自動車業界の経験者が教える、他では聞けない「クルマの基礎知識」
残価設定プランは、どこのメーカーでも扱っているので、どのメーカーの残価設定プランも同じだと思っている人も多いのではないでしょうか? 実は残価設定プランはメーカーによって細かい内容が異なり、その違いによって残価設定プランを利用したほうが得になるのか、それとも損してしまうのかが、大きく変わってきます。
今回は自動車メーカーの中でも、トヨタ・ホンダ・日産の3社の残価設定プランを比較しながら、どのメーカーの残価設定プランが一番お得なのか、元ディーラー営業マンが前・後編に渡って解説していきたいと思います。
■残価設定プランとは?
残価設定プランとはプラン満期後に予想される査定額を残価として最初に設定して、その残価を差し引いた額でローンを組んでいくというものです。
そのため、通常のディーラーローンよりも月々の支払いを抑えることができるという仕組みです。
この大まかな仕組みについては、どのメーカーでも一緒ですが、実は細かい点ではメーカーによって内容が変わってきます。 残価設定プランでは、残価を保証するために様々な規定が存在します。
実はこの規定や金利などがメーカーによって微妙に違いがあります。
ここからは自動車メーカー3社の違いを比較していきたいと思います。
■トヨタは販売店によってサービスが違う?
3社の残価設定プランの違いを比較する前に、トヨタの販売店としての違いを整理しておきたいと思います。 トヨタは日本で最も多い販売店数を持つメーカーですが、ホンダや日産と比べて大きな違いがあります。
ホンダや日産では販売会社の系統が統一されているのに対して、トヨタではトヨタ・トヨペット・カローラ・ネッツといった系統の違う販売会社を持っています。
ホンダや日産では販売会社の統合がされた結果、全国のどの店舗でも同じ車種、同じサービスを扱っています。 一方でトヨタは同じトヨタのお店なのに、販売会社の系統によって扱う車種が違います。 一番ややこしいのが、トヨタでは同じ系統の販売店であっても扱っているサービスが違うことがあるということです。
例えば同じ地域にあるトヨペットA店とトヨペットB店でローンの金利が違っていたり、異なるキャンペーンをしていることがあります。
残価設定プランについても、ホンダや日産では全国で同じ内容のサービスが受けられますが、トヨタでは販売店によって残価設定プランの内容も微妙に変わってきます。
このような販売店としての違いも含めながら、残価設定プランについて3社の比較をしていきたいと思います。
■トヨタ・ホンダ・日産のローンにおける金利の違いを徹底比較
まずは3社のローンにおける金利の違いについて説明していきたいと思います。
・トヨタ 通常ローン:5~8% 残価設定プラン:5%前後 ・ホンダ 通常ローン:3.5% 残価設定プラン:3.5% ・日産 通常ローン:5.8% 残価設定プラン:4.9%
(※トヨタの数値は目安であり、販売店によっては数字が大きく異なる場合があります。)
金利を比べてみると、ホンダが通常のディーラーローンと残価設定プランの両方で最も低い金利だということが分かります。
トヨタは販売店によって金利が異なりますが、通常のディーラーローンがだいたい5%前後から8%前後の間で、ホンダに比べると全体的に金利が高い傾向にあります。
トヨタの残価設定プランはだいたい5%前後のところが多いようなので、通常のディーラーローンに比べると販売店による差は少ないようです。
日産は通常のディーラーローンが5.8%、残価設定プランが4.9%ということで、どちらかというとトヨタに近い金利の設定だと言えます。
金利だけ見るとホンダで残価設定プランを組むのが一番お得に見えますが、他の条件ではどうなのでしょうか?
■残価を保証するためのルールがメーカーによって違う?
残価設定プランには、プラン満期の残価を保証するための様々なルールが存在します。
その1つに内外装の損傷についての規定があります。
残価設定プランでは、プラン満期に車を販売店に返却することを選ぶと残価を支払わずにすみます。 しかし、車を返却したとしても車体の状態が良くないと追加の負担金が発生する場合があります。
負担金が発生するケースの1つとして、内外装の損傷で規定を超える減点があると、超過分の減点に対して負担金を払わなければいけません。
内外装の損傷における規定とは、例えば10万円という規定が定められていた場合、10万円までの修理費用であれば追加の負担金を払わずに車を返却できるということです。
これは規定の金額までは修理費用をメーカーで保証してくれるということです。
つまり下取り額に規定の金額を上乗せてくれているようなものなので、残価設定プランのメリットとも言える部分です。
実は、この規定の額がメーカーによって違ってきます。
・トヨタ:販売店によって異なる ・ホンダ:全ての車種で一律10万円の規定額
・日産:車種ごとに10~20万円の規定額が設定されている
トヨタに関しては販売店によって規定が異なるので、どのような保証がされるのか実際に販売店に行ってみなければ分かりません。
ホンダでは一律の規定額が設けられています。どの車種でも10万円までは修理費用を保証してくれるということです。
日産では車種によって規定の額が変わってきます。
例えばセレナでは10万円、スカイラインであれば15万円、エルグランドだと20万円というように車種ごとに10万円・15万円・20万円の3つの規定額に分けられています。
ホンダが10万円で一律の修理保証であるのに対して、日産では最低でも10万円の保証はされますし、車種によっては10万円以上の保証も受けられるので、場合によっては日産の方がお得になることもあります。
■知らないと損!実は将来の相場に対する保証のされ方が違う?
残価設定プランでは、規定の条件を満たしていれば最初に決められた残価が保証されますが、実はこの残価の保証のされ方もメーカーによって微妙に違います。
この違いを知っているのと知らないのでは残価設定プランをお得に利用できるかが大きく変わってきます。
残価設定プランでは、将来の中古車市場の相場が下がったとしても最初に設定した残価が保証されるので安心できるというメリットがあります。 例えば50万円の残価を設定された車が、プランが終わったときの実際の相場が40万円の価値だったとしても、残価が保証されていればその差額を払う必要はありません。
これは残価設定プランの大きなメリットですが、一転してデメリットになってしまうこともあります。
それは実際の相場が残価の設定金額よりも上回ったケースです。 例えば50万円の残価を設定された車の実際の相場が60万円のときのような場合です。
実際の査定額の方が高いのであれば、そのままだと残価との差額10万円分を損してしまうことになってしまいます。
実は、このようなケースに対しての対応がメーカーによって違ってきます。
それでは、それぞれのメーカーの対応を比較してみましょう。
まずはホンダの残価設定プランの場合を見てみましょう。 ホンダの残価設定プランでは実際の相場とは関係なく、最初に設定された残価が優先されます。 これは実際の相場が下がっていた場合は安心ですが、相場が上がっていたとしても、その差額に対する保証は何もないということです。
つまり、先ほどのケースだと10万円の損をしてしまうという事です。
次に日産の場合はどうでしょうか? 日産でも実際の相場が下がっていた場合はホンダと一緒ですが、相場が上がっていた場合の対応がホンダとは異なります。 日産では実際の査定額の方が残価を上回っていた場合、その差額分を次の車の頭金として受け取ることができます。
つまり、将来の中古車市場がどのように変化しても、損することのない仕組みになっています。
トヨタでは販売店によって残価設定プランの規定が異なるので、一概には言えませんが、基本的にはホンダと同じような対応のようです。
将来の相場に対する保証のされ方が違うという事実は、あまり注目されていないですが、実は残価設定プランがお得なものになるか、損するプランなのかを変える大きな差です。
■残価設定プランはメーカーによって実はここまで違う!
前編ではトヨタ・ホンダ・日産の3社の残価設定プランを比較してきましたがいかがだったでしょうか? 大まかな仕組みはどこも一緒ですが、細かい点を見ていくと異なる点がいくつも出てきました。
この違いによって残価設定プランを利用すると得をするのか損をしてしまうのかが変わってきてしまう場合があります。
後編では、ここまでに紹介した違いが実際に残価設定プランを利用するときにどのような影響を与えるのか詳しく解説していきたいと思います。
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