自動車業界の経験者が教える、他では聞けない「クルマの基礎知識」
ホンダとは、根っからの技術屋で、その技術の一部は【トヨタ自動織機】を通じてトヨタ自動車の技術にも取り入れられています。
日本国内の自動車メーカーとして、その高い技術力は随一と言えるでしょう。
無駄を徹底的に排除しようとする自動車造りにも、時代の最先端を走ろうとする姿勢も、現代の日本の自動車業界の根底を支えているのはこの【ホンダ】の自動車であることは間違いありません。
全てを自社による独自の技術を使って開発しながら、立ち止まることをせず常に前進をやめないのは、技術者一同が創始者である【本田宗一郎】氏の意志を継いでいるからです。
私自身はホンダ車が好きではありません。 それでも、ホンダの技術力には敬意を払っています。
ホンダ車の完成された工学部分には、機械の逃げになる部分が少ないのでメカニックとしては純正をいかに維持させられるかというところにその手腕が発揮されます。
しかし同時に、面白みのない自動車であるとも言えるのです。 ネガティヴ要素の少ない自動車は、壊れる部分が決まっています。 消耗部分さえ理解していれば、車検ごとにしっかりと交換していればいつまでも乗り続けることが出来るのです。 ホンダ車を好むユーザーは、その完成された自動車に魅力を感じます。
二輪・四輪ともに、ホンダ愛好家は一種の信者的なところもあります。
1.日本が誇るホンダの技術力
いつの時代でも、ホンダ車の技術が日本の自動車の牽引と底上げにつながっています。 その証拠に、レース業界で最も生き長らえている日本製のエンジンがホンダ製のものだという事実です。 ホンダという自動車会社がなければ、日本の自動車業界は既に破綻しているでしょう。 日本国内で、アメリカのMG・フォード・クライスラーに肩を並べられる唯一の技術力を持っているのがホンダです。 確かにトヨタや日産の自動車は素晴らしい物が多くあります。 しかし、ホンダの完成度と比べてしまうと、その洗練された出来栄えには明らかな差が見えてしまいます。 それは一台あたりの利益率というものに反映されています。 トヨタ・日産の自動車が4〜5割の利益率を維持しているのに対し、ホンダの自動車は2〜4割ほどです。 車種によってはこの限りではありませんが、全体的に見てホンダ車の利益率は少なくなっています。
同じ利益率を確保しようと思うと、ホンダ車は現在よりも3割程度も店頭価格がアップします。
利益率を下げてでも手を抜かず、素材にもギリギリで気を配りながら自動車を作り上げているからこそ、ホンダという企業は世界に認められているのです。
そして、全てを注いでいるその気持ちがあるからこそ、ホンダの技術は前進を止めないでいられるのです。
2.ホンダは完璧を求めている
どこの自動車メーカーも、適当な妥協点を見つけて折り合いを付けている中、ホンダだけは完璧を求めて自動車を造り続けています。
その最新鋭の技術が【ホンダセンシング】であり、トヨタのような市街地仕様のハイブリッドではなく高速仕様のハイブリッドに力が入った経緯なのでしょう。
多くの自動車は、出来る限りアクセルを踏み込まないで走りたい市街地をメインステージとして設定されています。 そんな中、ホンダ車はアクセルを踏み込んだ時にこそ威力を発揮できるハイブリッドシステムを根底に置いた造りをしています。
ホンダ車以外のハイブリッドシステムは、いわば【いかに燃費を良くするか】という部分にのみ視点が置かれています。
しかし、ホンダ車の着眼点は【如何にエンジンの負担を軽減するか】というところにあり、ゼロスタート時とアクセルを踏み込んだ際にエンジンに掛かる負荷分散のためにハイブリッドシステムを利用しています。
これは、自動車が【移動手段】であるという考えと【走行するための精密機器】であるというとても大きな意志の違いによるものです。
自動車は確かに移動手段の1つですが、それ以上に機械としての完成形を追い求めるのが技術者としての理想です。
その理想の追求こそが、ホンダの推進力です。
3.ホンダ車のメリット
ホンダ車を選ば最大のメリットは【完成された自動車】であるということです。
決して完璧なわけではありませんが、車種ごとに完成されているためあと付けで余計なことをしないでも充分な性能を発揮してくれます。
無駄を出来る限り排除した洗練された造りには、メカニックながら芸術的とも感じます。
エンジンプロファイル・ブレーキシステム・パイピング・操舵角など、市販車にグレードダウンしていながらも、一切の隙を感じさせない造り込みには頭が下がります。
ホンダ車を選ぶあなたは、しっかりとしたメンテナンスさえ怠らなければいつまでもその自動車と付き合い続けることが出来るでしょう。
4.ホンダ車のデメリット
ホンダ車のメリットとしてあげたことが、実はそのままデメリットとも捉えることができます。 しっかりと造られすぎた自動車は、素人がむやみに手を入れることで調子を狂わす原因となってしまいます。 特に遠因に関わる部分は、その性能を大きく下げてしまう場合もあるのです。 オイル交換1つ取ってみても、他社の自動車と比べると難易度が少しばかり高いです。 ドレーンプラグの位置が特殊であったり、アンダーカバーをはずさなければオイルフィルターを外せなかったりと、少しの手間を掛けなければ作業できないようになっていたりします。 それには、空力学的な理由がしっかりと裏付けされているため、決して無駄なものではありません。
自動車のことをしっかりと考えているがゆえのデメリットということです。
5.まとめ ホンダの世界観は素晴らしい
ホンダという自動車メーカーは、自社製品において絶対の自信を自負しています。 それは、自動車に対して誠実であるというホンダだからこそのものでしょう。
この絶対の自信は、売却時にも自動車査定士に伝わっています。
しっかりと造り込まれているからこそ、自動車に対して信用があります。
その信用は、確実に査定価額に反映されるのです。
ホンダが自動車に誠実であり、機械に対して真摯に向かい合うからこそ、世界に認められる自動車を造ることができました。
ホンダという企業が見据えているのは、目の前に広がる世界だけではなく、これまで歩んできた軌跡と、これから先の自動車の未来なのでしょう。
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