N-VANが狙う貨物車のイノベーションとホンダがもたらしてくれる新しい軽自動車の世界とは | カーライフマガジン

2018年7月13日から発売が開始されたホンダの新型車「N-VAN」は、新しい軽自動車の商用バンです。

なんと、当初の目標の月販目標3000台に対して倍以上の台数を受注する程の人気だといいます。

「N-VAN」はなにが理由で売れているのでしょうか。商用車でありながら、一般人も欲しくなってしまう「N-VAN」にホンダがかけた新しい「売り」とは一体どんなものなのでしょう。

ホンダはアイディアでマーケットを切り開く会社

ホンダは技術的にもマーケティング的にも独自性の高い会社だと筆者は考えています。

たとえば、小型ミニバンの定番となっているホンダ・フリードとトヨタ・シエンタですが、そもそも小型で6人〜7人乗車できるミニバンを市場に先駆けて開発したのはホンダが最初なのです。

ホンダ・フリードのヒットをみたトヨタは、ホンダが切り開いたマーケットを奪うためにシエンタを開発したのです。

一例ですがこのように、ホンダは他のメーカーが作らなかったカテゴリーの車を発表してそれをヒットさせる事が得意なメーカーなのです。

国内では、スズキもホンダとにていて、思いもよらないカテゴリーでヒットを作るのがうまい会社です。

たとえば、硬派な軽4駆のジムニーに対して、ライトな軽SUVとして登場させたハスラーも今までなかったカテゴリーで成功した車の一つです。

N-VANのNってなに?

N-VANはホンダの軽自動車「N」シリーズ初の商用バン(軽貨物車両)です。

ところで、ホンダの「N」シリーズっていったい何なのでしょう。

ホンダは「N」シリーズの初代を今から50年以上前の1967年に発表された「N360」であると定義しています。

「N360」は当時、まだ車が高価で庶民の手の届かない存在であったときに発売され、リーズナブルな価格と室内がとても広いことがヒットし3年連続で当時の軽自動車の国内販売トップであり続けました。

N360の「乗るところは十二分に、エンジンはコンパクトに」は、本田宗一郎の考えで、長くホンダの中で「MM(マン・マキシマム、メカ・ミニマム)思想」として定着しています。

この、N360のNを「Norimono(のりもの)」としてホンダは定義し、Nシリーズの車は単なる機械ではなく、「人が乗るためのもの」という意味が込められているのです。

商用バン(軽貨物車両)って一体どんな車?

N-VANは、全てのグレードが商用車登録です。

軽自動車の商用車というとどんな車を思い浮かべるでしょうか。一番最初に思いつくのは軽自動車のトラック(軽トラ)でしょうか。

そして、もうひとつは、よく街で見かける軽貨物バンです。

それは、ボンネットのない四角い形(1BOX)で宅配便や郵便の配達、建設業の作業員さんなどが使っている車ではないでしょうか。

軽の商用バンは複数のメーカーから販売されていますが、N-VANが発売されるまで、どの車も多少の違いはあれど、軽自動車の規格の枠内なので形も同じで知っている人しか車種の見分けがつかないほどです。

また、業務用なので値段も安く抑える必要があり、内装はチープで、荷室を最大化するためエンジンが運転席の下に配置されていて、エンジンの振動が直接運転者に伝わるため、決して乗り心地の良いものではありませんでした。

N-VANの凄いところとは?

では、ホンダが発売したN-VANは何処が凄いのでしょうか。

・N-BOXと同じシャーシで乗り心地アップ

N-VANは2代目となったN-BOXのシャーシを利用しています。そのため、N-VANはボンネットを持つフロントエンジンの1.5BOX形状となっています。

フロントエンジンを採用したことによって室内の長さ(奥行き)は短くなってしまいますが快適な乗り心地を実現することができました。

・ホンダ得意のシートアレンジで、荷室の狭さをカバー

逆に1.5BOXとなり、ライバルの軽商用バンに対して荷室の長さ(奥行き)が犠牲になった分をホンダは得意のシートアレンジで挽回することに成功しました。

N-VANのシートは後席だけでなく助手席も全て床下に収納され、床面をフルフラットにする事ができます。

この機構によって、荷室の奥行きは2635mmとなり、ライバルを圧倒する奥行きを確保しました。

加えて助手席側をピラーレス構造としたことで、助手席ドアとスライドドアを開ければ大開口で荷物の積みおろしも楽々できるようになっています。

FFであることによって、床下にエンジンやドライブシャフトが通らず、低床化することが可能になりました。その結果荷室の高さもライバルに対して勝っています。

これらの工夫によって、荷物が沢山載せられるのはもちろん、オートバイまで載せて運ぶことができてしまうのです。

・選べるエクステリアデザイン

軽商用バンといえば、どれも同じで素っ気ないエクステリアなのが一般的です。

しかし、N-VANはシンプルなベーシックシリーズに加えて、Nシリーズ初代の「N360」をモチーフにした「+STYLE FUN」や、流行のクールなデザインを採用した「+STYLE COOL」をラインナップしているのが特徴です。

色も、白やシルバーだけでなくメタリックカラーやポップな黄色などが選択できるようになっています。

特に「+STYLE FUN」、「+STYLE COOL」では外装だけではなく内装や快適装備もグレードアップしていて、街乗りに使っても問題ないレベルになっています。(もちろん値段もそれなりに高くなります)

N-VANとN-BOXどっちが良いの?

このように、N-VANはとても魅力的な車で、荷物を沢山積んで遊びに出掛ける人にとって、非常に魅力的に感じられるのではないでしょうか。

でも、一つ注意しなければならないことがあります。N-VANは基本的に商用車であり、シートアレンジで後席と助手席が床下に収納される機構を採用するために、助手席や後席のシートはスライドもリクライニングもしませんしクッションも最低限です。

N-VANの運転席はN-BOXと同じシートを採用していますので、運転席は快適ですが、それ以外の席で長時間の移動は厳しいと言わざるを得ません。

つまり、友達みんなでドライブや遊びに行くのが好きな人はN-BOXの方が快適だと言うことです。N-VANは一人で遊び道具満載で遊びにいくのが好きな人向けと考えれば良いでしょう。

このようなことから、N-VANとN-BOXの棲み分けもよく考えられているなという印象を持ちます。

N-VANが「乗り物」の夢を広げてくれる

N-VANが発売されたことによって軽自動車の新しい「Norimono(のりもの)」としての使い方が広がったように感じます。N-VANを見て、欲しいと思った人やどんな使い方ができるか楽しい想像をした人は少なくないのではないでしょうか。

今まで誰も見向きのしなかった軽商用車に一般ユーザーのニーズまでもを盛り込んだN-VANは軽自動車選びの新しい選択肢となるに違いありません。

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