自動車業界の経験者が教える、他では聞けない「クルマの基礎知識」
せっかく自動車に乗るのだから、愛車のメンテナンスぐらいセルフメンテナンスを心がけていただきたいものです。
バルブの交換やワイパーラバーの交換。
ホームセンターで買い揃えられるレベルのメンテナンスを、あなたの手を入れていくことで、急なトラブル対策にも繋がってきます。
そんなセルフメンテナンスの王道でありながら、自動車の寿命にも直結してくるものといえば【オイル交換】です。
自分の手を汚したくない。
お金を支払えばやってもらえる。
そんなことでは、万が一オイル上がりでエンジンが焼きつきそうだといった場合の対処などできなくなってしまいます。
あなたにオイル交換のイロハを叩き込ませていただきます。
•オイルやオイルエレメントの点検
エンジンオイルやオイルフィルターは定期的に交換しないと、エンジン性能が低下して故障の原因になることがあります。
また、潤滑サイクルの中で極微量ながらオイルが消耗されてしまい、充填量が減ってしまう日常があります。
こうした状態を把握するためにも、日常点検が重要になるのです。
定期的にオイルの汚れや量を確認し、オイルの補充や交換をする方法を身につけましょう。
•オイルやオイルフィルターの交換時期
オイルの交換時期は、自動車の種類や使用状況によって異なります。
一般的には通常使用の場合、1万5,000kmまたは1年毎といわれています。
しかし、軽自動車やターボなどの過給器付きエンジンやディーゼル車は早めに交換した方が良いといわれています。
オイルフィルターを交換する目安は、
❏オイル交換2回につき1回
❏2万kmに1回
であるといわれています。
いずれにしても、それぞれの自動車の取扱説明書で確認しておきましょう。
•オイルやオイルフィルターの交換にかかる費用
オイルやオイルフィルターの交換料金は自動車の種類、車種、型式等によって違いがあります。
また
•ガソリンスタンド •ディーラー
•カー用品店
などによっても異なります。
通常ガソリンスタンドで扱っているオイル交換費用を例に挙げてみます。
オイルが1,000円/Lで換算すると、普通車のオイル交換4Lで4,000円。
工賃1,000~2,000円と併せると、約5,000~6,000円が目安となります。
オイルフィルターの交換費用の目安は、工賃を含み2,000円~6,000円です。
•自分でオイルやオイルフィルターの交換をしてみよう
業者に頼むと、最低限でも上記のような料金が掛かってきます。
自分でオイルやオイルフィルターの交換をしてみてはいかがでしょうか。
手順さえ覚えれば誰にでも意外と簡単にできるのです。
そして、常にオイルやオイルフィルターの状況を正しく把握することによって、自動車や自分自身の安全を確保することもできるのです。
そのためには、自動車の構造や各パーツの名称・役割等を十分に理解し、他人に頼らず自分自身でそれぞれの機能の状態を把握することが大切です。
•オイルの役割
自動車のオイルは、エンジンの潤滑油の役割を果たしています。
従って、自動車のエンジンを正常に機能させるためには、オイルが常に正しく定量に保たれていなくてはなりません。
このオイルが不足してしまうと、エンジンから異音が発生したり、燃費が悪くなったり、最悪の場合焼き付きを起こしエンジンが破損することになります。
オイル管理は、自動車に乗る者の義務です!
•オイルが無くなる原因
オイルが無くなる原因には次の2つのケースが考えられます。
まず挙げられるのは自然消費です。
オイルは長期間交換せずに使用していると、粘度が低下し汚れにより劣化します。
全てのシリンダーが同時に全閉状態になることはありません。
そのため、インテークラインからの空気の流入により若干のオイル下がりを引き起こします。
オイルといえども液体です。
当然温度差などによる揮発が発生します。
温冷サイクルの中で失ってしまう部分があるということを理解しておいて下さい。
たとえ正常な状態であったとしても、少しずつ消費してしまうものなのです。
次に挙げられるのがオイル漏れです。
これは早めに対処しないと、トラブルを引き起こす原因になります。
経年劣化によるガスケットの硬化やクラックの発生。
無理な運転をしたことで、ヘッドガスケットやヘッドカバーガスケットを吹き抜けてオイルが噴射するというトラブルは、何もスポーツカーばかりのものではありません。
定期的にしっかりとメンテナンスすることで、自動車の劣化をリフレッシュするようにしましょう。
•オイルフィルターとは
次に、オイルフィルターです。
これは、エンジンオイルをろ過することによって、オイルの中に含まれる汚れや異物を取り除くフィルターになります。
エンジンの外側に露出して設置するタイプをオイルフィルター、内部に設置して視認できない状態のものをオイルエレメントというように分類されています。
オイルエレメントは、自動車よりもオートバイによく使用されています。
オイルフィルターを交換することにより、汚れを取り除き、エンジンの焼付きを防止し、燃費を向上させる効果があります。
オイルフィルターとは、人間の腎臓に該当する大事なパーツです。
腎臓が血液中に含まれる悪い成分を取り除く機能を持つように、オイルフィルターはオイル内の悪い成分をろ過するパーツなのです。
このように、自動車の大事な部分に支障があるか否かを他人任せにせず、自らチェックすることで、あなた自身や同乗者の安全に直結する必須メンテナンスポイントになります。
•自動車の重要パーツの名称とその役割
次に、自動車の重要パーツの名称と役割について説明します。
【オイルパン】
自動車のエンジンの底部にあるエンジンオイルを溜めるパーツのこと。
オイルは潤滑した後に再びここに戻り、冷却、ろ過された後、ポンプにより再び必要なパーツへ送られて行きます。
【ドレンボルト】
オイルパンにある、エンジンオイル等の排液口を塞ぐネジのこと。
ドレンコックあるいはドレンプラグとも呼ばれます。
【オイルフィラーキャップ】
エンジンのヘッドカバーのところにあるオイル注入口のことをオイルフィラーと呼び、この場合、注入口のフタのことを指します。
【油圧警告灯】
スピードメーター面に表示されているオイルチェックランプのこと。
エンジンオイルの圧力が不足しているときに点灯する警告灯です。
エンジン回転中に、エンジンオイルの圧力に異常があると点灯するもので、オイルの量の過不足を示すものではありません。
この警告灯を点灯したままで走行するとエンジンを破損する恐れがあります。
•オイルとオイルフィルター交換のための準備
1.用意するもの(及び用意すると便利なもの)
1.ジャッキとリジットラック(馬台 ジャッキスタンド:2,790円~) 2.エンジンオイル(4L缶1,590円~) 3.廃油ポイパック(オイル廃棄用:239円~) 4.オイルドレンワッシャー(ドレンボルトのパッキングゴム:299円~) 5.メガネレンチ(ドレンボルトを緩めるための道具:529円~) またはトルクレンチ(プリセット型:2,990円~) 6.パーツクリーナー(ブレーキライニングやブレーキドラムや機械部品に付着した オイルグリース等の汚れを落とすもの:199円~) 7.ニッパー(ドレンワッシャーが外れない場合にカットするのに便利:599円~) 8.オイルレベルゲージ(オイルの量を図る道具:880円~) 9.オイルフィルター(車種によってサイズが異なるので注意しましょう:299円~) 10.ゴム手袋または軍手(油汚れ防止のためです) 11.シート(地面に寝転ぶ時に汚れを防止するためです)
12.じょうご(新しいオイルを注入するのに便利です)
2. エンジンの暖機(運転)
オイルを抜き取る前に、1分ほどエンジンを暖機しておくと、オイルの粘度が下がり、抜き取り時間を短縮することができます。
暖機が終了したら必ずエンジンを停止してください。
エンジンの停止を忘れて作業することは危険を伴います。
絶対にやめましょう!
3. 車のジャッキアップ
車のジャッキアップ作業には少々危険を伴うことがあるので、下記のことに注意しながら慎重に行いましょう。
1.平坦な場所で行う(傾斜のある場所で作業すると、ジャッキが外れることがあります)
2.ジャッキアップ作業中であることを周知させる(三角の反射板などを置く)
3.エンジンは停止する
4.車の下に潜る場合は車の下にタイヤを入れる(これは絶対に忘れないでください!)
•オイルとオイルフィルターの交換方法と手順
それでは、いよいよオイルとオイルフィルターの交換作業の開始です。
1. ボンネットを開け【オイルフィラーキャップ】を外します
こうすることによって、オイルの抜け方が良くなります。
2.オイルパンの下に【廃油ポイパック】を置きます
万が一オイルが廃油ポイパックからこぼれた場合に備えて、下に新聞紙を敷いておくと良いでしょう。
3.ドレンボルトを取り外す
メガネレンチなどでオイルパンに付いているドレンボルトを緩めて取り外します。
この際、廃油ポイパックの位置とオイルの落下地点がうまく合うように調整してください。
ドレンボルトが外れると同時にオイルが勢いよく出てきます。
ドレンボルトを廃油ポイパックに落とさずに外すことができないときは、思い切って廃油ポイパックの中に落としてしまいましょう。
慣れてくれば、落とさずに外すことができるようになります。
落としたボルトは後に廃油ポイパックから取出すことを忘れないでください。
もし、金銭的に余裕があれば、ドレンマグネットキャッチャーを購入して利用すれば、この問題は解決されます。
そして、オイルが止まるまで待ちましょう。
4.オイルフィルターの取出し
オイルフィルターを緩める前に、廃油ポイパックをオイルフィルターの真下に来るようにセットします。
オイルフィルターを緩めたときにかなりの量のオイルが出てくるので注意しましょう。
5.フィルター面の清掃
オイルフィルターの取付面をきれいに清掃しましょう。
ゴミなどが付着しているとオイル漏れの原因になることがあります。
6.Oリングにオイルを塗布
新しいオイルフィルターのOリングに少量のオイルを塗ります。
こうすることによってフィルターの機密性を確保することができるので、必ず忘れずに実行しましょう。
また、これを忘れるとオイル漏れの原因にもなります。
ここでのポイントは、塗りつけるオイルは廃油を塗るということです。
既に汚れているオイルを塗ることで、エンジンとの密着性アップと、カーボンによる固着でオイルフィルターの脱落を防ぎます。
7.オイルフィルターの取付及び周辺の清掃
フィルターの取付の際には規定トルクが必要になります。
これは、決められた締め付け力のことで、本体に規定トルクが記載されています。
デジタルトルクレンチを利用すれば、簡単に処理できます。
また、プロとしては角度法を使うことが多いです。
手で締め付けて動かなくなったところから45〜60度ほど締め付けて完了にします。
締め付けすぎると、エンジンブロック側のアルミネジがナメてしまうので、締め過ぎはご法度です。
8.オイルパンにドレンボルトとドレンワッシャーを取り付け
オイルパンにドレンボルトと「ドレンワッシャー」を取り付ける際には、ワッシャーはもう一度使えるように見えても再利用しないでください。
古いものを使用すると、オイル漏れの原因になることもあるからです。
メーカーによってはガスケットであったり、そもそも使用しないという場合もあります。
9.ドレンボルトの締め付け
メガネレンチやトルクレンチを使ってドレンボルトを締め付けます。
オイルパンは薄くて柔らかい部品なので、余りきつく締め付けないように気を付けましょう。
強く締め付け過ぎると、オイルパン自体が破損する恐れがあります。
10.ドレンボルト周辺の清掃
パーツクリーナーでドレンボルト周辺を清掃します。
これは、新しいオイルを注入後にオイル漏れがないかどうかを確認するためでもあるので、必ずきれいに拭いておきましょう。
11.廃油ポイパックの取出し
廃油ポイパックを車の下から取り出します。
この際、パック内にドレンボルトを落とした場合には、それを取出すことを忘れないようにしましょう。
12.ジャッキを降ろす
ジャッキアップの時と同様に安全にそして慎重に行いましょう。
一度に下げ切るのではなく、タイヤの接地時に一度降下を止め、車体下に何もないことを最終チェックした後に全降下させましょう。
この際、伸び切ったショックアブソーバーを慣らすのを忘れないようにしましょう。
ボディを数度押し沈めることで、正規位置まで戻ります。
13.オイルの注入
新しいエンジンオイルを注入口から注入します。
注入する量については、「取扱説明書」を参照します。
この際に「じょうご」を使うと外に漏れることもなく上手に注入することができます。
14.オイル量の確認
オイルレベルゲージを使ってオイルの量を確認します。
オイルを入れ過ぎても抜き取ることはできません。
オイルジョッキを使用し、規定量を注入できるようにしましょう。
オイルレベルゲージをこまめに確認しながらオイルの注入をしましょう。
最初は8分目程度に注入し、不足分は後で補充するのもテクニックの1つです。
15. オイルフィラーキャップの取付け
キャップの取付を忘れると走行中にオイルが飛び散ることになるので、必ず忘れずに取り付けましょう。
緩まない程度に手で締めればOKです。
16. エンジンルーム内のチェック
エンジンルーム内に工具などの忘れ物がないかどうかしっかりと確認しましょう。
忘れた工具が回転部分に巻き込まれたりすると非常に危険です。
17. エンジンの始動
暖機の目的でエンジンを始動します。
しかし、高回転させないようにしましょう。
18. エンジンを停止した後オイルレベルゲージを確認
オイルがエンジン内に十分に行き渡っているかどうかを確認します。
戻ってきたオイルが規定量に達しているかどうかを確認し、もし不足しているようなら追加補充しましょう。
これで、オイル及びオイルフィルターの交換は終了です。
今回はオイル交換とフィルター交換を同時に行う場合についてご説明しましたが、オイル交換のみの場合は、4~7の手順を抜いてください。
•あると便利な工具・グッズ
1.ラバーベルトレンチ
きつく締まったドレーンボルトなどを緩めるにはレンチを使用するのが一番。
ですが、もしレンチが手元になかった場合にオススメの道具です。
固く締まってしまったジャムのフタを外すのに便利ですが、ボルト用のレンチの代用にもなります。
これらはいずれも100円均一ショップで手に入れられます。
2.ドレンマグネットキャッチャー
この工具を使用すると、先端の強力磁石により高温のドレンボルトを直接手を触れずに取り外すことが可能です。
3.デジタルトルクレンチ
デジタル表示で簡単にトルク設定ができる工具です。
少々高価ですので、余裕があれば用意すると良いでしょう。
基本的にはアナログのトルクレンチで十分です。
•オイルやオイルフィルター交換に際して特別に注意すること
最後に、オイルやフィルターの交換に際し、特に注意することを以下にまとめて説明します。
1.事前の準備段階での注意点
1.自動車の各パーツの名称やその働きなどについては事前にしっかりと勉強しておく。
2.必要な工具・道具・用品は事前に準備しておく。
2.交換中の注意点
1.ジャッキアップだけで車の下に潜らないように!
ジャッキスタンドを使用し、ジャッキアップ後にはタイヤを車の下に入れて安全を確保しましょう。
無精をすると、自動車がジャッキから外れてしまいあなたの上に降ってくる危険性があります。
2.暖機運転後のオイルは熱くなっているので、火傷をしないように気を付ける。
ドレンボルトを抜き取る際に、ポートから吹き出すオイルに気をつけましょう。
3.オイル交換の際には、オイルがこぼれたときの用意に地面に新聞紙や廃油処理箱などを設置しましょう。
地面についたオイル染みはしばらく取れません。
タイヤへの影響も考えると、事前に対処しておきましょう。
4.取付部分に付着したオイルをパーツクリーナーなどできれいに清掃しましょう。
オイルパンに付着したオイルをそのままにしておくと、走行中のホコリなどが付着することで腐食を誘発してしまいます。
揮発性が高いパーツクリーナーで洗い流してしまえば、手間が省けます。
5.ドレンボルトを外す際は、指だけで外すのは難しいので、ドレンマグネットキャッチャーを使うと便利。
この際に、ゴム手袋の着用をオススメします。
6.ドレンボルトは締め過ぎないこと。
強く締め過ぎるとネジ山やオイルパンが破損してしまう恐れがあります。
7.オイルフィルターを交換する際は、オイル漏れに備えてフィルターのフタを布などで覆いながら!
廃油皿を地面に置きながらの作業の場合、オイルフィルターを素早く抜き去るという動作ができません。
そのため、周囲をオイルまみれにさせないためにも、布などで溢れ出るオイルの対策をする必要があります。
8.新たなオイルフィルターを入れる際には、フィルター自体にオイルを少し塗り込んで。
これは、エンジン始動時にエンジン内部にオイルを行き渡らせるためです。
また、フタは余り強く締め過ぎないように注意が必要です。
漏れない程度の締め付けで十分です。
9.エンジンオイルは入れ過ぎないように!
オイルを注入するときは、取り合えず8分目程度にしてください。
その後、オイルゲージでオイル量を確認しながら、不足している分を補充するようにしましょう。
オイルは入れ過ぎると、エンジンに負担が多く掛かり、燃費が悪くなる原因にもなります。
10.オイルやフィルターの交換は、できるだけ風のない日を選ぶ!
風が強いと、ボルトを外した瞬間にオイルが顔や衣服に飛び散ることがあります。
まとめ オイル交換は決して怖い作業じゃない!
人間の病気や健康診断は医師に頼ります。
ですが、あなた自身が自動車の医師になることはできるのです。
自動車が病気になる前に、定期的な健康診断をしてあげましょう。
そして、オイルやオイルフィルターなどの交換によって自動車の治療をお願いします。
もし、最初に1人だけで交換するのが不安な場合は、まずはプロの仕事を観察させてもらいましょう。
オートバックスやイエローハットなどのピット作業であれば、待機室にて見ることができます。
オイル交換作業は基本的にいつでもやっているので、自分の自動車を作業してもらう必要はありません。
しっかりと実際の作業を確認して、あなた自身の手で自動車をメンテナンスできるように心掛けてください。
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