流行の兆し?電動ターボの仕組みとメリットを開設 | カーライフマガジン

最近ではホンダやトヨタが採用していますが、10年ほど前からヨーロッパでは排気量の小さいエンジンにターボを搭載したダウンサイジングエンジンと呼ばれるものが主流となっています。

それに伴い、ターボやスーパーチャージャーといった過給器に対する技術開発が活発となっています。

そんななか、夢のターボと言われる「電動ターボ」が実用化され、アウディSQ7に搭載されました。

そもそも、電動ターボとはどのようなものなのか、そして、どんなメリットがあるのかについて説明します。

ターボエンジンの泣き所(弱点)とは

ターボエンジンには、軸につながった風車のようなタービンと呼ばれるものが2つで1組になっていて、片側ではエンジンの排気を使ってタービンを回転させ、つながっているもう一方の吸気側のタービンでは空気をエンジンに圧縮して送ります。

その圧縮した空気をエンジンの燃焼に使うと、自然吸気よりも力強い燃焼となりパワーとトルクが増すと言う仕組みで、これを過給と呼びます。

ターボエンジンの弱点は、この排気圧でタービンを動かすという点にあります。
エンジン回転が低くエンジンからの排気が少ない状態ではターボは十分にエンジンに空気を送り込むことができず、パワーを出すことができません。

低回転からターボの過給を得ようとすると、小さくて軽く回るタービンを選択するほかありませんが、そうすると今度は高回転域で容量が足りなくなり、高回転域でターボの恩恵にあずかれなくなるわけです。

この特性を回避するために、低排気圧用ターボと高排気圧用のターボをそれぞれ搭載した「ツインターボ」を採用するメーカーもありました。

最近ではエンジンの回転数が低い時には、空気の通路を切り替えて狭くして空気の流速を増やし、高回転では空気の通路を流路の大きい方に切り替える制御を行う「ツインスクロールターボ」(ツインターボとツインスクロールターボはよく間違えられます)、ターボの中にある空気を導く羽根が閉じたり開いたりすることによって空気の量を調整する「可変ジオメトリーターボ」などがあります。

電動ターボの登場で何が変わるのか

電動ターボは、その名の通りエンジンの排気圧を利用して回していたタービンを、電気とモーターの力で回すことによって過給を行うシステムです。
このシステムでは、エンジンの回転と関係なく低い回転域から過給を得ることができる点とモーターをコントロールすることによって過給をきめ細かく調整できる利点があります。

この電動ターボシステムの構想は結構古くからありましたが、空気を送り込むモーターのパワーと小型化とそれを支える電力の問題があり長らく実用化されてきませんでした。

しかし、近年ヨーロッパの自動車メーカーが推進している48V電源を利用したマイルドハイブリッドシステムなどの開発の中で、モーターを使った過給がターボとして十分に力を発揮できるようになり、実用化に至ったのです。

そして登場した電動ターボエンジンは、低速から加給する事ができるので低速から溢れるパワーとトルクを発揮し、エンジンのレスポンスは自然吸気エンジンのようにどこからでもアクセル操作に俊敏に反応するといいます。

電動ターボの搭載方法

電動ターボは現在のシステムでは電動ターボだけで加給を行うわけではなく通常のターボシステムとセットで搭載される方式がとられています。
そして、その方法は大きく分けて2種類に分かれます。

2ステージ型

2ステージ型の電動ターボは、電動ターボと通常のターボを搭載するシステムです。
電動ターボは低回転域のエンジンの排気圧がかからない領域の加給を担当し、エンジンは回転が上がってきて排気圧が高まると通常のターボが加給を行うようになっています。

電動ターボは、エンジンの排気圧を利用しないのでエンジンのどこにでも配置することができ、ターボも既存のターボシステムを使用することができるのがメリットです。
もちろん、エンジンルームに電動ターボを設置するだけのスペースが必要とはなりますので、エンジンルームにはある程度スペースの余裕が必要です。

アウディSQ7が採用したのはこの2ステージ型です。
大型のSUVでエンジンルームにスペースがあるという点と、既存の技術と新しい技術が独立している点で比較的容易に電動ターボを搭載することができたのでしょう。

ハイブリッド型

電動ターボのハイブリッド型とはまさにハイブリッド車のようなものです。
このシステムは、排気圧を利用するターボの中にモーターを配置していて、排気圧が低い状態ではモーターが過給をおこないます。

そして、エンジンの排気圧が強くなると、排気圧を使って加給すると同時にタービンの回転をモーターが電力として車のバッテリーを充電する仕組みになっています。

このシステムでは、ターボの中にモーターが組み込まれているため電動ターボ専用のスペースが必要なく、省スペース化が可能です。

しかし、排気圧を使ったターボシステムは高熱になるのが特徴で、高熱にさらされても性能が維持できるモーターの開発が必要となります。

日本での電動ターボの実用化はどうなっている?

ヨーロッパの自動車メーカーはこれまでの12ボルトのバッテリーとは別に48ボルトの電源を搭載する方向で、部品メーカーも巻き込んで開発を進めています。

その過程の中で登場してきたのが電動ターボですが、日本での電動ターボの実用化はあるのでしょうか。

プリウスなどが搭載している動力用バッテリーは、200Vの高電圧です。
このパッテリーを使用すれば電動ターボを実用化するのも難しくないでしょう。

しかし、この200Vのシステムは高電圧で感電の恐れがあり、整備性が低く重量も重くなってしまうという欠点があります。

そう考えるとプリウスなどのハイブリッド車のエンジンに電動ターボを搭載することはあるかもしれませんが、電動ターボのためだけに重くて複雑なプリウスのバッテリーを搭載するとは考えにくいわけです。

今後、日本のメーカーがヨーロッパの48V電源に追随してゆくのか、はたまた全く方向性の違う技術を開発するのか、動向が注目されるところです。

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