車には「変速機」と呼ばれる装置が必ず取り付けられています。
なぜかというと車に搭載されているエンジンには効率よく運転できる回転数が決まっており、もし変速機がないと低速から高速まで幅広いスピードをカバーすることができないからです。
国産メーカーはマツダを除いてCVTを変速機に採用することが多いようです。
欧米メーカーでは、一時期AudiがCVTを採用していましたが、最近では欧州メーカーでCVTを採用するメーカーはありません。
もっぱら、DCT(デュアルクラッチ・トランスミッション)やトルクコンバーターATを採用することが多いようです。
なぜ、国内ではCVTが主流なのか
そもそもCVTは原付バイクなどのスクーターのトランスミッションとして広く普及していました。
自動車用にもCVTを採用するメーカーは有りましたが、CVTは構造としてトルクの大きなエンジンに耐えられない特性があり、以前は小型車に採用されるだけでした。
しかし、1990年代後半には2000ccより大きいエンジンのトルクに対応したCVTが開発され、CVTが採用される幅が増えていきました。
そして、2010年代には3500ccや4000ccといった車にも搭載されるようになりました。
CVTがここまで広まったのはなぜでしょうか。それは、CVTを採用したほうが、MTやトルクコンバーターATと比べて燃費が良かったという事実の結果だと考えられます。
もちろん、この場合の燃費というのは実際に車を使用している人の燃費ではなく、カタログ燃費の基準である「JC08燃費」の計測において良い結果を出すことができるという意味で「燃費が良い」わけです。
CVTのメリットとデメリット
つぎに、CVTというトランスミッションはどのような特徴があるのでしょうか。メリットとデメリットを考えてみましょう。
・CVTのメリット
CVTのメリットは、日本語で無段変速機や連続可変トランスミッションと呼ばれるように、変速が無段階なのが特徴です。
トルクコンバーターATやMTは、加速や減速の時に発生する変速時に加速が途切れたり、ショックがあったりしますが、CVTならそのようなことはなく、息の長い加速ができるのです。
また、エンジンの回転数に関係なくギア比を可変できるのでエンジン一番効率の良いエンジン回転数で車を走らせることができます。
そのためにCVTは燃費が良いわけです。
・CVTのデメリット
CVTのデメリットは技術的にあげていくとはいろいろとありますが、車を運転する場面において一番デメリットとなるのが、アクセルとエンジン音、加速といった操作に対する反応がダイレクトではないということです。
どういうことかというと、ドライバーが「加速したい」と思ってアクセルを踏み込みます。
すると、一瞬間を置いてエンジンの回転数が上がり、また間を置いてその後加速を始めます。
このようなアクセルを踏み込んでから車が加速を開始するまでのタイムラグがドライバーにとっては不快に感じられるのです。
それに対してMTや普通のATはギアのステップがあるためダイレクトな加速を感じることができます。
最近では、CVTにあえてギアのような疑似的なステップをもたせたモードをもつCVTもありますが、ダイレクト感と引き換えには逆に燃費が下がってしまいます。
欧米のトランスミッションの事情
では、欧米のトランスミッションはどうなっているのでしょうか。
一時期AudiがA4にCVTを採用していたことがあります。
しかし、最近では多くのメーカーがトルクコンバーターATやDCTを採用しています。
日本でもマツダがCVTをやめてMTをトルクコンバーターATに絞っていますね。
トヨタの開発したすごいCVTとは
というわけで、燃費重視のCVTは走らせても運転が楽しくなく、燃費を重視するために国産メーカーはCVTを採用しているのだと感じられた方も多いでしょう。
そんななか、トヨタが新しCVTを開発し、それを発表しました。
トヨタが新しく発表した新しいDirect Shift-CVTは、変速スピードの向上によってダイレクト感を上げ、ワイドな変速比を実現することによって燃費の向上を実現しています。
・変速スピードの向上
CVTでも運転を楽しむことができるようにDirect Shift-CVTでは「ダイレクト感」を上げるための方法として、変速スピードを向上させたといいます。
難しい技術の説明は省きますが、CVTのベルトとプーリーという部品を小型化軽量化することによってレスポンスを向上させているのです。
その変速スピードは、2つのクラッチを交互に使って切れ目ない変速を味あわせてくれるDCTと同等だというのですから驚きです。
・燃費の向上
燃費を向上させるためにはギア比をワイドに取ることが必要です。
低いギア比から高いギア比までワイドにカバーできるトランスミッションはエンジンをより効率的に使うことができます。
しかし、CVTの技術的な問題としてギア比をあまりワイドにできないという問題がありました。
それを解決するために、これまではCVTと副変速機を組み合わせるなどの工夫がされてきました。
しかし、Direct Shift-CVTは、それを発進用の1速ギアをもたせることによって解決しています。
つまり、トルクの必要な発進の部分はギアを使った変速機にまかせてダイレクトに加速させ、車速が高くなってたらCVTに切り替えて効率的に走らせるというわけです。
Direct Shift-CVTはギアを使ったトランスミッションの良さとCVTの燃費の良さを両立させたトランスミッションになりそうです。
Direct Shift-CVTの採用車はレクサスUX?
トヨタはDirect Shift-CVTを発表しましたが、この新しいCVTを搭載する車両はまだ公開されていません。
以前は、トヨタ・カローラスポーツに採用されるのではないかと噂されていましたが、実際に搭載されていたのは従来型のCVTでした。
次にDirect Shift-CVTが搭載されそうなのは、レクサスUXだと言われています。
確かに、全く新しいレクサスのシリーズであるUXに先進的なDirect Shift-CVTを採用すると言うのは技術のアピールにおいても有利です。
いずれにせよ、トヨタが作った新しいCVTの出来を早く確かめてみたいものです。
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