自動車業界の経験者が教える、他では聞けない「クルマの基礎知識」
2016年にマイナーチェンジが行われた日産のノートは、同年の11月に新車販売台数でトップになり、大きなニュースとなりました。 日産車が新車販売台数で1位になるのは1986年のサニー以来で、実に30年ぶりの快挙です。
今回は、そんな大人気の新型ノートの魅力と評価に迫りたいと思います。
■新型ノートe-POWERの魅力とは?
今回行われたノートのマイナーチェンジで最大の目玉は、なんといってもラインナップに新しく追加されたノートe-POWERの存在です。
e-POWERは日産が提案する新しい電気自動車の形で、これまでのハイブリッド車とは違うエコカーです。
トヨタのプリウスの登場によって燃費競争が始まり、日本の人気車種のほとんどにハイブリッドが設定されるようになっていきました。
そんな中、これまでハイブリッド車の設定がなかったノートはライバル車種であるトヨタのアクアやホンダのフィットに燃費で大きく差を付けられる形になってしまい、非常に苦しい状況が続いていました。
しかし、長年ハイブリッド戦略に手を出さなかったノートはライバルたちとは違う形で新しい魅力を手に入れることになります。
それが今回新たに追加されたe-POWERです。
ノートはe-POWERによって最大37.2km/Lまで燃費を向上させることに成功し、燃費競争で負けない車へと進化しました。
新型ノートe-POWERの魅力は、単純に燃費が向上したことに留まりません。
電気自動車のような力強い加速力や、「e-POWER Drive」と呼ばれるワンペダルでの操作性の向上など、これまでにない自動車の形を体感できる点です。
これらの新たに加わった魅力は、従来からのノートの使いやすさをさらに引き出すことを可能にし、ストレスのないカーライフを実現してくれます。
このようなノート独自の魅力を手に入れたことによって、競争の激しいコンパクトカーの中でも一歩抜きん出た存在へとなることができたのだと思います。
■e-POWERは電気自動車?それともハイブリッド?
日産では、e-POWERを新しい形の電気自動車だと言っています。
モーターによる電気のみで走るという点では従来の電気自動車と同じですが、e-POWERはモーターに必要な電力をエンジンによって発電しています。
エンジンとモーターの2つを使っている点ではハイブリッド車と同じです。
ただし、ハイブリッド車は場面によってエンジン駆動とモーター駆動を切り替えていますが、e-POWERはあくまでモーターのみによる駆動方式なので、エンジンは発電専用として使われています。
エンジンを発電専用にすることで、効率の良い作動領域を保つことが可能になりトップクラスの燃費を実現しています。
電気自動車のデメリットである充電のしにくさを、発電の全てをエンジンによってまかなう新しい方式で克服し、電気自動車特有の走りといったメリットを残したものがe-POWERなのです。
このようにノートe-POWERは、これまで電気自動車の開発に力を注いできた日産だからこそ、可能となった新しい形の車です。
■新型ノートe-POWERの4つのメリット
新型のノートには、e-POWERならではのメリットがたくさんあります。
その中でも大きなメリットが次の4つです。
1.電気自動車らしい滑らかで力強い加速力 2.ワンペダルで車をコントロールできる「e-POWER Drive」 3.街中でも燃費が悪化しない
4.充電の必要がない
これらの特徴によって、ストレスの多い日本の道路環境でも快適に運転することが可能です。
1.電気自動車らしい滑らかで力強い加速力
発進時にパワー不足になりやすいエンジン駆動と違い、発進時からすぐに最大トルクを生み出すことができる電気自動車特有の滑らかで力強い加速をノートe-POWERなら体感することができます。 その力強いトルクは、2.0Lのターボエンジンにも引けを取らないほどです。
アクセルの踏み具合に合わせてレスポンスの良く反応するので、車を自分の思うがままに動かす楽しみを味わうことができます。
2.ワンペダルで車をコントロールできる「e-POWER Drive」
ノートe-POWERでは、SモードかECOモードにしている状態でアクセルペダルを戻すと強い回生ブレーキが働きます。
回生ブレーキとは、車輪の回転力を使ってモーターを発電させる過程で生まれる抵抗力を利用したブレーキです。
ノートe-POWERでは、非常に強い回生ブレーキによって、アクセルペダルを戻すだけでしっかりとスピードを緩めることができます。(場合によっては完全に停車するためにブレーキペダルを踏む必要があります) アクセルペダル一つで加減速を行うことができるので、ブレーキペダルを踏む回数が減ることで快適に運転することができます。
このようなワンペダルでの車をコントロールできる技術を日産では「e-POWER Drive」と呼んでいます。
3.街中でも燃費が悪化しない
最近では非常に燃費に優れた車種がたくさん出ていますが、燃費は状況によって変わってきます。
特に加減速を頻繁に行う市街地では、燃費はどうしても悪くなりがちです。
しかし、ノートe-POWERは市街地こそ真価を発揮します。
低速域での燃費性能に優れているので、渋滞の多い街中でも燃費を悪化させずに走行することが可能です。
4.充電の必要がない
電気自動車での大きなデメリットが、面倒な充電と航続可能距離の短さです。
電気自動車の場合、充電量がゼロの状態から十分な充電を行うのに急速充電でも30分程度の時間が必要になり、一度に走れる距離もガソリン車に比べると短いという問題があります。
ノートe-POWERでは、充電する必要がないので、手軽にロングドライブを楽しむことができます。
■新型ノートe-POWERには弱点も
良いこと尽くめのように思える新型ノートe-POWERですが、実は弱点やもう一歩と思える点が存在します。
高速道路での燃費が伸びない
ノートe-POWERでは、低速域での燃費性能に優れていますが、スピードの出る高速道路では逆に燃費が悪化してしまいます。
高速道路のようなスピードが出ている状態での巡航時では、モーターによる駆動よりもエンジン駆動の方が効率が良くなります。
さらにノートe-POWERはライバル車種のハイブリッド車と比べて100kg程重たいので、
ライバル車種であるアクアやフィットに比べて高速道路での燃費が伸びにくい傾向にあります。
プロパイロットの設定がない
e-POWERと並ぶ日産の主力となる技術としてプロパイロットがありますが、ノートにはプロパイロットの設定がありません。
新型ノートが登場した時点でプロパイロットの技術は既に発表されていましたが、ノートにプロパイロットが搭載されることはありませんでした。
今回のモデルチェンジがマイナーチェンジだったこともあり、プラットフォームを変更しないままでプロパイロットを追加することが難しかったようです。
プロパイロットによる自動運転技術がノートに追加されていれば、さらに人気が出ていたのは間違いないため、プロパイロットの設定がないことを残念に感じるユーザーは多いようです。
■新型ノートe-POWERの気になる評価は?
高速道路での燃費性能やプロパイロットの設定がないことで、ロングドライブに優れているとは言えない弱点もありますが、新型ノートは新たな魅力を手に入れたことで、全体的には高い評価を得ています。
よく、ハイブリッドモデルはガソリンモデルのものより価格が高いため、節約できるガソリン代だけでその価格差を埋めようとすると10年以上かかると言われています。
このようなグレード差による価格と燃費性能の構図は、今回の新型ノートでも同じように言えることですが、ノートe-POWERは燃費以外の魅力が多いことで、他のハイブリッド車よりも価格に対する満足度が高いように感じます。
このようにノートe-POWERは、ただの低燃費なコンパクトカーという評価ではなく、新しい車の形としての評価を受けていることが、ここまでの人気につながっているのだと思います。
新型ノートe-POWERの革新的な魅力は、実際に乗ってみると簡単に実感できるものばかりなので、ノートe-POWERが気になるという人は、ぜひ一度試乗してみると良いでしょう。
クルマに関する豆知識や旬な情報をお伝えする「クルマの基礎知識」