ラジエーターは劣化する? オーバーヒートとオーバークールが気になる夏と冬 | カーライフマガジン

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自動車業界の経験者が教える、他では聞けない「クルマの基礎知識」

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最新車種に乗っていれば、滅多なことでは意識なんてしないラジエータートラブル

私が整備に従事していた頃、オーバーヒートにオーバークールなんて、教習所の中で学んだだけの都市伝説なんて思っている若いドライバーもいるほどに、最近ではレアなトラブルになっています。

しかし、寒くなるこの時期、夏場の暑さの中の渋滞時、ラジエーターには思いも寄らないストレスがかかっていることを知っておいてください。

車のラジエーターの役割は?

自動車には、フロント内部エンジン近くにラジエーターが設置されています。

ラジエーターとは、熱交換器の一種です。

自動車を長時間運転していると、エンジンに負荷がかかり高熱が発生します。

この状態が続くと、エンジンが過熱、いわゆるオーバーヒートを起こして、自動車は走行不能になってしまうのです。

ラジエーターは、自動車が走行する際に内部に通る風を利用し低温になった冷却水をエンジン周辺に循環させる働きがあります。

これによりオーバーヒートを防げるので、ラジエーターは自動車にとってなくてはならない部品です。

しかし、ラジエーターにも寿命があります。通常のものでも10年前後。

とはいえ、できるだけ寿命は延ばしたいですよね。

ラジエーターを形作っている主な部品には、

 •リザーバータンク  •キャップ  •コンデンサーコア

 •ホース

があります。

•リザーバータンク

ラジエーターのLLC(不凍液)を貯蔵しているパーツです。

LLCは、エンジンの水路を通過しながら熱を奪っています。

暖気前後によってタンクに貯蔵されている容量が変化します。

そのため、暖気後にLLCの量が不足していると勘違いし継ぎ足してしまうと、エンジンが冷えたのちにLLCが溢れてしまうので注意しましょう。

•キャップ

キャップは、冷却液の漏れを防ぐだけではなく、タンク内の圧力を調整するという大きな役割を担っています。

キャップの働きによってタンク内の冷却水は加圧され、沸点が高い状態になっています。

それにより、冷却効果が高まりますから、いっそう効率的にエンジンを冷却することができるのです。

•コンデンサーコア

コンデンサーコアは、無数にある薄いアルミフィンで構成されています。

フィンとは、英語で「ひれ」「あしかき」という意味で、その名の通り細い網目のように見えるものです。

そして、ラジエーターの中でも重要なパーツです。

ラジエーター内に虫やホコリなどが入り込むと、故障の原因となりやすいのですが、コンデンサーコアがそれを防止してくれます。

また、コンデンサーコアの働きが、ラジエーターの寿命に大きく影響を与えるのです。

•ホース

ラジエーター内で冷やされた液が通るのがホースです。

ホース内を循環していくラジエーター液は高熱を帯びていますから、耐久性が求められるパーツで、定期的なメンテナンスが必要です。

ラジエーター液はメーカーによって異なりますが、明るいピンク色や緑色をしています。

エンジンを冷却するだけでなく、エンジン内部のさび止めの効果も期待できます。

この色の劣化具合が交換時期の目安になりますから色の変化には気を配りましょう。

1.ラジエーターがトラブルを起こしたら?

昔のテレビドラマや映画の中で、自動車のボンネットから白い蒸気が出ているシーンを見た事がありませんか?

あれは、ラジエーターに何らかのトラブルが発生した時の現象です。

先にお伝えしたように、ラジエーターは燃焼サイクルで加熱したエンジンを冷却する働きがあります。

これがうまく機能しないと、エンジンは熱に耐えきれずに過剰な熱膨張を起こし、本来の許容範囲内での熱の発生を大幅に超えてしまう事態に陥ります。

その熱を冷却しようと、LLCは必死に仕事をしようとします。

しかし、液体であるLLCは蒸発します。

蒸気化してしまうことで液量自体が不足してしまい、十分な冷却機能を発揮することができない。

いわゆるオーバーヒートです。

今はドラマなどでもこんなシーンはほとんどありませんが、様々な要因が折り重なることでオーバーヒートは引き起こされるのです。

また、これと逆に水温が下がる【オーバークール】にも要注意です。

オーバークールは、直ちに自動車が走行不能になることはありません。

普通に走れますが、放置していると自動車の劣化につながります。

いずれにしても、オーバーヒート、オーバークール、ともに自動車の寿命を縮める元になるので、気を付けましょう。

2.オーバーヒートとは

オーバーヒートは、夏場に特に気を付けなければいけません。

ラジエーターの役割は、エンジンを冷却することですが、その働きが何らかの原因で作用が弱くなった時にオーバーヒートが起こります。

その原因というのが、ほとんどの場合が

 •冷却水が漏れている
 •量が不足している

時になります。

人間の熱中症も水分不足から起こりますよね。

自動車だって同じです。

つまり、オーバーヒートは自動車の熱中症のようなものなのです。

そのため、走行中にオーバーヒートしたらすぐに自動車を休ませる必要があります。

すぐに路肩など安全な場所に停め、エンジンを切ります。

 •ボンネットを開け、タンク内の冷却水の量を確認します。  •タンクに表示された最低ライン以下だったら冷却水を補充します。

 •冷却水が無い場合は応急処置で水道水でも構いません。

これらの対象を早急に行いましょう。

ボンネットを開けたときに焦げたにおいがする場合は、エンジンオイルの漏れが原因の可能性が高いですから、エンジンルーム内に付着しているオイルを拭き取りましょう。

また、キャップやホースが劣化してヒビが入っていたりすると、そこからLLCが漏れ出します。

自動車がオーバーヒートしたら、LLCの量だけではなく、関連バーツの確認も忘れないようにしましょう。

パーツの破損は、素人目ではなかなか判断しにくいものです。

少しでも不安を感じたら、取り急ぎ専門業者に見てもらうようにしましょう。

そして、意外に知られていないのですが

オーバーヒートを起こすと、テンプゲージはCOLDをさす!

これは既にLLCを噴上げてしまっている状態です。

テンプセンサー位置よりも下までLLCが減ってしまうことで起きる状況です。

仮に、ヘッドガスケットを貫いてボンネットから吹き上げているわけではなく、ラジエーター下部が破損してしまって地面に撒き散らしてしまっている際にも同じ現象が起きます。

運転中に目に見えてわかる症状ではありません。

オーバーヒートが原因でシリンダー油膜が切れてしまうと、エンジンが焼き付いてしまうという最悪な結末を迎えてしまうので、テンプゲージが急に下がってしまった場合は速やかに自動車を止めてください。

3.オーバークールとは

オーバーヒートと逆の作用を起こすオーバークール

オーバーヒートのように、その症状から明らかにトラブルだとはわかりにくいトラブルです。

そのままにしておくと、エンジンの燃焼が不十分になったり、オイルが劣化したりという二次災害が怖いトラブルなので、その特徴を把握しておいてください。

オーバークールが起こりやすいのは、外気温が低い時です。

この情報だけで、冬場や寒冷地で起こりやすいトラブルだということが理解できます。

気温が低いにもかかわらず、ラジエーターが更にエンジンを冷やしてしまう。

エンジン自体の温度が低くなってしまうことで、シリンダー内の混合気にも悪影響を与え、ミスファイヤーやノッキングを繰り返してしまい、最悪の場合デトネーションを起こしエンジン内部を破壊してしまうほど厄介なトラブルなのです。

自動車のエンジンは、燃料を一定供給し、シリンダー内で混合気となったものが燃える事によってエネルギーを発生します。

ピストンを押し下げクランクを回し、フライホイールからミッションを通してファイナルギヤを介す。

そこから各ドライブシャフトの先にある車輪が、路面へとそのエネルギーをアウトプットすることで走行することができます。

これが基本的なエンジンからのエネルギーの伝達の仕方になりますが、異常を起こしている時にはこのサイクルに乱れが生じます。

冬に暖機運転をせずに自動車を発振させようとした際、アクセルを踏み込んだ瞬間にミスファイヤーを起こすなどのトラブルが発生しやすくなります。

オーバークールの場合は、出発時だけでなく走行中にも外気温のせいでエンジン温度が低いままで、エンジンの内部にカーボンが発生しやすくなります。

このカーボンがオイルを汚してしまう原因ですが、何よりも恐ろしいのが、圧縮行程でシリンダー内温度が高温となった際に発生する可能性があるデトネーションです。

あまり耳にしたことがないかもしれません。

ノッキングがエンジンに良くない現象なのは理解していると思います。

そのノッキングの親分がデトネーションです。

ノッキングがどんなに最悪な状況になったとしても、スパークプラグが溶けてしまう程度のものです。

しかし、デトネーションは致命傷になるトラブルです。

1000馬力のハイパワーであっても受け止め切るクランクシャフトやコンロッド。

これらを平気で歪ませるほどの異常爆発現象のことを指します。

自動車は再起不能となるばかりではなく、運転しているあなたや同乗者の命にも関わる最悪のトラブルです。

そんな危険性を持つトラブルがオーバークールだということを忘れないでください。

空冷式のラジエーターより水冷式のラジエーターがオーバークールを起こしやすくなります。

また、サーモスタットが故障している場合もオーバークールが起こりますから、水温計をマメにチェックする習慣をつけましょう。

水温上昇が起こらない場合、サーモスタットを修理・交換する必要があります。

4.ラジエーターのパーツの交換時期は?

•ラジエーターキャップ

ラジエーターキャップはガソリンタンクのキャップのような単なる栓ではありません

ラジエーターキャップは【密閉弁・加圧弁・負圧弁】の3つの弁から成っています。また、圧力を調整するためにバネがついています。

キャップの劣化や破損は、オーバーヒートを引き起こし、最悪の場合、自動車が使い物にならなくなります

基本的に10年は持つと言われていますが、使用頻度・使用地域などにより差があります。

5年くらいで確認して、できることなら7年くらいで交換した方が良いでしょう。

ラジエーターキャップの値段そのものは1,200〜1,500円くらい。交換も自分でできますから、専門業者に頼む必要もありません。

オーバーヒートを起こして高い修理代を払うことに比べたら安いものですよ。

•LLC(冷却水)

緊急の場合は水道水でも良いと先にお伝えしましたが、それはあくまでも応急処置です。

そのままにしておくと気温によっては凍結したりサビついたりします

これもラジエーターが劣化していく原因となりますので忘れずに!

できるだけ早いタイミングできちんとLLCを補充するようにしましょう。

LLCは、車検時期を目安に交換するのがポイントです。

稀に車検まであと2ヶ月くらいというときに、給油に寄ったガソリンスタンドのスタッフに「冷却水交換した方が良いですよ」と誘導されることもあります。

LLCの価格は1Lあたり1,000円前後です。

ホームセンターなどでも購入できるものなので、極力水道水対応をしないで済むようにしておきましょう。

通常3Lは最低補充します。

その場でガソリンスタンドに依頼すれば、工賃を含め7,000~8,000円程度の軽整備です。

そんなときは「あと2ヶ月で車検だから結構です。」などと思わず、早い段階で交換することをオススメします。

いつオーバーヒートするか分からないリスクを抱えたまま走り回るということは、常にタイトロープの上を歩いているようなものです。

命を乗せて走っているということを忘れないでください。

•ラジエーターホース

ラジエーターのホースは

 •アッパーホース
 •ロアーホース

の2種類あり、寿命はいずれも10年とされています。

最低限の交換タイミングとして、10万kmごとの交換は基本となります。

ホースは耐久性のあるゴムでできていますが、やはり経年劣化は避けられません。

LLCの温度差に常にさらされる上に、エンジン自体からの熱にも当てられているわけですから、劣化して当然の環境です。

個人での交換はLLCの全量交換も同時に行うことになりますので、廃棄の手間を考えると業者に依頼する方が無難です。

 •LLC全量  •ラジエーターホース上下

 •工賃

全てを含めると5,000円~20,000円くらいの費用が必要になります。

 •フロントバンパー脱着  •LLC全量交換・廃棄

 •ラジエーターホース交換

作業時間はおよそ2時間コースです。

•ラジエーター本体

ラジエーター本体を交換する必要があることもあります。

ラジエーターの寿命は、普通自動車なら10年前後、軽自動車なら5年~10年程とです。

ラジエーターは中古部品でも交換可能ですが、既に劣化しているものなのでオススメしません

正規品を求めれば2〜4万円はかかりますが、メーカーロゴがないだけのアフターパーツも仕入れられますので、街の整備工場に相談してみてください。

8,000〜1万円程度で取引されています。

性能は同じでも、メーカー保障がない。

それでもコストダウンには最適なチョイスです。

アッパーサポート ラジエーターコア

ロアサポート

にて構成されていますので、基本的にはアッセンブリ交換です。

LLC全量交換 フロントバンパー脱着

ラジエーターアッセンブリ交換

これも同じく2時間コースです。

暖気しながら充填していく必要がありますので、LLCの充填に時間がかかります。

また、冷間時のリザーバータンクの内容量もチェックしなければならないため、これだけの作業にも時間工賃がかさんでしまうのです。

5.ラジエーターのトラブルを防ぐには

気持ち良く運転していたのに突然ラジエーターのトラブルに見舞われた…

自動車は自分の足、自分そのものと思って定期的にメンテをしてあげましょう

ラジエーターの寿命が1日、1ヶ月、半年と延命することにもつながります。

日常点検の範囲として

 •LLCの充填量(リザーバータンクでチェック)  •サーモスタットが正常に動いているか(暖気時にラジエーターホースに温水が回っているかチェック)

 •ホースにヒビはないか(ホース内のメッシュが浮き出ていればアウト)

専門業者に見てもらう事

 •ラジエーターキャップの劣化(プレッシャーをかけて開閉をチェック)  •リザーバータンクの劣化(乳白色の濁り方をチェック)

 •ラジエーターそのものの劣化(アルミ錆の度合い・フィンの潰れチェック)

できることとできないことの判断を間違えないようにしてください。

ムリをすれば命に関わります

まとめ ラジエーターの管理を怠るな!

エンジンは自動車の心臓です。

そして、ラジエーターはその心臓を正常な状態で動かすために温度管理する自律神経となります。

あなた自身や同乗者の命を乗せて走るのですから、見た目ばかりに気を取られずに中身にもしっかりと向き合うようにしましょう。

そして、最後に最も大切なことをお伝えします。

ラジエーターに手を入れる際には、LLCをこぼさない!

LLCは産業廃棄物になります。

環境破壊になってしまうので、間違っても自然に還すなんてことはしないでください。

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