自動車業界の経験者が教える、他では聞けない「クルマの基礎知識」
どれだけ大切に自動車と接していても、使っていれば必ずキズは付いていきます。
このキズを恐れていては自動車に乗り続けることはできません。
しかし、傷ついたままの自動車では見栄えもよくありませんし、何よりボディーの傷みが進んでしまいます。
そこで、今回は自動車についてしまったキズの対処方法についてメカニックのマメ知識をコッソリとあなたにお伝えしようと思います。
ちょっとしたコツさえ知っておけば、たとえ不慣れな作業であってもワンランク上の仕上げをすることができるようになります。
1.キズ付いた外装は劣化スピードが早くなる
自動車のボディーは、本来塗装膜によって侵食を食い止めています。
そこにキズがついてしまえば、ボディーを守る防御壁が薄くなるということになります。
意外にもキズがつきやすいのは「ドアノブのくぼみ」部分です。 ボンネットやフェンダーは、表にむき出しにも関わらず曲線的なのでキズがつく前に流れ落ちていきますが、ドアノブのくぼみというのは「あなたの爪」が案外引っかかります。
そのため、どの部分よりも線キズが入る部分になるのです。
また、フロントバンパーの下部もキズつきやすい部分です。
車輪止めに引っ掛かる高さのため、不用意に前向き駐車するとえぐれてしまいます。
子供が自動車の周りで遊んでいたりすると、ドアパネルにヘコミができる事もあります。
以上、「線キズ」「えぐれ」「ヘコミ」の3種類がボディーにつく主なキズになります。
これらは鉄板部分やプラスティック部分の侵食を進ませ、目に見えない内側から自動車を劣化させていくのです。
2.キズを直す方法
線キズの直し方
基本的に、コンパウンドを使用してキズがついている表層を削り落としていきます。
少量のコンパウンドを柔らかい布で薄く広げながら擦ることでキズがわからなくなっていきます。
注意すべき点は、コンパウンドは「研磨剤」だということです。
半練りワックスや液体ワックスのような使いやすさですが、確実に塗装の表面を削り落としますので、そのまま放置してしまうと侵食が進みます。
えぐれの直し方
ボディーの中でも比較的問題が少ないのがえぐれです。 キズの度合いでいえばかなり派手なものになりますが、その多くはプラスティックパーツに限定することができます。
鉄板部分がえぐれた場合、それは「穴」となります。
プラスティックパーツがえぐれても、最終的にはパーツ交換で問題完了することができます。
しかし、少しの範囲にえぐれが生じたからといって、その都度パーツ交換をしていては不経済です。
そこで役に立つのがパテです。
パテの使い方や乾燥時間には個体差がありますので、しっかりと説明書を読みましょう。 基本的には、えぐれた部分にパテを盛って乾かして削るだけです。
薄く盛ってしまったらヘコんだままになってしまうので、必ず少し多めに盛り上げる必要があります。
また、パテというのは縮みます。 いくら綺麗にピッタリと盛り上げることができたとしても、固まるに連れて小さくなってしまいます。
そこを忘れないようにしましょう。
さらに、パテを盛った後には塗装することで修理後を綺麗に隠すことができます。 そのままでも構わないというものではなく、塗装をすることでプラスティックとパテのつなぎ目をコーティングすることが必要なのです。 これをしないと、走行中の振動でせっかく綺麗に盛ったパテがはがれてしまうことがあるのです。
たとえ見えない部分であっても、必ず塗装まで施しましょう。
ヘコミの直し方
ヘコミの場合、プラスティックパーツは致命傷です。 直しても伸びてしまい元の形状には戻すことが困難です。
無理して直してみても、バランスが取れずに買い換える羽目になります。
逆に、鉄板パーツであればヘコミは引き戻すことが可能です。
ヘコんだ時点で、鉄板パーツにも伸びが発生します。
しかし、元の形に戻ろうとする塑性域がプラスティックよりも鉄板のほうが強いため、引き戻すことである程度の形状まで戻すことができます。
一般家庭にある引き戻しツールとして挙げられるのが「吸盤」です。
実際に板金をする場合にも、吸盤で引き戻しをすることから、できるだけ吸引力の強い大きな吸盤を探すことをオススメいたします。
3.擦りキズをコンパウンドで消した後
コンパウンドでキズを消した後には、必ず後処理をする必要があります。
表層を削り落としてしまうことで、塗装へダイレクトにダメージを与えてしまうことになるからです。
では、どのように後処理をすれば塗装面を保護することができるのでしょうか。
それはコーティングです。 コーティングといっても、何も自動車全体をくるむようなコーティングは必要ありません。
コンパウンドを使った部分のみに念入りにワックスをかけるだけで充分です。
もし、あなたのお手元に強力なコーティング剤があったとして、それをご使用するのでも構いませんが、一度コーティングすれば問題ないわけではありません。 なぜなら、薄くなってしまった表層はコーティングすることで戻るわけではないからです。 一度コンパウンドでキズを削り落としてしまった場合、その後はこまめにコーティングを繰り返す必要があります。
そのため、できる限り手軽なコーティング剤を選ぶことをオススメ致します。
4.タッチアップペンはスプレー化して使う
部分的な塗装には「タッチアップペン」が市販されています。 しかし、このタッチアップペンはなかなか上手く綺麗に塗ることができません。
付属の刷毛で塗るようになるので、必ず刷毛目が出てしまいます。
そこで、同時に市販されている「スプレー化キット」を使用するか、ホビー用の「エアーブラシ」を使用することをオススメ致します。
スプレー化することで、塗料を霧状に吹き付けることができます。
刷毛塗りのように一度に大量の塗料をボディーに塗ってしまうと、平面的に塗ったつもりでも刷毛の外側に余分な塗料が溢れてしまいます。
この余分な塗料を滑らかにするためには、細かいサンドペーパーで慣らしながら重ね塗りをしなければいけません。
その際に、タッチアップした周囲の部分に新たな細かいキズをつけてしまいます。
スプレー化してタッチアップペンを使用すれば、この余分なキズをつけることもなく、綺麗で滑らかな塗装が誰にでも可能になるのです。
5.塗装後はしっかりとクリアーで補強する
いくら綺麗に塗装ができたからといって、その塗膜を保護しないで良いということはありません。
確かにキズは綺麗に直るかも知れませんが、せっかくの塗装にダメージが直接加わるのは決して良くはありません。
キズを消すためにタッチアップペンを購入する際には、必ずクリアーのタッチアップペンも同時購入することをオススメ致します。
クリアー塗装で塗装面を保護することで、風雨による塗装へのダメージを防ぐことができますので、たとえひと手間増えてしまっても必ず塗装面の保護をしましょう。
6.まとめ 外装のキズは早めに対処を
外装のキズを放っておくと、最悪の場合サビが広がり穴が開きます。 プラスティックパーツはサビることはありませんが、劣化して硬化することで割れていきます。
時間が経てば必ず劣化する事実から分かるように、自動車にとってキズの放置は裸足で割れたガラスの上を歩いているようなものなのです。
いつキズが広がってしまうのか、サビに侵食されてしまうのか、硬化して割れてしまうのかなんて誰にも分かりません。 あなたがキズついた自動車をどれだけ大切に乗っていても、それは自動車を大切にしているとは言えません。
できる限り早く対処して、自動車のキズを修復してはじめて自動車を大切にしていると言えるでしょう。
あなたが本当に自動車を大切に思うのであれば、ぜひともこまめにキズの手当てをしてあげましょう。 ■日ごろのメンテナンスも怠らないようにしましょう!■
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