自動車業界の経験者が教える、他では聞けない「クルマの基礎知識」
今回取り上げるのは洗車です。
洗車と一口にいっても、人それぞれ洗車につぎ込む時間も度合いも全く違います。
サッと水洗いと拭き上げだけで終わるユーザーもいれば、シャンプー洗車に鉄粉取りにワックスも数種類を施すようなユーザーも存在します。
実は、プロのメカニックの多くは洗車嫌いな人間が多いです。
洗車は整備ではなく嗜みだと考えて良いものだと感じているほどです。 例に漏れずこの私もその一人ではあります。
ハッキリ言います。
洗車は嫌いです。
嫌いだからこそ、プロのメカニックは洗車においてもプロフェッショナルなテクニックを身につけています。
そのテクニックの一部をあなたのためにご紹介したいと思います。
少しでも効率的で専門的な洗車テクニックを、あなたに実践していただきたいと思います。
1.洗車はスピードが肝心
まずは外装の洗車についてです。
外装を洗車をする場合、何よりも大切なのがスピードです。 丁寧にゆっくり確実にという作業ではありません。
早ければ早いほど、洗車のプロに近づきます。
しかし、ただ早いというわけにはいきません。
丁寧に素早く確実に汚れを落とす必要があります。
これを実行するためには汚れの方向をしっかりと理解しておく必要があります。
自動車というのは、必ず汚れが付着する方向性というものがあります。
自動車前方から後方へ、上部から下部へです。
これを理解した上で、洗車の際には【上部から下部へ向け、後方から前方へ】向け洗車していきます。
自動車の汚れというのは、魚の鱗と同じように剥がすことで効率よく汚れを落とすことができます。
同じ場所は一度で作業完了するという意識が、プロのメカニックの持つ基本テクニックです。
2.忘れてはいけないピラーの清掃
ここでいうピラーとは、ドアピラーのことになります。
どれだけ美しく磨き上げた外装でも、ドアを開いた途端汚れたままのドアピラーが見えてしまっては残念なことこの上ありません。
しかし、ドアの内側の汚れの多くはグリスの油分を含んだ汚れになります。
軽く水拭きした程度では綺麗になりません。
ここで役に立つのが【食器用洗剤】です。 食器用洗剤は、植物性油脂にも動物性油脂にも確実な性能を発揮してくれる万能洗剤です。 しかも、人体に入る可能性もあることから素材的に優しい原料で構成されています。
これは、自動車の塗装膜にも影響がとても少ないことを表しています。
ドアを開いた部分はすべて食器用洗剤を使用して洗車を進めることができます。
しかし、この作業の後には必ず忘れずにしておかなければならないポイント項目があります。
グリスアップ、つまりグリスの塗布です。
ヒンジ部分やドアロック部分へのグリスアップを忘れてしまうと、その後の動きの妨げになってしまうのです。
忘れずにグリスアップまでを洗車だと心得ておきましょう。
3.オイルダンパーの確認
意外に忘れがちなのが、トランクやボンネットの支えになるオイルダンパーです。
ここにも役立つアイテムは食器用洗剤です。
やはりドアの内側にあるパーツということで、どうしても油汚れが気になってしまうのです。
しかも、オイルダンパーの摺動(しゅうどう)するシャフトは、基本的にオイルの中を動いているパーツなので、ドアやボンネットを開閉するだけで油分をまき散らすことになってしまうのです。
そうかと言って、摺動するシャフトを直接洗剤をつけてクリーニングするのは良くありません。
洗剤の成分によって、封入されているダンパーオイルの劣化が促進されてしまうからです。
あくまでも洗剤を用いたクリーニングするのはボディーに関係するパーツです。
オイルダンパーは、それ自体にパーツとしての意味がありますので、洗剤を使用するのはやめておきましょう。
そもそも、周囲を汚してしまうほどオイルダンパーから油分が出てきてしまうこと自体トラブルの始まりです。 一般的には分解清掃ができないパーツなので、オイルダンパーのシール性能はかなり強力です。
オイルダンパーに付着した汚れは、きつく搾ったウェスで拭きとるだけで充分です。
では、何を確認すればよいのでしょうか。
それは、シール部分の劣化とシャフトのサビ状態です。 この2つは密接な関係性を持っていて、シャフトがサビればシール部分にはキズがつきます。
キズがついたシール部分からはダンパーオイルが漏れ出してくるので、どちらかに劣化が目立つようでしたらパーツ交換することをオススメ致します。
オイルダンパーが劣化し始めると、保持力が無くなってしまうため色々な作業に影響を及ぼすようになってしまいます。 例えば、トランクへの荷物の運び込みの最中にドアが締まってきてしまったらどうしますか? オイル補充中にボンネットが降りてきてしまったらどうなりますか?
危険なのは容易にご理解いただけるはずです。
普段開いていることが当然と思いがちなボンネットなども、洗車の際にしっかりと確認をしておくことで次回の洗車までの間にどれほどの劣化が進むかの予測も立てることができます。
汚れをしっかりと除去しながらも、自動車の健康診断をすることを忘れないようにしましょう。
4.洗車は常に一方通行
【1.洗車はスピードが肝心】でも触れていますが、汚れの付着には方向性があります。
その方向性を理解した上での洗車作業が、あなたの洗車ポテンシャル向上につながることはご理解いただけたものと思います。
この理解度が高くなるほど、より効率的な洗車方法はないのかと考える方もいらっしゃると思うのですが、実はあります。
それが一方通行の洗車です。
一方通行とはどういうことなのか。
それは、往復した拭き洗いをしないという意味です。
よくウェスを上下左右に往復させて使用されているユーザーを見ます。 これはいけません。
汚れの方向性を知っていても、あなたの動作がその理解を無視した動きをしていてはまったくの無意味な知識で終わってしまうのです。
洗車時のウェスの動く方向は、基本的に行きっぱなしです。 戻るという選択肢をなくしましょう。 すると、往復させ汚れを塗りたくってしまっていたのが、一方向だけに動くことで汚れを拭き取るだけの動作へと変えることができるのです。
これは拭き上げの時にも使用できるテクニックですので、あなたの身体に一方通行を叩き込みましょう。
5.液体ワックス? ポリマーワックス?
洗車の仕上げはワックスがけです。
これを怠けてしまうと、せっかく綺麗になったボディーに新たな汚れがすぐに付着してしまうことになります。
通常ポリマーワックスを使用して長期間の効果維持を望むものですが、しっかりものほど手軽に作業できる液体ワックスを好みます。
効果が薄れるのはとても早いのですが、作業効率は抜群に良く、磨き上げもとてもしやすいという便利なアイテムです。
効果短命のため、次回のワックスがけまでのスパンは短いです。
毎洗車時にワックスをかけなければいけないほどですので、洗車嫌いには向かないと思われています。
しかし、洗車嫌いな私は液体ワックスを選んでいます。
なぜなら、トータルで洗車にかかる時間が圧倒的に短くなるからです。
ポリマーワックスはたしかに長寿命ですので、一度施工しておけばしばらく手間がありません。
しかし、その一度に長時間かけるのが嫌なのです。
結果的に、毎回ワックスがけをすることで自動車が妙に綺麗なまま維持できるという好循環をもたらしてくれるので、できる限り手軽に作業が終了できる液体ワックスをオススメいたします。
なお、ワックスの種類と特徴については以前、以下の記事で解説していますので参考にしてくださいね。
6.ワックス拭き上げは磨き上げ
ワックスをかけた後は、余分なワックスを拭き上げなければいけません。
しかし、白く目立ったワックスを拭き上げるだけでは効果を無駄にしていることをご存知でしょうか。
ワックスというのは油分です。
薄く延ばすことで強い効果を発揮できる性質を持っています。
厚く塗り溜めたワックスは、水分や汚れを保持してしまい汚れ溜まりを作ってしまうのです。
そのため、ワックスを拭き上げるさいには磨き上げが必要になるのです。
磨き上げとは、ボディー全体のワックス面の厚みを一定にしていくことを指しています。
この磨き上げを用意にするためにも、私は液体ワックスをおすすめしています。
7.まとめ.洗車の度合いはあなたの心の鏡
洗車に何時間もかけて、少しの汚れも許さないという潔癖ユーザーは意外と多いのですが、プロとしては1作業ですので時間なんてかけていられません。
しかし、実際に洗車に時間をかけること自体は1つも悪いところはないのです。
あなたが自動車を愛すれば愛するほど洗車時間は長くなっていく傾向があります。
ほんの少しの変化でも気づけるようにと意図はしていなくても、長時間1台の自動車と触れ合っていればちょっとした異変にも気づくことができるようになるのです。
自動車をしっかりと観ることができるユーザーとなることができれば、あなたは立派な優良自動車ユーザーです。
洗車にかける時間や密度は、必ずあなたと自動車の距離を近づけてくれるでしょう。
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