自動車業界の経験者が教える、他では聞けない「クルマの基礎知識」
自動車査定士があなたの自動車を初見で判断する材料になるのがヘッドライトです。
何年も経験を積んできたベテランの自動車査定士であれば、自動車の持つ雰囲気からある程度の見積もりが付きます。
正確には車体のねじれや歪み、劣化の進行による車高の変化などがその雰囲気となります。
しかし、まだ経験の浅い自動車査定士はその見積もりを付ける判断材料を見極めるだけの情報量がまだありません。
そこで、どんな自動車査定士でもその自動車がどれだけ劣化しているのかを判断するために、ヘッドライトの劣化具合を確認します。
では、ヘッドライトを確認するだけでどれだけの情報量を得ることができるのかを、元プロ査定士の経験からあなたにお伝えしたいと思います。
今回の情報は、正直のところ自動車査定士としては一般ユーザーに知っていてほしくない情報なので、あなたはこのページでプロの自動車売却ユーザーへの第一歩を踏み出してみて下さい。
1.ヘッドライトとは
ヘッドライトとは、大きく分けて【ヘッドライトユニット】と【ヘッドライトバルブ】の二つのパーツによって構成されています。
ご存知の通り、ヘッドライトの役割は夜間の前方視認性を良くすることです。 そして、自動車の最前部に設置されているため、走行中にダメージを最も強く受けるパーツになるのです。
季節ごとの昼夜の寒暖差によってもダメージを蓄積してしまい、自動車の経年をどのパーツよりも分かりやすく確認することができるパーツなのです。
これより、自動車査定士がどのようにヘッドライトから初見の判断をするのかをご説明していきます。
2.ヘッドライトユニットは劣化する
上でも軽く触れましたが、ヘッドライトは【ヘッドライトユニット】と【ヘッドライトバルブ】という二つのパーツで構成されています。
【ヘッドライトユニット】とは、簡単に説明すれば【ヘッドライトの器部分】です。
基本的には、レンズと反射板とケース、それにヘッドライトバルブの固定金具がそれに当たり、自動車査定士が初見で自動車の状況を判断するのが【レンズの劣化具合】なのです。
自動車を正面から見た時に、必ず目に入るのがこのレンズ部分で【色】【透明度】【侵食具合】を確認します。
まず【色】ですが、自動車が古くなっていくに連れて黄ばんでいきます。
平成9年以降の自動車は徐々に【クリアレンズ】に移行していっていますが、それ以前の自動車は【カットレンズ】が一般的でした。
この黄ばみは、酸性雨や排気ガスによる表面的な劣化と、ヘッドライトバルブの熱によって焼けてしまう内面的な劣化という二通りの原因があります。
【透明度】は、プラスティックレンズの劣化により白く濁ってきているかを判断するということです。
黄ばみの進んだレンズを放置していると、徐々に表面的な劣化がプラスティックを侵食していくことで、レンズ部分が白く濁ってしまいヘッドライトバルブの光を散光させてしまうという不具合につながります。
最後の【侵食具合】というのは、レンズ部分とケース部分のシール性です。 ヘッドライトユニットは【レンズ】と【ケース】で【反射板】を挟みこむ形で作られています。
その挟み込んでいる部分には【シール剤】によってレンズとケースを貼り付けてあります。
シール剤はただの【のり】ではなく、外部からの水分の侵入を防ぐ役割を持っています。
これによってヘッドライトユニットの中は乾燥した空間に保たれているのです。
これにも理由があり、ヘッドライトバルブというのは水分や油分が表面に付着したまま発光すると、その付着した部分に熱が集中的に溜まってしまうことでバルブが割れてしまうのです。
この3要素を、自動車査定士は初見で見極めることによってあなたとの値段の交渉をし始めます。
自動車一括査定サイトなどで【車種・年式・走行距離】から大体の査定価額を知ることができますが、そこで知ることができる価額は【あなたの自動車の最高価額】であって、実際の査定価額とは異なります。
そこで、自動車査定士はヘッドライトユニットの状況に応じて、査定の開始前にさらっとかなり安めの価額をあなたに伝えた上で査定に入るのが自動車査定士の常套手段です。
3.ヘッドライトユニットは修理?交換?
上のような3要素によるヘッドライトユニットの劣化は、修理することも可能です。
黄ばみは【黄ばみ取りワックス】という半練りまたは液体のコンパウンドで磨くことで落とすことができます。
歯磨きで歯垢を落とす感覚とよく似ています。
レンズが白く濁ったものも、プラスティック用の浸透ワックスを使うことで再生することが可能です。
乾燥肌に浸透させるヒアルロン酸のような感じです。
侵食を直すには、一度ヘッドライトユニットを分解させる必要があります。
分解した上で全てを一度水洗いして完全に乾燥させ、清潔な室内でシリコンオフなどで脱脂をした上でシール剤を隙間なく補充し、再度ユニットを組み直すことで修理完了です。
ただし、ヘッドライトユニットは内部に水分の侵入が認められると車検を通過することができません。
大雑把な性格の方にはオススメしません。
ここまで修理は可能と言っておいて申し訳ないのですが、今後もその自動車に乗り続ける気がある方には、修理したヘッドライトユニットは絶対にオススメしません。
なぜなら【その場しのぎでしか無い方法】だからです。
歯をいくら磨いても歯垢は溜まりますし、どれだけスキンケアを繰り返しても年老いた肌は干上がっていきますよね?
分解してリフレッシュさせたユニットも、シール剤の乾燥が足りなかったらユニット内には水の侵入が必至となってしまいます。
この後自動車売却を予定していないのであれば、ヘッドライトユニットは【交換】することを強くオススメ致します。
逆に売却予定があるのでしたら、わざわざ交換せずに修理してしまい、自動車査定価額をアップさせられるように手間を掛けるべきだと考えます。
4.ヘッドライトバルブの変化によって生じた弊害
あなたは【ヘッドライトバルブ】がとてつもなく熱くなることをご存知ですか? ハロゲン球からHIDへと流れ移り、絶対的な光度と引き換えにその発熱量は莫大なものになりました。
そのため、レンズや反射板へのダメージは飛躍的に強くなってしまいました。
今の主流は【LED球】になってきていますが、光度こそあれど照射力がまだ満足とは言えないため、価格としてはまだ割安なHIDに流れは残っています。
発熱量というデメリットを抱えながらも、価格の安定しているハロゲン球やHIDを標準装備としてありますが、技術の進歩によって生まれたLED球のこれからの安定供給がなされていくことを期待するばかりです。
5.まとめ 自動車査定士はヘッドライトの劣化を嫌う
自動車の劣化をひと目で判断できるヘッドライトの劣化具合は、自動車査定士として絶対的な情報源です。
査定に臨むに当たり、この劣化はあなたにとって悲しい現実を突きつける要因となりますが、自動車査定士としては査定価額を抑えるための嬉しい情報になります。
できるだけ安くあなたの自動車を買い取りたいのが自動車査定士です。
ヘッドライトがかなり重要な査定ポイントになるということと、あなたができる対処方法をしっかり理解していただけたら幸いです。
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