「ディーゼルエンジンって汚いの?」元プロメカニックが教えるクルマの知識 | カーライフマガジン

ディーゼルエンジンと聞いて、パッと思い浮かぶのはトラックやダンプカーが黒煙を吐き出しながら大音量で走り抜けていくような様子ではないでしょうか。

しかし、かたやヨーロッパでは乗用車の主流エンジンとしてのスタンスを随分前から確立しているのはなぜでしょう?

メルセデス・ベンツ社のBlue TECは、世界一クリーンなディーゼルエンジンとして実用化・ハイブリッド化までされています。

それなのに、日本のクリーンディーゼル車の生産はそこまで伸びていない現実があります。

これはなぜなのでしょう?

今回は、なぜ日本のディーゼルエンジン開発がヨーロッパのように進まないのか、ディーゼルエンジンは本当に汚いエンジンなのかという疑問を紐解いていきたいと思います。

1.日本とヨーロッパの違い

まずは、日本とヨーロッパのディーゼルエンジンに対するアプローチの違いについて紐解いていきたいと思います。

と、その前に、あなたはディーゼルエンジンが発する臭いについてどう感じるでしょうか?

クサいの一言に尽きるかと思います。

これは、ヨーロッパでは通用しない日本での常識です。

クサいディーゼルエンジン。
そんなことはヨーロッパではあり得ません。

それはなぜでしょう?

実は、軽油の精製レベルの違いが大きく影響しているのです。

ハッキリいって日本の軽油は汚いです。
あなたが感じている臭いがその証拠。

数兆円規模での施設開発・設備投資が可能であれば、軽油の精度が飛躍的に向上するため日本のディーゼルエンジン開発はもっと前向きになっていくはずなのですが…

なぜそれができないのでしょうか?

これには、日本の産業・運輸業などに理由があるようです。

産業機械の燃料はほぼ軽油が主体、つまりディーゼルエンジンだということ。
運輸業はもちろん大型トラックの活躍の場、ディーゼルエンジンの巣窟です。

これらのディーゼルエンジンが活躍する業界で問題になるのが燃料費です。

現状¥100/L前後で軽油を給油することができるのですが、数兆円単位をかけて軽油の精製をよりハイレベルに行ってしまうと、給油価格はガソリン・軽油ともに倍値近くまで引き上げなければならなくなります

投資金額の回収のためですね。

乗用車のガソリン給油でさえ¥300/L前後となると、50L給油で¥15,000-…
シャレになりませんが、200Lタンクの中型トラックに¥200/Lの給油をしたら¥40,000-…

単純計算ですが、現状の世の中であるならば確実に破綻します。

産業・運輸業が破綻してしまうと、私たちの生活もかなりの割合で機能しなくなっていきます。

スーパーマーケットに野菜が届きません。
道路の修繕もされません。

そうならないためには、あらゆるものの価格が上昇してしまうのは必至でしょう。

しかし供給は伴いません。

軽油の精製に踏み切ることは、現代の日本の在り方では無理なのです。

したがって、日本のディーゼルエンジンの開発は飛躍的進化を望めないのです。

ヨーロッパでは早い段階で軽油の精製に手をつけました。
そのため、ディーゼルエンジンの進化が目に見えて進んでいます。

しかし、早い段階で手をつけただけで実現できるものではありません。

最も大きな違い。
それは、アラブ石油産国からの距離です。

陸続きのヨーロッパとアラブ、海を渡り輸送コストをかけなければならない日本。

販売価格に違いが生まれるのも当然です。

ただでさえ違いがあるのに、立地条件まで加わっては仕方ありませんね。

2.ヨーロッパのディーゼルエンジンは汚くないの?

軽油が綺麗なだけでヨーロッパのディーゼルエンジンは汚くないのでしょうか?

まず、ここでその間違いを正したいと思います。

日本のディーゼルエンジンも汚くはありません。

あくまでも汚いのは軽油であって、ディーゼルエンジンではないのです。

えっ?
じゃあ日本のディーゼルエンジンも綺麗なの?

その疑問が生まれますね。
もちろんYESです。

なぜなら、ディーゼルエンジンは完全燃焼エンジンだからです。

本来であれば、マフラーから排出される物質はだけになるのですが、不純物が多いためPMやNOxの大量発生が起こってしまうのです。

さて、そうなってくると新たな疑問が生まれてくると思います。

外車のクリーンディーゼル車に乗っても国内では意味がないのではないか?

燃料自体の問題で汚れを発生するのであれば、エンジンがどんなに高性能になったところで根本的な解決にはつながらないのではないでしょうか。

そうです。
厳密にはある程度の性能差は生まれますが、排気ガスの汚染度合いはやはり燃料の問題。

どんなに優れた燃焼行程を行えるエンジンだったとしても悪臭・汚物の排出は避けられないのです。

つまり、日本国内でいくら高性能なクリーンディーゼル車が販売されていたとしても、その恩恵を受けるのは難しいのです。

ディーゼルエンジンの排気を清浄化するためにマフラーにフィルターを設置したりと対策は打っていますが、現状日本国内でわざわざ価格の高い海外メーカーのクリーンディーゼル車を選ぶ意味はあまりないでしょう。

3.まとめ ディーゼルエンジンが汚いというのは思い込み

ハッキリいって、ディーゼルエンジンは決して汚いエンジンではありません。

構造上修理しやすく、長く使い続けることができるというメリットを考えても、ディーゼルエンジンは選ぶ価値があります

軽油価格が安価なので、ランニングコストも大きなメリットですね。

確かに臭いや発熱の問題は、まだまだ改良していかなければならない問題です。

ハイブリッド車や電気自動車の開発が脚光を浴びてはいますが、同時にクリーンディーゼル車にもしっかりと開発努力は注がれています

今現在の軽油精度のままでも、臭いの元まで完全燃焼に至るのはそう遠くはないでしょう。

今すぐにクリーンディーゼル車を手に入れることは、まだ時期尚早かもしれません。
しかし、数世代時間を置いたものであれば、完全なるクリーンディーゼル車が世の中に出回ることでしょう。

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