自動車業界の経験者が教える、他では聞けない「クルマの基礎知識」
すでにマニュアル車は、ローテクとみなされてしまいがちですが、それでもなお作り続けられているマニュアル車の多くはFF(フロントエンジン・フロントドライブ)の道をたどっています。
オートマチック車であっても、FFか4WD(四輪駆動)かの二択といっても過言ではありません。
これは、もし事故にあってしまった場合に「駆動輪」の制御ができなくなってしまうと二次災害を引き起こしやすくなるという背景があることからFR(フロントエンジン・リアドライブ)方式からの撤退という選択をされてきた結果です。
4WD方式は確かにパワーは出せますが、手軽にスポーツ走行を楽しめるものではありません。
ハイパワーであるからこそ、パーツの消耗が激しかったり、オーバーパワー過ぎて扱いが難しくなります。
そこで今回ご紹介したいのが「FFマニュアル車」です。
ジムカーナや街中を軽快に走行しやすいFFマニュアル車の魅力を、あなたにお伝え致します。
1.FFマニュアル車は楽しい
一昔前は、マニュアル車といえばFRか4WDという選択を誰しもしてきました。
峠道や埠頭でドリフトを楽しむという方法で自己主張することが流行したからです。
しかし、事故率の高さからFR方式が極端に嫌われてしまった現代では、若干数FR方式も残されてはいますが、ほぼFFか4WDという選択肢に限られてしまいました。
冒頭でもご説明したように、4WD方式は手軽にスポーツ走行を楽しめるとはいえません。 構成パーツも複雑になる上に、自動車へのダメージは二輪駆動よりも確実にアップします。
充分な資金を用意できるのであれば、、4WDでスポーツ走行を楽しむことができますが、本当に不経済なのでオススメはできません。
FF方式の自動車であれば、基本構造が簡素化されているので経済面での負担は小さくなります。
そして、何よりも自動車がコンパクトになるという利点があります。 大きな自動車でスポーツ走行をすると、当然走行抵抗が増えてしまいます。
せっかく速く走行することができる状況なのに、自動車自体の抵抗でタイムを落としてしまってはもったいないです。
FF方式を採用することで、キビキビとした運転を実現することができます。
その運動性能が、あなたのドライビング意欲に火をつけてくれるでしょう。
2.FFマニュアル車の特徴
先ほどもお伝えした通り、FF方式の自動車はコンパクトに作られています。
その結果、FF車の車両重量は軽くなり、燃費性能も向上することになるのです。
その上、マニュアル車ともなれば燃費性能はより良くなります。
たとえスポーツ走行をしなかったとしても、その高燃費率はあなたの自動車ライフに大きな貢献をしてくれるでしょう。
FF方式のネガティヴ要素としてはアンダーステアになってしまうというのが挙げられます。
アンダーステアとは、旋回時に曲がりきれないという現象です。
後輪に一切の駆動力を持たないFF方式は、旋回時に車体のリア側が慣性力で外へと逃げるように動きます。
この慣性力によって起こるアンダーステアが、FF車のネガティヴ要素です。
逆にポジティブ要素は登坂能力が強いという点です。
FF方式というのは、綱引きの原理で動いています。
進行方向に向かって、自動車を引っ張っているということです。
押す力よりも引く力が強いというのは、腕相撲や綱引きをしたことがあればご理解いただけると思います。
1トンもある自動車を動かすのですから、効率良く力強く動かすことができるFF方式は、自動車にとってポジティブ要素の塊といえるでしょう。
さらに、FFマニュアル車は車両前方の重量が大きいため、下り坂でアクセルを踏み込まなくても推進力がつきます。
上り下りともに威力を発揮できるというのは、他の駆動方式ではないでしょう。
3.FFマニュアル車でやってはいけないこと
先ほどFF方式はポジティブ要素の塊だとお伝えしましたが、力強いがゆえのウィークポイントが存在します。
それはドライブシャフトが折れるというものです。
エンジンに直接取り付けられているフロントのドライブシャフトは、エンジンで発生しトランスミッションで増幅されたパワーを直接受けることになります。
停車状態から動かすときが、一番このパワーが大きくかかることになります。
直進時であれば、このパワーはドライブシャフトの許容範囲内で収まります。
しかし、旋回しながら動き出そうとした時、そのパワーはタイヤの抵抗も加わり倍以上のものが必要となり、そのパワーがドライブシャフトを破損させるのです。
間違っても、停車しながらステアリングを目一杯回して動き出すことはしてはいけません。
4.オススメのFFマニュアル車 3選
ホンダ シビック TYPE R
2017年モデルはオートマチック車をメインに展開されるようですが、オススメしたいのは2000年を最終型としたEK9型シビックです。
もっともシビックが注目されたモデルで、アフターパーツの種類の豊富さからも、中古車市場をいまだ賑わせているFFマニュアル車です。
ジムカーナでこの自動車以上に扱いやすいものはなかなかありません。
NA車であるにも関わらず、絶対的な軽量化を施されているため国産車とは思えない発進性能を持っています。
2000年以降にFD2型なども発売されていますが、ホイールベースが長くなり旋回性能が落ちてしまっているので、FFスポーツとして考えると一歩及ばずといったところです。
プジョー 106 S16
2003年を最終型として販売終了していますが、低走行車が今でも存在するラテン車です。
電気系トラブルは外車特有のものですが、自動車としての純粋さは国産車では考えられないほどのものです。
車両重量が軽自動車並みにも関わらず、1600ccもの排気量を有しているので速さはピカイチです。
上で挙げたEK9型シビックのピストンを組み合わせることで、とんでもないじゃじゃ馬が作り出せる数少ないFFスポーツ車といえるでしょう。
スズキ スイフトスポーツ
FFスポーツを突き詰めていくと「小ささ」というものがとても大切になってきます。 FRや4WDという方式は、有り余るパワーをまき散らしながら走行する自動車です。
しかし、FFという方式は持てるパワーを余すことなく使い切ることで楽しめる駆動方式になります。
現行のFFスポーツ車の中で、スイフトスポーツという自動車はその王道をゆく自動車になります。
低速走行時にややハンドリングが重いのが気になりますが、走行性能やトータルバランスをみても、まさに手に収まるという扱いやすい自動車です。
5.まとめ FFマニュアル車は現代のスポーツ
FFマニュアル車という、オートマチック車全盛の中でのマイノリティをあえて選択することで手に入れることができるスポーツドライビングの楽しさは、これから自動車を購入するあなたや、買い替えを検討しているあなたにだからこそ選ぶことができる1つの選択肢です。
オートマチック車にはない機械を制御している満足感や、ダイレクトな操作感はマニュアル車ならではのアイデンティティーです。
実際、ジムカーナの世界ではFFマニュアル車が大活躍している事実をみても、運転性能はFFマニュアル車が他の駆動方式と比べ優位なのが分かります。
街中を走行する時にも、派手で大きなアクションをする自動車よりも、コンパクトでシャープな動きをしてくれたほうが合理的です。
最高速度を求めるようなステージは、日本の公道ではありえません。
いかに正確に、いかに最短であなたのイメージを反映してくれるかが大切です。
今あなたが自動車に楽しさを求めるのであれば、FFマニュアル車という選択を強くオススメ致します。
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