2016年8月25日、日本でもホンダが2世代目にあたるNSXを発表しました。
初代のNSXが発売されたのが1990年なので、26年ぶりの新型と言うことになります。
四半世紀を越えて発売された2代目NSXの価格はなんと2370万円(税込み)。
初代のNSXが800万円だったことを考えると約4倍の価格になりました。
世界をみても2370万円という価格は、スーパースポーツと呼ばれるパフォーマンスカーのカテゴリーにあたります。
たとえば、ポルシェGT3RSは2530万円ですし、ランボルギーニ・ウラカンLP 610-4は2970万円ですので、ポルシェGT3RSとウラカンのちょうど中間という価格になります。
では、新型のNSXには本当に価格相応の価値があるのでしょうか、新型のNSXがスーパースポーツと言えるか確認してみたいとおもいます。
■新しいNSXはアメリカ生まれのアメリカ育ち
新型のNSXの生い立ちは、初代と異なり企画から生産まですべてアメリカのホンダで行われたものなのです。
確かに今の日本国内でこのような価格のスーパースポーツカーを企画しようとしても、承認され無さそうな雰囲気ですが、ホンダが勢いに乗っている北米市場が主体だからこそ、NSXが産まれたとも言えそうです。
そのため、エクステリアはアメリカンテイストたっぷりなアグレッシブなデザインになっています。
エクステリアデザインについては好みの分かれるところですが、この有機的なNSXのデザイン、他の車に似ていないという点では成功しているのではないでしょうか。
■前代未聞の3モーターハイブリッドシステム
NSXの心臓は、V型6気筒3.5リッターツインターボエンジンがメインです。
エンジンは初代と同様にミッドシップにマウントされます。
重量配分は42:58と若干リヤよりですが、初代の40:60よりは50:50に近づいています。
エンジンは、それだけで507馬力のハイパワーを誇りますが、これにエンジンをサポートして後輪を駆動するモーターが1基、前輪を左右1ずつのモーター2基の計3つのモーターでアシストするのです。
このシステムをホンダは「スポーツハイブリッドSH-AWD」と呼んでいます。
システム合計のパワーは581馬力、最大トルクは646Nmと強大なパワーをこれまたホンダが初めて採用した9速のDCTで路面に伝えます。
ちなみに初代のNSXは、NAのV型6気筒3.2リッターエンジンで280馬力でしたから、パワー初代からは倍以上アップしていることになります。
NSXの「スポーツハイブリッドSH-AWD」は、レジェンド培った左右の車輪を独立して駆動するモーターによって、左右の車輪のトルクを可変させてコーナリングの安定性とコーナリングスピードの向上を果たしています。
0-100kmの加速は3.0秒と、やはりこれもスーパースポーツ級の加速性能です。
しかし、NSXは、「スポーツハイブリッドSH-AWD」によって、コーナリングでも異次元の性能を発揮します。
NSXは、いままで誰もやっていない、ハイパワーエンジン+ハイブリッドシステム、そして9速のDCTという組み合わせ世界に先駆けて実用化ところが、いかにもホンダらしいチャレンジだといえるでしょう。
また、それはスーパースポーツとして重要な要素である、オリジナリティのあるチャレンジだと思います。
■アルミモノコックからスペースフレームへ
ボディは初代と同様にアルミを利用しています。
違うのは、初代がオールアルミニウムのモノコックボディであったのに対して、2代目はアルミのスペースフレーム構造だと言うことです。
モノコックボディは、ボディ全体で強度を出すボディの設計方法です。
対してスペースフレーム構造は、シャーシに骨格となる大きなフレームを通し、そこで強度を出しています。
モノコックボディはボディ全体で強度を出すために、スペースフレーム構造よりもボディを軽量に仕上げることが出来ます。
しかし、新型NSXがあえてスペースフレーム構造にしたのは、理由があります。
それは、フレームで強度を出す事が出来るために簡単にオープンボディを作ったり、さまざまなエンジンを搭載するなどの設計の変更が容易だからだと考えられます。
事実、アウディのA8やR8は同じようにスペースフレーム構造のボディを持っていますが、A8はホイールベースを2種類持っていますし、R8ではボディの後半セクションを変更して搭載が難しいと言われて居た7速DCTの搭載を現実化しました。
つまり、NSXのシャーシを使って今後、いろいろなバリエーションのNSXを作ることも容易に可能だと言うことです。
ちなみに、シャーシに最近流行のカーボンを使わなかったのは、アルミでもカーボンと同じ強度を出すことができ、重量的にも価格的にもメリットがあるとホンダは説明しています。
■2代目はゴルフバッグが積めなくなった?でもかっこよくなった!
初代NSXが発表されたとき、ホンダ自ら「トランクにゴルフバッグが積めます」と言ったことから、「NSXの運動性能はゴルフバッグを積めるトランクのせいで低下した」という噂がまことしやかに流れました。(本当のところは空力と排気の取り回しを最適化したらスペースが空いたのでそこをトランクにしただけらしい)
しかし、2代目のNSXではそれほど大きなトランクは用意されていないそうです。
デザイン的にも初代と比べるとオーバハング(タイヤからバンパーの終わりまでの距離)が短くなっていていかにもスポーツカーというデザインになっています。
初代がゴルフバッグの件で揶揄されたのは、そのデザインが若干間延びして見えたことも理由の一つだと思われます。
しかし、新型ではそんなことはまったくありません。
写真で見ると、旧型と新型では新型の方が小さく見えますが、実は新型の方が幅も長座も大きくなっているのです。
■NSXに足りない物。それは歴史?
その一方で、2代目のNSXがよく批判されているのが、スーパースポーツカーとしては素っ気のない内装です。
特にステアリングホイールは乗用車のホンダ車と共通じゃ無いかと思うようなデザインだと酷評されています。
たしかに、NSXもがんばって室内のデザインをしているのですが、スーパースポーツカー特有のオーラというか、色気のような物が少し足りないと言うことは確かにあるかもしれません。
それは、日産のGT-Rにも同じ事が言えるのですが、こればかりは日本やアメリカにおける車の歴史の長さの違いに起因しているのかもしれません。
確かにNSXもGT-Rも速いですし、機構的にも素晴らしい物があります。
しかし、その乗り味や手に触れる部分の高級感の演出がまだまだ苦手なようです。
これは、今後改善されていくことを期待しましょう。
■日本の割り当ては年間100台!?希少性はまさにスーパースポーツ
これまで、2代目のNSXの特徴について説明してきましたが、なんとNSXの日本国内への割り当てはなんと、年間生産2000台のうちのたったの100台だそうです。
すでに納車に2年待ちと言われている2代目NSX、値段も高いですが滅多に走っていないという意味でも、まさにスーパースポーツと言えるでしょう。