高を上げることによって実現したスパートールワゴンのダイハツ・ウェイクや、軽自動車なのにミッドシップで2シーターオープンスポーツを復活させたS660、地上高をあげてSUVテイストでヒットしたスズキ・ハスラーなど、個性的な軽自動車が人気を博しています。

軽自動車の自動車税が上がり、軽自動車の売れ行きが落ちている現在、たしかに軽自動車は税制などの優遇によって普通車と比べて維持費がかからないなどのメリットがあります。

生活に自動車が必用な地域ではどうしても車自体の魅力よりも、値段や維持費と言ったところに目が行きがちです。

普通に考えると、「あれもこれも付いて80万円です」という売り方になるのでしょうが、逆に、「エアコンもパワステもナビも何も付いてないけれど40万です(必要なものはオプション)」というような、軽自動車があったら逆に受けるかもしれません。

いずれにしても、『燃費』競争が行き詰まった現在、新しい軽自動車の売れ筋ポイントを求めて各社が工夫を重ねるのは軽自動車マーケットにとって良い方向に進むことを望みます。

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